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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2009

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法政大学 vs 関東学院大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2009/11/03) 於:秩父宮ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 法政大学  :前半: 1  1  2  0 13 |
       :後半: 0  0  0  0  0 |  13 12
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 関東学院大学:前半: 2  0  0  0 10 |
       :後半: 1  1  3  0 16 |  26 19


◎出場メンバー

 法政 : 1.高橋 2.山森 3.浅原 4.井上 5.栗林 6.武者 7.光安 8.宮田
      9.日和佐 [10].文字 11.渡辺 12.原島 13.宮本 14.舩木 15.竹下
     (16.川口 17.佐藤 18.内田 19.吉岡 20.和田 21.岡本 22.田中)

    ○交代  1→17(後 0分入替),  2→16(後39分入替),  6→19(後39分入替)
        12→21(後39分入替), 14→22(後43分入替)


 関東 : 1.稲垣 2.高 3.田中 4.村下 5.山田 6.辻井 [7].安藤 8.平田
      9.大島 10.木村 11.長谷川 12.三輪 13.笹倉 14.夏井 15.荒牧
     (16.渡邊 17.眞鍋 18.松浦 19.千馬 20.森 21.谷野 22.黒田)

    ○交代 11→22(前23分交替),  2→16(後33分入替)


 レフリー :桜岡将博(日本協会公認)


◎得点経過

 法政大学    0            3                   6     13         13
                            P                   P     G  
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                 T               dx T
 関東学院大学  0       5                  10                     10


 法政大学   13                                                 13
           
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                  P           P          P          G
 関東学院大学 10        13          16         19         26     26


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 法政:前半11分 文字 (PG)
      31分 文字 (PG)
      37分 渡辺 (T)、文字 (G)
 
 関東:前半 6分 大島 (T)
      25分 三輪 (T)
    後半 7分 大島 (PG)
      19分 大島 (PG)
      30分 大島 (PG)
      41分 山田 (T)、大島 (G)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

昨年に続いて11月3日に戦うことになった両チーム。両校のファンにとって
この時期に定着してしまってよいものか?という複雑な想いもあるかも知れな
いが、リーグ後半戦(今年も激戦)の幕開けに相応しい黄金カードであること
は間違いない。とくに、不戦敗(2007シーズン)も含めてこのカード3連敗中
の関東学院は否が応でも気合いが入る。

法政のFWのパワーアップは今シーズンのリーグ戦Gの重要なトピックスのひ
とつと言っていいだろう。大型のFWを擁して強力なスクラムを組み、対戦相
手を震え上がらせていたのも過去の話になりつつある法政。運動量豊かで献身
的にBKにボールを供給し続ける装甲車のようなFWは、法政のトレードマー
クになった感がある。法政の持ち味である高速展開に欠かせないのが、軽量で
もアタックにディフェンスにと獅子奮闘するFWとも言える。

しかしながら、ここまでの法政の戦いぶりを見ると、かつての強力FW時代の
イメージが浮かんでくる。安定したスクラム、そしてパワフルなモールといっ
たリーグ戦でもトップレベルの強さを持つFWができあがった。ただ、ひとつ
懸念されることは、FWで行き過ぎてしまうことでテンポが遅くなり、高速展
開の威力が低下してしまうこと。FWの強化はあくまでもゲームコントロール
の面で優位に立つことであり、「持ち味」は殺さないで欲しいと願っているフ
ァンも多いはず。今シーズンは関東学院のFWが小型化しているだけに、法政
はどのような形でFW戦を挑むのだろうか?

対する関東学院は苦しい戦いが続いている。大型で強力なFWががっちりゲー
ムをコントロールするという、ここ10年くらい続いている関東学院の戦い方
ができなくなっていることがその原因。FWは小型化している分、運動量でカ
バーしなければならないが、それは分かってはいても過去のイメージがなかな
か抜け切れていないように見える。拓殖大に苦戦したのもFWで圧倒できなか
ったことが大きい。

そんな過去の対戦とは逆のイメージを描きながら両チームのメンバー表を眺め
てみる。法政は多少の組み替えはあるものの好調ぶりが反映されたほぼベスト
のメンバー。対する関東学院はBKはほぼ不動だが、FWは2列、3列に変更
がある。ここ数試合でNo.8での出場が多かった山田がLOに上がり、そのNo.8
には平田が起用されている。けして小さくはない。昨シーズンまでが大きく重
かったのだということに気付く。FWのメンバー構成に苦労し続けている関東
学院にとって、これが決定打となるだろうか?

[前半の戦い]

風下側に陣地を取った拓殖大のキックオフで試合開始。序盤から超チームとも
法政のキックオフで試合開始。その法政が開始早々にいきなりビッグチャンス
を掴んだ。1分、法政は関東学院陣22m手前でえたPKからゴール前でのラ
インアウトを選択する。法政FWのパワーアップの真価が問われる場面が早く
もやってきた。想定通りモールを組んで前進を図る。だが押せない。関東学院
FWがまるでスクラムを組んでいるような低い姿勢で耐え凌ぐ、というよりも
逆にドライブをかけて押し返す気配すら見せる。第1ラウンドは関東学院のオ
フサイドでいったん水入りとなった。

続く、第2ラウンドも法政はラインアウトからモールを形成してゴールを目指
す。だが、今度も押せない。逆に法政がノットロールアウェイの反則を取られ
て得点機を逃した。もちろん結果論だが、この序盤のモールの攻防がこの試合
のポイントだった。法政FWとして、関東のFWは想定より強いと判断したの
か、それとも次は押し切れると判断したのか。選手達の気持ちはうかがい知る
ことができないが、関東学院のFWは手応えを掴んだのではないだろうか。

ピンチの後にチャンスありで、関東学院は法政陣10m/22mでのラインア
ウトのワンチャンスを活かす。ラックからFWがサイドを突きパスがSH大島
に渡ったところで、大島が裏に一気に抜け出てゴールポスト真下まで一直線で
到達する。ところが、大島のコンバージョンキックは、法政のFB竹下にチャ
ージされて決まらない。法政が勝利を収めたとしたら、それを呼び込んだビッ
グプレーとして記録しておかなければならない。が、まずは劣勢を予想された
関東学院が5点を先制する。

続く7分、関東学院は法政のキックオフに対するカウンターアタックからNo.8
平田が密集を抜け出て一気に法政陣10mまで前進する。結局最後はスローフ
ォワードでチャンスは潰えるが、巧みなステップワークを活かした素晴らしい
突破だった。だが10分、法政もPGで3点を返す。キックティーが置かれた
位置は10mラインから2mくらいゴール寄りで、距離にして40m近くある
ロングPGをSO文字が冷静に決めた。やはりこのカードは伝統的に縺れた展
開になる。

14分、法政にビッグプレーが出る。法政陣内ゴール前スクラム(関東学院ボ
ール)のピンチで、SH日和佐が一瞬相手SHと入れ替わる形でスクラムから
出たボールの奪取に成功。日和佐は20mくらいゲインした後ショートキック
を使ってさらに前進を図るが、ボールは惜しくもタッチを割る。単発で好プレ
ーが出るものの、法政はなかなかBKアタックでの効果的に前進することがで
きない。オープンに展開しても、ラックで執拗に関東学院のFWに絡まれて球
出しを遅らされ、テンポ良く攻めることができないことが、逆に法政の攻撃の
テンポを遅くしていることが大きい。

24分、関東学院はまたしてもワンチャンスを得点に結びつける。自陣からカ
ウンターアタックでFB荒牧が法政ディフェンダーをかわしながらビッグゲイ
ンしボールがCTB三輪に繋がる。三輪は22m手前に達したところでショー
トパントを使って自らボールの確保に向かうが、交錯した法政選手がはじいた
ボールをインゴールで押さえてトライ。三輪がノックオンしたようにも見えて
微妙だったのだが、カウンターアタックからの一連の流れでスパッと取った関
東学院らしいトライだった。GKは失敗したがこれで関東学院のリードは7点
に拡がる。このトライで関東学院の方にリズムが出てきた。

法政も粘る。31分に文字が今度は関東学院陣10mライン付近からのロング
PGを成功させて6−10。さらに37分、自陣HWL付近で得たPKを起点
として細かくボールを繋ぎながら前進を図り、最後はオープン展開から左WT
B渡辺がゴール右隅に飛び込んだ。文字が難しい位置からのGKを成功させて
法政は13−10と遂に逆転に成功する。ようやく法政らしい(とっても中速
展開だが)FWとBKの連携によるトライが生まれた。

前半はそのまま法政が3点リードで終了。全体的に見れば法政が攻めている時
間帯の方が長かったのだが、FWのアタックに時間がかかっていたことも否め
ない。関東学院はFWが予想以上に健闘していることもあって、全般的には劣
勢ながらもゲームをしっかりコントロールしているように見えるから不思議。
ボールを持つタイミングは少ないが、それをビッグゲインから得点まで繋げて
しまう創造力と集中力はさすがだと思った。

[後半の戦い]

後半、序盤からペースを握ったのは関東学院。4分、法政陣10m/22mで
のラインアウトからオープンに展開し、22mまで前進したところで法政にオ
ーバー・ザ・トップの反則。関東学院はラインアウトからゴールを目指すもの
の、スローイングが後ろに流れてオープン攻撃に変更したところで法政がオフ
サイドを犯す。SH大島が正面20mのPGを難なく決めて関東学院は13−
13と試合を振り出しに戻す。

リスタートのキックオフからの約10分間(8分から18分)はこの試合のハ
イライトと言っていいだろう。関東学院がHWLからやや自陣寄りの位置でノ
ット・ロール・アウェイの反則を犯したところから、関東学院ゴール前での両
チームFWによる激しい攻防の火ぶたが切られた。関東学院は背水の陣を敷い
22m内からも出られないピンチの連続となる。この間、法政ボールのライン
アウトは3回、スクラムは2回を数えたが、モールもスクラムも関東学院の抵
抗にあって決め手にならない。

当然PGを狙うという選択肢もあったはずだが、文字主将は一貫して強気で攻
め続けた。今シーズンのFWは自信を持っており、その自信に応える方がチー
ムとしてのモチベーションも上がるという判断だったのかも知れない。だが、
肝心な局面でラインアウトのノット5mやノックオンがあり、圧倒的なチャン
スの時間で点を取ることができなかった。関東学院FWの集中力を誉めるべき
かもしれないが、法政はFW戦に気を取られているうちに(点が取れないとい
う意味で)泥沼に填ってしまった間がある。

そんな中で15分、法政にビッグチャンスが生まれる。法政はカウンターアタ
ックから文字が裏に抜け出てインゴールに向けてキック。このボールを法政選
手が追うが一瞬手が届かず。ただ、このとき関東学院にオブストラクションの
反則(相手選手のジャージを引っ張った)があり、法政はスクラムからゴール
を目指すがノックオンでチャンスを潰す。逆に関東学院は自陣22内のスクラ
ムからの攻撃で9→14とボールが渡り、夏井が一気に関東学院陣22m付近
まで達する。

関東学院の得点はピンチの後に、ということで19分に大島がPGを決めて遂
に関東学院は16−13と再逆転に成功。じわじわと、しかし着実にPGで3
点ずつ取っていく関東学院の判断が勝利を確実に手の届くところに近づけてい
く。これで法政のお尻に火が付いた。ここまでのFW中心でゆっくり目となっ
ていた攻撃のペースが加速されていく。しかし追加点が記録されていくのは関
東学院の方。それも法政が殆ど選択しなかったPGによる3点ずつというのが
皮肉といえば皮肉。30分のPG成功で関東学院のリードは6点に拡がった。

この1トライ+1ゴールで逆転可能な点差(6点)の中で、30分以降の関東
学院のゲームマネジメントも素晴らしかった。こちらはゆっくり攻めればよい
ということで、ゲームプランをFW中心に切り替える。モールやラックからの
ボールはキープする時間帯を増やすことにより、確実にボール支配を続けなが
ら時計を進める戦術は法政の焦りを誘う。

そしてゲームは法政が後半無得点のまま遂にインジュリータイムに突入。この
最後の最後の局面で、本日の関東学院FWの頑張りを象徴するようなトライが
生まれる。法政陣22m内でのスクラムを起点とした攻撃から関東学院はモー
ルを形成し、じわりじわりとゴールに向かって力を合わせながら押していき遂
にゴールラインを越える。ここでLO山田がボールをグラウンディングしたと
ころで関東学院の選手と応援席から大きな歓声が沸き起こる。

関東学院としては、劣勢と見られていたFWのモールで法政を押し切ってトラ
イを奪ったことは大きい。モールの構成はFW選手が中心で一部のBK選手も
その中に加わっていたわけだが、FWとBKの全員で奪い取った価値あるトラ
イといって差し支えないと思う。関東学院関係者にとっては歓喜の中で、また
法政関係者にとっては落胆が拡がる中で激戦は終了した。

[試合後の感想]

関東学院にとってこの勝利はよっぽど嬉しかったようで、過去数シーズンでも
これほど歓喜を爆発させている選手達を見た記憶がない。また、その価値が十
分ある試合内容だったと思う。スクラムが安定していたことや、No.8平田がF
WからBKへの繋ぎ役として大活躍したことを見ても、関東学院のFWの陣容
はようやく固まったようだ。BKもとくに難しいプレーはしていないが、確実
にボールを前に運ぶコンビネーションができあがりつつある。これで次の東海
大との戦いが楽しみになってきた。勝てば覇権奪還だが、その可能性も現実味
を帯びてきた。

法政はFWのパワーアップが裏目に出てしまった感がある。関東学院と拓殖大
の戦いを見たら「FWで圧倒できる。」と考えてしまうのも無理からぬ所。だ
が、法政は流経大のようにFWで押し切るスタイルを追求してきたわけではな
い。あくまでも、BKに活きたボールを供給し続けてトライを取ってもらうの
が法政スタイル。でも、FWのパワーアップが無駄に終わることはない。強力
FWのチームを相手にしてがっぷり4つの相撲を取ることができれば、安定し
たゲーム運びができる。そう思えば、この敗戦の価値は大きい。東海大との頂
上決戦を含む残りあと2試合で、どのような形にチームを仕上げていくかに注
目したい。                     (2009年11月7日記)

[追記]

この試合をTV録画でじっくり観た。生観戦では法政が押し気味に見えた試合
だったが、TV画面だとまったく違う印象だった。端的に言うと、関東学院の
選手個々およびチーム全体としての局面局面での判断にブレがなく、そのこと
がゲーム運びの巧さに如実に反映されているということ。(法政も随所に好プ
レーを見せたものの、「単発」で終わってしまった感があるのは、このことに
起因するのかも知れない。)おそらく、普段の練習でも、その部分を念入りに
磨いているのだと思う。このチームが永年積み上げてきた財産の大きさに改め
て気付いた。

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