Live Report from Rugby Stadium

熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2009

試合日程&結果

Rugby Top

週間情報

東海大学 vs 日本大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2009/11/07) 於:秩父宮ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 東海大学  :前半: 3  3  0  0 21 |
       :後半: 4  3  0  0 26 |  47 12
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 日本大学  :前半: 0  0  1  0  3 |
       :後半: 0  0  1  0  3 |   6 15


◎出場メンバー

 東海 : 1.三上正 2.水上 3.新田 4.安井 5.三上匠 [6].荒木 7.稲橋 8.マウ
      9.小西 10.阪本 11.宮田 12.山口 13.森川 14.豊島 15.望月
     (16.加堂 17.川原 18.土屋 19.前川 20.鶴田 21.苫谷 22.高平)

    ○交代  8→19(後13分入替), 15→22(後16分入替),  9→20(後21分入替)
         3→16(後22分入替),  5→18(後30分入替),  2→17(後35分入替)
        13→21(後35分入替)


 日大:  1.谷地 2.豊田 3.鳥井 4.タカウ 5.森 6.佐藤 7.塩見 8.細田
      9.中村 10.小川 11.住吉 [12].原岡 13.富加見 14.権 15.田畑
     (16.石橋 17.上野 18.金 19.市川 20.立見 21.ピエイ 22.大江)

    ○交代  6→18(後18分入替), 11→21(後18分入替),  1→17(後21分入替)
         9→20(後30分入替), 10→22(後30分入替),  5→19(後36分入替)


 レフリー :鈴木正史(関東協会公認)


◎得点経過

 東海大学    0                        7       14       21      21
                                        G       G        G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
              P           x
 日本大学    0    3                                             3


 東海大学   21                  28     35   42   47            47
                            G      G    G    T
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                  P
 日本大学    3        6                                         6


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 東海:前半23分 水上 (T)、望月 (G)
      31分 水上 (T)、望月 (G)
      40分 森川 (T)、望月 (G)
    後半17分 森川 (T)、望月 (G)
      24分 前川 (T)、望月 (G)
      29分 宮田 (T)、望月 (G)
      34分 安井 (T)

 日大:前半 3分 小川 (PG)
    後半 7分 小川 (PG)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

日大が苦しんでいる。加藤HC就任で「改革元年」のチームがどんな戦いを見
せてくれるかに期待が集まっていたのだが、残念ながらここまで結果が出てい
ない。確かにボールがよく繋がるようになり、随所にいい形のアタックが見ら
れる。だが、なかなかゴールまで届かない決定力不足はなかなか解消されない。
トライゲッターのピエイ・マフィレオがフル出場できない状態が続いているこ
とも響いているが、トライを取るための道筋が見えないのはファンにとっても
歯がゆいにちがいない。

その日大のメンバーだが、相変わらずLOタカウ、No.8細田以外のFW2、3
列の変動が大きい。BKはルーキーの小川が3戦続けてのスタメン起用となり、
原岡主将が富加美とCTBでコンビを組み、田畑のFBもほぼ確定のようだが、
WTBのコンビはまだまだ週替わり状態。SHは中村が先発だが、深沢の名は
リザーブにもないので怪我だろうか。あと、PRの仲村は日本代表候補のため
欠場。ジャンボが抜けたスクラムも気になる。

対する東海大はここまで危なげなく4連勝。と言いたいところだが、負ける要
素はないにしても、なかなかチームが仕上がってこないもどかしさがある。と
くに来週には優勝のかかった大一番(関東学院戦)を控えているだけに、この
試合でチーム状態をベストに近い状態の仕上げておきたい。東海大も日大と同
じく日本代表候補合宿のためHO木津とLOリーチが欠場。二人はFWの中核
メンバーであるだけに、チームに対する影響も気になる。

東海大の先発メンバーは、主力のやむを得ない欠場と大一番を前にした調整の
雰囲気も感じさせる構成となった。荒木主将の復帰は明るいニュースで、HO
とLOには水上と三上匠が起用された。また、前川のベンチスタートは負傷の
ためだろうか。また、BKではCTB吉田の名がリザーブにも見あたらず、代
わりに山口が出場。吉田も調整だろうか。選手層の厚さは十分にうかがい知れ
るが、やはり本日は単に勝利を収めるだけでなく、どのような形で試合に臨む
のか気になるところだ。

[前半の戦い]

日大のキックオフで試合開始。ボールを受けた東海大はキックを使わずに自陣
からオープン展開で攻める。やはり、本日はキックは極力封印して「自陣から
も継続」のスタイルで試合に臨むようだ。だが、あえなくノックオンで自ら継
続を断ち切ってしまう。日大は直後のFKからLOタカウが速攻で攻めるが東
海大がノットロールアウェイの反則。SO小川が左中間22mのPGを確実に
決めて、開始3分で日大が3点を先制する。

リスタートのキックオフされたボールに対し、日大も自陣からオープン展開で
攻める。お互いに申し合わせがあったわけでもないが、日大からも「この試合
はキック封印で行きます。」という宣言が出た。これで俄然試合は面白くなっ
てくる。ここでも東海大にオフサイドの反則があり、日大は東海大22m付近
でのラインアウトからゴールを目指す。どうも東海大は立ち上がりがよくない
のだが、それはこの試合も同じようだ。

東海大が自陣で反則を連発したことから、5分から15分くらいまでの時間帯
は東海大が自陣ゴールを背負っての思わぬ苦戦を強いられることになる。ただ、
悲しいから日大は自慢の(はずの)FWで東海大の分厚い壁を打ち破ることが
出来ない。7分にはPKからの速攻でゴールポスト真下まで到達したが惜しく
もパイルアップ。13分には自陣10m手前のラインアウトからHO豊田がサ
イドを抜け出てビッグゲインを見せるが、東海大がオフ・ザ・ゲートの反則。
ちょっと反則が多いような気もするが、東海大のFWはパワフルでまとまりが
よい。

小川が約40mのPGを外したところで攻撃権が東海大に移った。日大として
は、先制トライを奪って東海大を慌てさせたいところだった。FWで力負けし
たこともあるが、日大は意図したとおりの継続が出来ていたにもかかわらず、
有効なゲインが得られない状況もあった。東海大のディフェンスが乱れないこ
ともあるが、BKに突破役がいないことが大きい。エースのピエイ・マフィレ
オがこの段階でも後半からの出場とならざるを得ないことが日大には痛い。

18分、東海大はようやく日大陣でのセットプレーによる攻撃権を得る。22
m手前のラインアウトからモールを形成して力強く前進し、日大ゴール前まで
到達するがノットリリースの反則。東海大も、攻めてはいてもなかなか点が取
れないもどかしい時間帯が続く。しかし、前半も半ばを過ぎた23分、日大ゴ
ール前でのラインアウトからモールを押し込みHO水上がトライ。東海大が今
シーズンもっとも得意とする形でこの日の初得点が生まれた。

さて、本日はCTBの吉田が欠場のためプレースキッカーを務めたのはFBの
望月。彼もなかなか安定したキッカーで、東海大ファンも一安心と行った感じ。
リスタートの日大キックオフで、東海大のNo.8マウがあっさりノックオン。本
日に限らず、今シーズンのマウはかつての暴れん坊のイメージが払拭されて大
人しくなったことが気になる。ちなみにマウは後半13分に前川と交代の形で
ピッチを去る。日大にとっては久々の東海大陣でのチャンスだったが、オープ
ン展開でノックオンがあり得点ならず。

29分、東海大は日大陣22m内でのスクラムからモール、ラックを経てHO
水上がこの日2トライ目を挙げる。東海大の塊のようなFWのパワーを前にス
クラム、モールで為す術もなく後退を続ける日大に、かつての強力FWの面影
は殆ど感じられない。一昔前は完全にFWの力関係が逆だったことを思えば、
ちょっと寂しい感情を抱かざるを得ない。望月のゴールキックも成功して東海
大のリードは11点(14−3)に拡がる。

FW中心の攻めが続き、なかなかボールが回らないBKが欲求不満気味の中で
前半終了間際の40分、ようやくBKのオープン展開によるトライが東海大に
生まれる。左右に一度ずつワイドにボールを動かし、FWのラックからボール
が出た段階で日大のFW周辺の防御が薄くなっていた。ここを、日大のCTB
森川が突いてゴールラインをあっさり越えた。FWに拘らずにテンポアップし
たら簡単に取れてしまったのは、東海大にも日大にも誤算だったかもしれない。
GK成功で東海大が21−3とリードを拡げたところで前半が終了した。

[後半の戦い]

完全燃焼なのに点が取れない日大に対し、不完全燃焼ながら3トライを奪えた
東海大。いや3トライしか奪えていないとも言える前半だった。果たして後半
はどうなるか。前半に続き、日大はキックを封印してオープン主体で攻める。
時にビッグゲインも見せるが決定的な局面までは行かない。東海大も守るべき
所はしっかり守っている。一人の突破が有機的に繋がって得点に至るラグビー
ができれば日大もここまで苦しむことがなかったと思わずにはいられない。そ
れがしっかりできるのが3強ということにもなる。

さて、後半も先制したのは日大。7分にSO小川が距離約40mのロングキッ
クを決めた。この得点差でPG?と思わずにはいられないが、ここはルーキー
の素晴らしいキックに拍手を送るのみ。願わくば、決定的局面のプレッシャー
がかかる中で勝負の行方は小川の右足に託された、というような状況でのキッ
クを見たいところだ。

東海大としては、決定的な局面まで至っていないとはいえ、このままずるずる
と日大に攻めさせたくないところ。だが10分、日大は東海大陣10mでのラ
インアウトからSH中村が後ろに抜けてインゴールに向けてキック。東海大は
辛くもキャリーバックで逃れる。得点板が21−6から動かないまま時間が過
ぎていく。

17分、ようやく東海大の得点掲示が動く。日大陣10m/22mでのライン
アウトからモールを形成して大きく前進してゴール前へ。ラックからオープン
に展開されたところでパスのこぼれ球CTB森川が拾って一気にゴールライン
を突破した。GKも成功して東海大のリードは22点(28−6)に拡がる。
18分には日大はSO小川に代えてピエイを投入した。どのくらい走れるのか
気になる。心なしか足を引きずって走っているようにも見えるのだが、確かに
ステップは軽い。

21分、東海大は日大陣22m内のスクラムからショートサイドを攻めるがノ
ックオン。逆に日大は自陣22m付近のスクラムから8→9→12とボールが
繋がりCTB原岡が抜けるが惜しくもスローフォワード。今度は東海大がスク
ラムからショートサイドを攻めてゴール前(左サイド)のラック。ここからF
L前川がパワフルなランを見せてトライを奪った。GK成功で35−6。

ようやく勢いが出てきた東海大が畳みかける。29分、PKからの速攻を起点
とした連続攻撃によりWTB宮田がトライを奪う。ゲームの終盤になって東海
大が「らしさ」を発揮し始める。34分には日大陣22m付近でのラインアウ
トから東海大はモールを形成して力強く前進しLO安井がトライ。FWの日大
は完全に過去のものとなってしまったのだろうか。往年のファンには信じられ
ないようなシーンが続く。

ゲームもこのままのスコアで終了するかと思われた39分、途中出場のピエイ
が魅せてくれた。起点は自陣のインゴールで、ピエイが左サイドから完全な横
走り状態で中央まで到達。と、身体をひらりと鋭角的に翻して一気に前進を始
めた。この意表を突いたプレーに東海大DFも対応できずピエイはHWL付近
まで到達する。本調子ならば絶対にこのまま走り続けてゴールラインを越える
だけなのだが、ピエイはキックで前進を図る。結果は一歩速くボールに接触す
ることに成功した東海大選手がキャリーバックで逃れる。足の状態が万全だっ
たら香港のセブンズ大会と同様に「100mトライ」の伝説が生まれていたこ
とだろう。

結局試合はこのままノーサイド。日大は思いきりボールを展開することができ、
課題もしっかり見えた試合となったが、東海大にとってはどうだったのだろう
か。控えのメンバーが出てもチーム力が落ちない層の厚さははっきり分かった
が、大学選手権で勝ち残るには何かが足りないと思わせる試合でもあった。

[試合後の感想]

東海大は5戦目も圧勝。いよいよ残りは関東学院、そして法政との戦いとなっ
た。東海大の強力FWの力がどれだけ通じるかはもちろん試合観戦の楽しみの
ひとつ。だが、モチベーションの持っていき方が難しい試合とはいえ、ところ
どころでチームにエアポケットのような状態ができていたことが気になる。5
シーズンくらい前までの東海大の試合で感じたことが久しぶりに思い起こされ
た。2強に対してエアポケットを作ったら間違いなくやられるし、それは致命
傷にもなる。しっかりとチームの最終仕上げに臨んで欲しい。

日大は自分たちのやりたい形を見せることができたことが収穫。早期解決は難
しいが「FWの日大」の復活を望みたい。もちろんモールごり押しタイプのF
Wではなくて、機動力とパワーを兼ね備えたボールが動かせるFWだ。これか
ら対戦する法政、関東学院のどちらにも勝つことは難しいが、最終戦での必勝
を目指して頑張って欲しい。チームのベースが完全に固まって状態でピエイが
完全復帰を果たせば、来シーズンに繋がる結果が得られるはずだ。
                         (2009年11月10日記)

Top       

本ウェブサイトの記述内容の無断転載を禁じます。