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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2009

試合日程&結果

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日本大学 vs 拓殖大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2009/10/25) 於:熊谷ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 日本大学  :前半: 1  1  0  0  7 |
       :後半: 1  0  2  0 11 |  18 15
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 拓殖大学  :前半: 1  0  0  0  5 |
       :後半: 4  3  1  0 29 |  34 10


◎出場メンバー

 日大:  1.仲村 2.豊田 3.鳥井 4.タカウ 5.酒井 6.江口 7.市川 8.細田
      9.深沢 10.小川 11.権 12.大江 13.富加見 [14].原岡 15.田畑
     (16.石橋 17.谷地 18.佐藤 19.塩見 20.中村 21.住吉 22.ピエイ)

    ○交代  5→18(後14分入替),  7→19(後16分入替), 10→22(後22分入替)
         9→20(後30分入替), 12→21(後36分入替)


 拓殖 : 1.取手 2.吉田 3.紺野 4.浅見 5.牧野 6.ナータ 7.島 8.鶴田
      9.イーリ 10.平野 11.北方 12.岩谷 13.ヤカン 14.大松 15.茂野
     (16.山本 17.川田 18.松村 19.高野 20.金澤 21.齋藤 22.大江)

    ○交代 14→22(前13分入替),  8→19(後 4分交替),  9→20(後18分入替)


 レフリー :早藤嘉幸(日本協会公認)


◎得点経過

 日本大学    0                  7                               7
                                  G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                 dx                      T
 拓殖大学    0                               5                  5


 日本大学    7       10           13                  18       18
                 P            P                   T
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                    G     G          P       G      T
 拓殖大学    5          12    19         22      29     34     34


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 日大:前半17分 豊田 (T)、小川 (G)
    後半 6分 小川 (PG)
      19分 小川 (PG)
      39分 富加見(T)

 拓殖:前半30分 北方 (T)
    後半 9分 牧野 (T)、平野 (G)
      15分 北方 (T)、平野 (G)
      26分 平野 (PG)
      34分 北方 (T)、平野 (G)
      41分 北方 (T)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

今シーズンの日大の試合観戦は4試合目。巡り合わせもあるが通算するとたぶ
ん日大の試合は過去も多く観ている方だと思う。いい試合もよくない試合も何
らかのインパクトを残すのが日大の試合の特徴。それだけ人間臭さを感じさせ
るチームという事なのかも知れない。そして思うことは、今シーズンは悪いこ
とばかりが続いているということ。緒戦の流経大戦に勝っていれば、いや、2
戦目の中央大戦を落とさなければ、日大は笑ってこの試合を迎えることができ
たかもしれない。本当に学生チームはモチベーションの持って行き方が難しい。

その日大は負傷者がでていることもあり、なかなかメンバーが固定できないよ
うだ。FWの第2列と第3列はLOタカウ、No.8細田を除き入れ替わりが激し
い。BKもSHは深沢が先発の場合が多いが、中村と併用状態と見ていいだろ
う。SOは3戦目からルーキーの小川が起用され定着。CTBは富加見が不動
だが、コンビを組む選手が入れ替わる。第3列も決まった顔ぶれながら異動が
多くて当初CTBだった原岡主将も最終的にはWTB? そしてリザーブには
久しぶりにピエイの名前がある。首脳陣の悩みが伝わってくるメンバーの変遷。

一方の拓殖大も日大と同じく3連敗中。だが、チームの雰囲気は後半戦に3強
との戦いを控えて崖っぷちに立たされている日大とはかなり違う。法政と東海
大には前半に大量リードを許すも、後半にトライを重ねて元気のいいところを
見せる。そして3戦目の関東学院は「格の違い」を感じさせない健闘を見せて
勝利まであと一歩のところまで来た。ここからの4試合は十分に勝利を見込め
る相手と戦いになる。いや、もしかしたらこのままの勢いで下位リーグのグラ
ンドスラマーになってしまうかも知れない。夢(妄想)は果てしなく拡がる。
そのくらい拓殖大は楽しみなチームなのだ。

その拓殖大は調子を上げていることもあってメンバーはほとんど不動となって
いる。関東学院戦からの変更点はWTBが大江(本日はリザーブ)から北方に
替わったことだけだ。ここまで3強を相手に激戦続きのはずだったが、小型の
FWがほぼ固定メンバーで戦えていることからも好調ぶりが窺われる。BKで
は左WTBに北方が起用されていることが目を引く。これで黄金バックスリー
が完成といったところだろうか。本日は今までとは打って変わって晩秋を感じ
させる冷え込みの中での試合となる。そんな「寒さ」を忘れさせてくれるよう
な熱い戦いを期待したい。

[前半の戦い]

風下側に陣地を取った拓殖大のキックオフで試合開始。序盤から超チームとも
動きが堅く、ノックオンなどのミスが多くて試合が途切れがちとなる。昨日に
三ツ沢陸上競技場で観た試合とは少し違う展開。だが、オープン展開を基調と
したアタックの応酬は観ていて楽しいことは間違いない。少々のドタバタはあ
っても「勝ちたい」という気持ちのぶつかり合いはラグビーの醍醐味のひとつ
だと思う。

開始早々で時計の電光掲示が動く前にファーストスクラム(日大ボール)が組
まれたが、ここでの1プレーがこの日を象徴する1シーンとなったことは後で
わかる。日大が何と軽量のはずの拓殖大のFWにスクラムをホイールされてし
まったのだ。日大とて前5人は大きいものの今年のチームはけして重量ではな
い。が、スクラムに自信を持っている日大というイメージが抜けきれないファ
ンにとってはショッキングな出来事だ。相手が自分たちよりさらに小さい拓殖
大であるだけに、日大ファンは必ず修正してくれるはずと思ったのだが...

そんな中、最初に得点のチャンスを掴んだのは風下の拓殖大。2分、日大陣1
0m付近のラインアウトからのオープン展開でSO平野が裏に抜け出てFB茂
野にパスが渡る。茂野が快速を飛ばしてゴール前まで到達したところで日大が
ハイタックルの反則。ここから拓殖大はゴール前のラインアウトからのトライ
を狙うが、日大のノックオンでスクラムに。今度はオープン展開からCTBヤ
カンがボールを持ってゴールを目指すがパスミスがありターンオーバーされて
チャンスが潰える。

さて、本日の日大のSOを務めるのはルーキーの小川。第3戦の大東大戦で初
めてスタメンで起用されてパスセンスに非凡なものを見せたばかりだが、本日
は素晴らしいキッカーであることも披露。10分、HWL付近からのタッチを
狙ったPKは追い風にぐんぐん乗ってコーナーフラッグの手前でタッチを割る
絶妙のキックとなる。タッチインゴールになりそうでならないところに、この
選手のスター性を感じずには居られない。(ちょっと大げさだが...)

しかし日大はこの絶好の先制機を活かせない。モールを形成してゴールを目指
したものの、ペナルティで自滅してしまう。しかしながら16分、日大に待望
の先制点が生まれる。拓殖大ゴール前のスクラムで拓殖大がオフサイドを犯し
たところで日大はPKからのラインアウトを選択。モールからのサイドアタッ
クでHO豊田がゴールラインを越えた。ゴールキックも成功して最初の7点が
日大に記録される。今日は絶対に勝利!の日大応援席が一気に盛り上がる。

流れは確実に日大へ。23分から27分にかけての時間帯は、拓殖だが自陣2
2内からの脱出もままならない苦しい状況に追い込まれる。日大ボールとして
記録されたラインアウトは2回でスクラムは1回。だが、得点はゼロ。モール
を組んでも押し切れず、日大ファンのストレスは溜まる一方だ。FWの日大な
ら確実に得点を取れていたところ。拓殖大のFWの健闘を讃えるべきなのだが、
日大の強力FWをずっと観てきた人間としては物足りないことも確か。

ピンチの後にチャンス有りはラグビーも実は野球と同じ。ということで、30
分、拓殖大は日大陣22m付近でのラインアウトからオープンに展開してSO
平野が抜け出してラック。ここからさらにボールはオープンに展開され、FB
茂野からWTB北方にラストパスが渡る。拓殖大らしいオープン展開の連続、
プラスWTBの快走劇だ。実はここからが本日5トライ中4トライを挙げた北
方のトライショーの始まり。やはり、取るときはスパッと取らないといけない。
拓殖大は昨シーズンと比べるとソツのないチームになっている。GKは外れた
が7−5と日大のリードは2点に縮まる。

お互いのエンジンが完全にかかった前半の終盤10分間は、両チーム四つに組
んだ激しい攻防が展開される。とくに拓殖大はペナルティキックを得た場合に
はまず速攻で仕掛けることで意思統一ができていたようだ。BKにとにかくボ
ールを散らすことにより、相手が対応に疲れたところで一気に引き離す。関東
学院戦では(競った展開になったので)分からなかったが、法政戦、東海大戦
の謎が解けてきた。なるほど、これも「攻撃は最大の防御」の1バリエーショ
ンなのかと。結局、前半は7−5の日大リードで終了。風上の日大はもっと取
れたはず、いや取らなければならなかった。例によって後付けだが。

[後半の戦い]

今度は風下の日大のキックオフで後半が始まる。拓殖大選手が自陣22m手前
でノックオンを犯し、日大は追加点のチャンスを得る。しかし...このスク
ラムもホイールされてしまう。こうなるとマグレではない。続く3分、日大は
HWL付近のスクラムから8→9で攻めて前に出るが、10mラインを少し越
えたところで拓殖大にオフサイド。ここでスタンドがどよめいた。日大のSO
小川がショットを選択する。距離にして39m、しかもさほど強くないとはい
え、熊谷名物の季節風はキッカーにとって逆風だ。

しかし、小川が高めにプレースされたボールを蹴った瞬間、スタンドのどよめ
きの色が明らかに変わった。芯がしっかり捉えられた逆風をものともしないラ
イナー性のボールがクロスバーを力強く越えた。「リーグ戦Gに新たなスーパ
ーブーツ誕生!」と記録しておこう。これで日大のリードは5点に拡がった。
一時期元気がなくなりかけていた日大応援席も活気を取り戻す。

しかし、この日大の追加点が拓殖大のハートに火を付けた。7分、日大のフリ
ーキック(フェアキャッチ)から拓殖大はFB茂野のカウンターアタックを起
点とした連続攻撃で攻め、FLナータ・リチャードが日大ゴール前に達したと
ころで日大に反則。ここから拓殖大は速攻で攻めてLO牧野がインゴールに到
達した。ゴールキックも成功して12−10と遂に拓殖大が逆転に成功した。

関東学院戦で復帰を果たして圧倒的な存在感を示したナータだが、FWの核で
あることはもちろんのこと、相手キックに対しては確実な位置取りとキャッチ
ングでカウンターアタックの起点になれる選手でもある。他のチームにも同じ
役割を担うFWの大型選手は居るが、どうしてもパスは雑になりがち。だが、
ナータの場合はBK選手としても通用するくらい丁寧で気の利いたパスが放れ
る。やはり要注目プレーヤーだと思う。淡々とプレーする必殺仕事人の風貌も
あるのだが、プレーは熱くて深い。

拓殖大は畳みかける。15分、日大陣ゴール前での日大ボールスクラムでター
ンオーバーに成功しオープンに展開。ライン参加したFB茂野からまたしても
ラストパスがWTB北方に渡る。GKも成功して拓殖大のリードは9点(19
−10)に拡がる。結果的には高速バックスリーの活躍でトライが生まれてい
るのだが、その前段階でのSO平野の絶妙の崩しも無視することはできない。
前半は何とか前にプレッシャーをかけることで拓殖大のアタックを止めていた
日大のDF陣だが、ここにきて一気に綻びが出てきた。やはり、これも拓殖大
の戦術なのだろうか。恐るべし!「後半の拓殖大」。

しかし、勝利の女神はまだ日大を見放していない。19分、日大のSO小川が
正面30mのPGを確実に決めて13−19。日大は1T1Gで逆転可能なと
ころで踏みとどまっている。このルーキーの奮闘に先輩達は応えなければなら
ないのだが...。22分、日大は遂に負傷が完全に癒えているとは言えない
ピエイを小川に替えてピッチに送り出す。まだトップスピードで走れないこと
はすぐに分かった。本当ならバックスリーで出したいところだが、あまり負担
のかからないSOでということなのだろうか?

何とか傷が浅いうちに1Tを返して逆転への糸口を掴みたい日大。だが、披露
の色も濃く、自陣で反則を連発する苦しい展開となる。26分に拓殖大は平野
のPGで3点を追加して22−13。33分には日大ゴール前でのスクラムで
日大ボールをターンオーバーして連続攻撃からWTB北方がトライ。GKも成
功して29−13となったところで、チームの勢いの差からも勝負ありとなっ
た。やはり2T2Gでも追いつけない点差は重い。

残り時間が少なくなっていく中で日大も意地を見せる。38分、HWL付近の
スクラムからオープンに展開し、CTB富加見が一気に抜け出て約50mを走
りきり執念のトライ。GKは失敗したがビハインドは11点でまだ可能性はあ
る。だが、日大ファンの願いも空しく、41分に拓殖大はだめ押しのトライを
奪う。決めたのはWTB北方でこれがこの日4トライ目。エースの大松は前半
13分に負傷のため早々と退いてしまったが、その不在を感じさせない活躍を
見せた北方が挙げたトライがこの試合の締めくくりとなった。

[試合後の感想]

スクラムをコントロールされ、モールは押し切れず、BKに展開してもなかな
か有効なゲインが得られない。日大にとって「よいところ」を見いだすのが難
しい試合になってしまった。とくにFW戦で完敗という事実が日大には重くの
しかかる。チームとしてのまとまりの弱さを個の強さでカバーしてきた印象が
強い日大にとって、個の強さに頼れなくなったときに顕在化する現実が遂に明
らかになってしまったということだろうか。ただ、現実は厳しくても前を向い
て欲しい。チーム状態がよくないときこそしっかり結束して欲しいと思う。

この1勝を得たことで、拓殖大の後半戦が本当に楽しみになってきた。サバイ
バル戦で戦う3チームはどれも難敵だが、攻撃力はおそらく4チームのトップ
レベル。「バックスリーで勝負!」というシンプルな戦術で意思統一が図られ
ていることがチームをプラスに導いているような気がする。また、関東学院戦
では足を引っ張っていた印象のあったCTBヤカンもフィットしてきており、
大ブレークも近いような気がする。ディフェンス力など課題もあるが、「観て
いて楽しい」ラグビーは貴重だ。拓殖大の胸のすくようなオープン展開指向の
ラグビーは確実にリーグ戦Gを活性化するような気がする。
                         (2009年10月29日記)

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