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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2009

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東海大学 vs 関東学院大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2009/11/14) 於:秩父宮ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 東海大学  :前半: 1  1  0  0  7 |
       :後半: 1  0  0  0  5 |  12 10
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 関東学院大学:前半: 1  0  1  0  8 |
       :後半: 0  0  0  0  0 |   8 11


◎出場メンバー

 東海 : 1.三上正 2.木津 3.新田 4.安井 5.三上匠 6.稲橋 [7].荒木 8.マウ
      9.鶴田 10.阪本 11.宮田 12.吉田 13.森川 14.菅生 15.豊島
     (16.加堂 17.水上 18.土屋 19.前川 20.小西 21.山口 22.望月)

    ○交代  9→20(後10分入替),  7→19(後20分入替)


 関東 : 1.稲垣 2.高昊 3.田中 4.村下 5.山田 6.辻井 [7].安藤 8.平田
      9.大島 10.木村 11.長谷川 12.三輪 13.笹倉 14.夏井 15.荒牧
     (16.渡邊 17.眞鍋 18.松浦 19.千馬 20.森 21.谷野 22.高健)

    ○交代  


 レフリー :藤実(日本協会公認)


◎得点経過

 東海大学    0                                  7               7
                                                  G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
               T                P                    dx
 関東学院大学  0     5                8                           8


 東海大学    7                      12                         12
                                T
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
           
 関東学院大学  8                                                  8

 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 東海:前半33分 荒木 (T)、吉田 (G)
    後半21分 豊島 (T)

 関東:前半 4分 大島 (T)
      21分 大島 (PG)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

今シーズンも東海大、法政、関東学院の「3強」による優勝争いとなったリー
グ戦グループ。シーズン開始当初は、関東学院の出遅れから見て東海大と法政
の2チームによる最終戦が優勝決定戦となる可能性が高いと見られた。しかし
ながら、関東学院も実戦を積むごとにチーム状態を上げていき、11月3日の
法政戦で勝利。このことにより、本日の東海大戦で勝利を収めればひとあし先
に優勝決定となる。最終戦を優勝決定戦にしたい東海大としてもここは負ける
わけにはいかない。

今シーズンの関東学院を一言で形容すると「負けないチーム」ということにな
るかもしれない。まず実際にピッチに立つ選手達を見て気付くことはFWの小
型化で、過去数シーズンのような対戦相手をFWで圧倒するラグビーは実際に
もできていない。ただ、FWの強い流経大や法政には確かに苦戦しているもの
の、圧倒された訳ではなく際どいところで耐え凌ぐ強さを持っている。BKに
しても例年のようにトライの山を築くスピードスターが不在。なのに、なぜか
負ける要素が見あたらないのだ。

チーム事情でやむを得ないのかもしれないが、過去には見られなかったという
意味で今シーズンの関東学院は面白いチームになってきた。あと、ひとつ特徴
を挙げるとすれば、今シーズンのチームは結束力があるということ。緒戦の中
央大戦を観てもわかるように、シーズン当初は明らかに出遅れを感じさせる不
安な状態だった。しかしながら、過去にはなかった危機感を背景にしっかりと
チームを作り上げてきた感がある。その中心的な役割を担った安藤主将の存在
感の大きさを感じる。この試合では、メンバーもほぼベストの陣容で固まった
と見てよく、覇権奪還はもちろん、選手権での活躍も睨んだパフォーマンスを
期待したい。

対する東海大は日本代表に選出されたリーチの欠場が痛いが、ジャパンの2戦
目で初キャップ獲得を目指す木津の戦列復帰は嬉しい材料。また、リーチの替
わりにLOに入った三上匠の高さはラインアウトで武器になるはず。こちらも
FW、BKとも陣容が固まり、さらにリザーブにも血気盛んな面々が名を連ね
る層の厚さは他校にとってうらやましいところ。その東海大としては、自信を
持つFW8人の結束で関東学院を圧倒したいところだが、深入りは禁物。その
あたりのバランスの見極めが復帰2戦目となる荒木主将が担う重要な役割かも
知れない。心配された雨も上がり、ピッチ上でどんな戦いが繰り広げられるの
か、否が応でも期待が高増。

[前半の戦い]

関東学院のキックオフで試合開始。序盤から緊迫した戦いとなることが期待さ
れたが、開始早々に関東学院が得点を奪う。1分、関東学院はHWL付近のラ
インアウトからキックで攻める。そして、東海大の蹴り返しに対してカウンタ
ーアタックで攻めてあっという間に東海大ゴール前まで到達。ラックからFW
でじっくりトライを狙うかと思われたが、SH大島が絶妙のパスダミーで前方
のゴールライン付近にできたギャップに飛び込んだ。ゴールキックは失敗した
が5−0で関東学院がリードを奪う。(法政戦のチャージといい、今回の失敗
といい、大島にとっては最初のGKは鬼門か?)

東海大もすぐさま反撃。キックオフから関東学院がオープン展開で攻めるもの
のミス。ボールを拾った東海大がカウンターアタックから素早く攻めて、ボー
ルを持った荒木が一気に関東学院のゴールラインを越える。残念ながら関東学
院選手の巧みなタックルに遭ってボールをグラウンディングできなかったが、
荒木主将の強さと速さが光ったランニングだった。この一連の応酬にも、相手
にミスは遠慮なく頂きで、素早く確実にチャンスに繋げる隙のないラグビーが
できるのが、今ピッチの上で戦っている2チームの強みだと気付かされる。

次は関東学院の番。7分、東海大のキックに対するカウンターアタックからF
B荒牧がビッグゲインし東海大陣に入ったところでWTB長谷川に絶妙のパス
が渡る。長谷川がタッチライン際を快走してゴールを目指すが東海大のタック
ルに阻まれてノックオン。逆に10分、東海大は自陣10m付近のラインアウ
トからモールで前進し、FL荒木主将が再び関東学院ゴールに迫る。22mラ
インを突破し、前に立ちはだかる選手があと一人という状況で荒木が送ったパ
スは受けた関東学院のCTB笹倉もビックリのナイスパスとなり、関東学院は
事なきを得た。荒木がそのまま一人で行った方がよかったのでは?と思わせる、
これも惜しいシーンだった。

といった具合に、両チームの持ち味が活きた見応えのアタックの応酬が続く。
とくに関東学院の相手の一瞬の隙も見逃さない継続が素晴らしい。セットから
継続後のアタックであれ、カウンターアタックであれ、必ずしも起点では形が
十分に整っている状態ではない。が、FL安藤、No.8大島、SH大島、SO木
村、CTB三輪、FB荒牧といった突破力のあるプレイヤーがピンポイントで
ゲインすることで自然発生的に攻撃の陣容が整ってくるから不思議だ。おそら
く、始めに決め事ありきの他チームとは違った練習を積んでいるのだろう。ボ
ールキャリアーの発想を瞬時に共有して、結果的に偶発的ではないアタックに
仕上げていくところが関東学院のラグビーの持ち味のような気がする。

一方の東海大も、過去のチームではアタックの局面で決め事に縛られすぎて居
るのではと感じさせることが多かった。しかしながら、組織的でありながらも
プレーにタメや閃きといったものが活かされるようになってきている。CTB
吉田、FB豊島といったキープレイヤーが自信を持ってプレーしていることも
大きいのかも知れない。タイプは違っていても、ボールが大きく動くラグビー
は観ていて楽しい。

あっという間に時計が進んでいく中で19分、関東学院はHWLからやや自陣
に入った位置でのラインアウトで東海大ボールのスティールに成功。ここから
SH大島がうまく裏に抜けて前進するところで東海大がノットロールアウェイ
の反則を犯す。正面25mの位置のPGを大島が確実に決めて関東学院のリー
ドが8点に拡がった。東海大もすかさず反撃し、25分にはFB豊島が絶妙の
キックで関東学院ゴールに迫る。22mラインを越えてあと数mのところで最
後の一蹴りをタッチライン際からインゴールに運ぶことができたものの、追走
してきた関東学院選手が一足先にグラウンディングして得点ならず。

しかしながら、前半も終盤に差し掛かった33分、東海大にようやく得点が生
まれる。HWLから少し関東学院陣内に入った位置でのラインアウトからオー
プンに展開してCTB吉田がラインブレイクに成功。そして、東海大は一気に
ゴール前まで到達してラックから関東学院ゴールを窺うが、関東学院も身体を
張ったディフェンスで阻止する。しかしながら、ゴール正面付近の位置まで移
動したラックから東海大はオープンに展開し、左サイドに完全にオーバーラッ
プパスができた状態でHO木津からラストパスがFL荒木に渡った。FWもど
んどんライン参加する東海大らしいトライ。GKも成功して関東学院のリード
は僅か1点に縮まる。

勢いに乗る東海大は38分に関東学院ゴール前でのラインアウトから得意のモ
ールで追加点を目指す。しかしながら、関東学院も法政戦で見せたような巧み
なモールディフェンスで抵抗し、モールアンプレアブルでピンチを脱する。モ
ールで取って勢いを付けたい東海大だったが、ことごとく阻止される。42分
には関東学位のFB荒牧がHWL付近からドロップゴールを目指すが、左に外
れる。飛距離は十分で、もう少し近い位置なら入っていたかも知れないと思わ
せるキックだった。本当に関東学院は油断ができない。両チームの激しい攻防
の余韻を残しながら、前半が終了した。

[後半の戦い]

両チームともディフェンスがしっかりしているが、元来は攻撃型のチーム。F
W中心(東海大)、BK中心(関東学院)という違いはあるが、見応え十分で
あることは間違いない。果たして後半はどのような展開が待っているのだろう
か。関東学院リードとは言っても、リードは僅かに1点。前半は序盤から関東
学院が巧みにゲームを運んだ感があるが、前半の終盤は逆に東海大FWのエン
ジンがかかってきた感がある。期待が膨らむ中で、今度は東海大のキックオフ
で後半が始まった。

開始早々の1分で東海大が逆転のチャンスを掴む。関東学院ゴール前でのライ
ンアウトからモールを形成してゴールを目指すが、関東学院も上手く凌ぐ。時
間をかけるとなかなか得点が奪えないことが分かっている東海大は、ゴール前
のラックからなるべくボールを動かすように工夫して攻めるものの関東学院の
厚い壁は打ち破れない。3分、ゴール前スクラムから東海大は波状攻撃を見せ、
SO阪本が左タッチライン際にキックパスを送る。キックは左サイドに走り込
んだWTB宮田に確実に届いたがゴール目前で惜しくもノックオン。取ってい
れば確実にトライだっただけに東海大応戦席からは大きなため息が漏れる。

関東学院ゴールを前にして、東海大のFWの圧力を武器とした猛攻が続く。関
東学院は20分までの間、ひたすら自陣ゴールを背にして東海大のアタックを
耐え凌ぐ苦しい展開となる。関東学院に反則も増えてくる。ただ、決定的な場
面が作れないのは東海大のラインアウトの不調に原因があった。マイボールを
しっかり読まれてスティールされることが多く、これでは得意のモールも活か
せない。ただ、防戦一方の関東学院の選手達に僅かではあるが疲れの表情が見
えてきたことも確か。東海大FWのパワフルな攻めが徐々にボディーブローの
ように効いてきたのかも知れない。

19分には関東学院陣ゴール前の東海大ラインアウトは、投げ入れられたボー
ルが後ろに流れるものの、ボールをうまく拾ったSO阪本がゴールラインを越
えてが、惜しくもパイルアップ。関東学院は際どいところで得点を許さない。
しかしながら、東海大ペースながらなかなか得点表示が動かない状況の中での
21分、ようやく東海大に得点が生まれる。関東学院ゴール前でのスクラムを
起点とするアタックで東海大はFWのサイドアタックで前進。ゴール前ででき
たラックからゴールを目指すが、関東学院のディフェンスは堅い。だが、ボー
ルをオープンに展開したところで、ライン参加したFB豊島がディフェンダー
を振り切ってインゴールに飛び込んだ。GKは失敗したが、12−8と東海大
が遂に逆転に成功した。

リードを奪われたと言っても、関東学院のビハインドは1トライで逆転可能な
4点。ここから両チームの死力を尽くした攻防の連続となる。FW戦では苦し
められている関東学院も、BKに展開するとゲインを重ねてチャンスが次々に
生まれる本当にスリリングで一瞬も目を離すことができない展開が続く。34
分を過ぎたあたりからは、逆転そして覇権奪還に燃える関東学院の時間帯とな
る。今度は東海大が自陣22m付近で釘付けとなる番だ。36分、関東学院は
東海大陣22m内でのスクラムという絶好のチャンスを掴む。が、サイドアタ
ックを狙ったNo.8平田がボールを拾い損ねてノックオン。スクラムをプッシュ
したときに味方選手の足にボールが触れてしまったのが不運だった。

続く東海大ボールスクラムで関東学院がアーリーエンゲージ。ここから東海大
はFKから速攻で攻めてSO阪本がボールをタッチに蹴り出す。関東学院陣1
0m付近でのラインアウトから東海大がボールを奪取に成功したところで関東
学院にオフサイドの反則。ここで東海大はPGを狙わずに敵陣でボールキープ
の作戦を取る。しかしながら、東海大は反則で攻撃権を関東学院に渡してしま
う。関東学院はPからGOの継続で攻めるが惜しくもノックオン。

ゲームはラスト5分で縺れに縺れる。41分のHWL付近での東海大ボールス
クラムに対して関東学院がホイールに成功。関東学院は同じ位置でのスクラム
からオープン展開で攻めるものの左サイドでパスミス。このボールを東海大選
手が足で引っかけて前進しボールを拾って関東学院ゴールに迫る。しかしなが
ら、タックルに遭ったところでノットリリース。関東学院がPからGOで攻め
たところでハイタックルがあり、関東学院はさらにPからGOで逆転を目指す。

ここで時計は44分となり、ラストワンプレーでNo.8平田が抜けてラストパス
(になるはずのパス)をWTB長谷川に渡す。長谷川はタッチライン際でディ
フェンダーを振り切って東海大の残る砦はあとひとり、FBの豊島だけとなっ
た。長谷川がゴールを目指して快足を飛ばす中で、豊島は冷静にタックルに入
るタイミングを見計らっていた。内側にフォローする平田へのパスも抑える絶
妙の間合いで長谷川をタッチラインに押し出す。地面に這い蹲って悔しがる長
谷川を尻目にノーサイドを告げるホイッスルが吹かれた。ひとつ間違えば逆転
サヨナラトライに結びついた何とも切ない幕切れ。こうして今シーズンここま
でのリーグ戦G最高の試合は、大きな興奮と余韻を残す形で終わった。

[試合後の感想]

覇権奪還を目指す関東学院、そして最終戦を前に(連覇に向けての)終戦を迎
えたくない東海大の意地と執念がぶつかった本当に見応えのある戦いだった。
とくにこの試合の醍醐味はラスト10分間の両チームのせめぎ合いに集約され
ていたと思う。とくに劣勢を予想されながらも、果敢に攻めて序盤はリードを
奪い、終盤も東海大をあと一歩の所まで追い詰めた関東学院の健闘が光った。
僅か2ヶ月前の開幕時に大いなる不安を抱かせる状態からよくぞここまで来た
と言っていい。産みの苦しみかも知れないが、個人の能力と閃きを15人で共
有して戦えるチームになってきたと感じる。

今シーズンの関東学院のラグビーの特徴(面白さ)は「形のない攻め」に集約
されているような気がする。カウンターアタックがその典型で、相手の一瞬の
隙を見逃さずに一人の選手がゲインしたところから、一見自由奔放に見えるア
タックが始まるのだ。SHからボールがBKに回った時点でラインもできてい
ない状態のことも多いが、ボールが繋がっていく時点でアタックの形が整備さ
れていくラグビーはディフェンスする側にも対応が難しい。FW第3列、HB
団、CTB三輪にFB荒牧を加えた7人の選手のいずれもが起点になりうる突
破力を持っていることが対戦相手には脅威になる。大学選手権に向けて非常に
楽しみなチームが完成するような気がする。

とは言っても、ゲームを支配していたのはFWのパワーに勝る東海大だったよ
うな気がする。とくに後半は関東学院のFWはかなり厳しい状態に追い込まれ
ていたように感じられた。また、BKではCTB吉田やFB豊島といった顔の
見える選手が台頭してきたことが大きい。関東学院のある種の自由奔放さとは
違い、また、約束事にもとらわれすぎることのないFWとBKが一体になった
15人ラグビーが完成しつつある。最終戦の法政戦は、優勝もかかった厳しい
試合になるが、今シーズンのリーグ戦での集大成となる戦いを見せて欲しいと
思う。                      (2009年11月28日記)

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