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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2009

試合日程&結果

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週間情報

東海大学 vs 法政大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2009/11/29) 於:秩父宮ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 東海大学  :前半: 2  0  0  0 10 |
       :後半: 2  1  0  0 12 |  22  7
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 法政大学  :前半: 0  0  2  0  6 |
       :後半: 1  0  2  0 11 |  17  9


◎出場メンバー

 東海 : 1.三上正 2.木津 3.新田 4.安井 5.三上匠 6.リーチ [7].荒木 8.マウ
      9.鶴田 10.阪本 11.宮田 12.吉田 13.森川 14.菅生 15.豊島
     (16.加堂 17.水上 18.稲橋 19.前川 20.小西 21.山口 22.望月)

    ○交替  8→19(後18分入替),  4→18(後26分入替)


 法政 : 1.浅原 2.山森 3.佐藤 4.井上 5.栗林 6.武者 7.光安 8.川口
      9.日和佐 [10].文字 11.田中 12.原島 13.宮本 14.竹下 15.渡辺
     (16.草間 17.野田 18.山本 19.宮田 20.本村 21.岡本 22.舩木)

    ○交代  6→19(後32分入替), 11→22(後35分入替)


 レフリー :河野哲彦(日本協会公認)


◎得点経過

 東海大学    0         5         10                            10
                         T         T
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                      dx         P      P
 法政大学    0                       3      6                   6


 東海大学   10  17         22                                  22
            G          T
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
               x    P     P   T
 法政大学    6          9     12  17                           17


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 東海:前半 8分 マウ (T)
      18分 豊島 (T)
    後半 1分 木津 (T)、吉田 (G)
      12分 菅生 (T)、吉田 (G)

 法政:前半22分 文字 (PG)
      29分 文字 (PG)
    後半 9分 文字 (PG)
      15分 日和佐(PG)
      19分 田中 (T)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

いよいよ今シーズンのリーグ戦も最終戦。関東学院の頑張りでやや縺れてはい
るが、今シーズンもラストゲームは東海大と法政の戦いになった。東海大はこ
の試合に勝てば文句なしの全勝優勝で、しかも3連覇。一方の法政は勝っても
関東学院を加えた3校間の得失点差の関係で、僅かに優勝の可能性が残るのみ
という厳しい状況にある。東海大も敗れれば3位となる可能性が高いため、こ
こで負けるわけにはいかない。とは言っても、結果はどうであれ大学選手権に
向けて「有終の美」を飾って欲しいというのがリーグ戦Gファンの偽らざる気
持ちだ。

好勝負となることを期待して両チームのメンバー表を眺める。東海大はリーチ
が復帰してFWは最強の陣容となった。ただ、リーチはシーズン当初のLOで
はなくジャパンと同じFLとしての出場。高さのあるルーキー三上匠の急成長
もあるが、リザーブに稲橋と前川が控えること自体、東海大の選手層の厚さを
感じずには居られない。BK陣もほぼ完全に固まり、あとは大学選手権に向け
てコンビーネーションに磨きをかけていくことになる。FWが強化された法政
を相手にどんな戦いを見せてくれるか楽しみ。

対する法政もほぼベストメンバーだが、No.8は日大戦に引き続き第1列の控え
としての出場が多かった川口が務める。また、左WTBは突破力のある田中が
起用されていることが目を惹く。ただ、多少のメンバー変更はあるにしても、
関東学院戦での敗戦を機にBK展開へ軌道修正(というよりも原点回帰)して
この試合に臨んでくるはず。東海大のFWは、個々が強いだけでなくまとまり
の良さでも勝負できるだけに、FWのパワーアップを相手FWの力を分散させ
るために有効に活用したいところ。ゴリゴリした感じとはひと味違ったFW戦
に期待したい。

[前半の戦い]

ピッチに登場した両チームを見て、とくに法政のFWの選手達からは、湯気が
立っているのではと感じさせるくらいの「気合い」が感じられる。その法政の
キックオフで試合開始。直後から両チームのFWによる接点での火花が散るよ
うな戦いが始まった。

4分、東海大がビッグチャンスを掴む。法政陣10m/22mでのラインアウ
トからSH鶴田がサイドを抜けて大きくゲインし22mラインを越える。しか
しながら、ゴールまであと10mと迫った地点でのラックで法政にターンオー
バーを許しチャンスが潰える。逆に6分、法政がHWL付近のスクラムからオ
ープンに展開するものの、2次攻撃の段階で惜しくもノックオン。法政はセッ
トからは素早くオープンに展開するプランのようだ。

試合は、序盤から頂上決戦に相応しくボールが右に左にと大きく動く展開とな
るが、先制点を奪ったのは東海大の方だった。8分、東海大が法政陣10m付
近のラインアウトからオープンに展開してセンタークラッシュ。ここから左に
できたラインにボールがテンポよく展開され、WTBの位置にいたマウが法政
タックラーを払いのけて約30m走りゴールラインを突破。ゴールキックは失
敗したが、東海大が5点を先制した。

リスタートのキックオフから法政もカウンターアタックで反撃。東海大陣22
m付近に到達したところでCTB原島がドロップゴールを狙うが右に外れる。
さらに13分、法政は東海大陣10m付近のスクラムから8→9→14でショ
ートサイドを攻めるがWTB竹下がタッチに押し出されてしまう。法政はセッ
トから素早く攻めて順目順目で継続かつ前進を図るものの、東海大の組織ディ
フェンスを乱すまでに至らずなかなか有効なゲインが得られない。

18分、東海大に得意とする形から追加点が生まれる。法政陣22m付近での
ラインアウトからモールを形成して前進。モールはジグザグ歩行のような形で
右に左にと動きながら次第にゴールに近づいていく。左右には動いても強固な
パックで法政にモールを割らせない。そして、モールがゴールに近づいた段階
で後方でボールを確保していた荒木主将が抜けだし、フォローしたFB豊島に
ラストパス。モールをしっかり押し込んで最後はBKで取る東海大スペシャル
により、東海大のリードは10点に拡がる(GKは失敗)。

試合はこのまま勢いを掴んだ東海大がペースを握るものと思われた。しかしな
がら21分に東海大に応援席を一瞬凍り付かせるようなプレーが飛び出す。東
海大陣10m付近のラックでリーチが法政のSH日和佐に絡み、そのままエイ
ヤと日和佐をリフティングしてしまったのだ。日和佐は一瞬頭が下になりなが
らも最後は足から着地となって事なきを得た。リーチも思わずやってしまった
というか苦笑いのプレーだが、危険なプレーであることには変わりない。法政
はSO文字が約40mのPGを冷静に決めて3点を返す。ここがこの試合の重
要なターニングポイントになったことは後で分かる。

29分にも文字が東海大のオフサイドで得た正面37mのPGを成功させてビ
ハインドは4点に縮ます。2つめのトライで見えかけていた東海大の圧勝ムー
ドもここで怪しくなってしまった。ゲームの流れは法政に傾き始める。本日の
法政はラインアウトからはモールを作らずに素早くオープンに展開する。32
分にはスペシャルプレーが飛び出した。東海大陣左10m付近のラインアウト
から素早くオープンに展開されたボールは、CTBのところで左側にできたラ
インにスイッチ。ここから左WTBの渡邊がタッチライン際を走る。結果的に
はノックオンでチャンスが潰えるが意表をつく面白いプレーだった。

法政は東海大陣でさらにビッグチャンスを掴む。33分、東海大陣22m手前
の東海大スクラムから出たボールを法政がチャージダウンに成功。このボール
を法政が確保に成功してオープンに展開し、文字が右WTBに向けてキックパ
スを送る。竹下が確保できればトライだったがボールは前方に逸れてタッチイ
ンゴール。この時間帯はゲームが殆ど東海大陣で行われていただけに、法政と
しては早い段階で1トライ返したおきたかった。結局29分以降は得点ボード
が動くことなく前半が終了した。

[後半の戦い]

東海大が2トライを奪ったものの、法政が2PGを返して東海大のリードはま
だ4点。もちろん試合の行方はわからない。後半の東海大のキックオフで今度
は東海大にスペシャルプレーが飛び出した。CTB吉田が浅めに蹴ったボール
をスピードに乗って飛び出したリーチが確保に成功し大きく前進する。FWで
サイドを突きながらボールが法政陣22m付近まで運ばれたところで、法政が
オーバー・ザ・トップの反則。東海大はラインアウトからモールを形成して、
ゴールポストに目指しながらも力強く前進を図り、HO木津がトライを挙げた。
パワーアップしたはずの法政FWも唖然呆然といった感じの完璧なモールによ
るトライだ。東海大のモールは陣形が乱れないだけでなく、前進する速度が速
いことでも特筆に値すると思う。今度はGKも成功し17−6となる。

後半開始早々に(一瞬虚を突かれたような形で)ビハインドを11点に拡げら
れた法政だが、もちろんこのまま黙っているわけにはいかない。3分、東海大
陣10m付近のラインアウトで東海大にデンジャラスプレーの反則。文字はこ
こでもPGによる3点を選択するが、右中間38mの位置からキックは外れる。
しかしながら東海大の自陣での反則禍は止まらない。9分にはラックでハンド
の反則を犯し、ゴール正面30mのPGを今度は文字が決めて法政のビハイン
ドは8点に縮まる。

追われる立場の東海大も逃げ切りを図る。10分、東海大は法政ゴール前での
ラインアウトの絶好のチャンスを掴むがマイボール確保に失敗。しかしながら、
東海大がキックのチャージに成功する。自陣ゴールを背にしてボールは何とか
法政が確保しオープンに展開するものの法政がノックオン。法政陣22m内で
のスクラムから東海大はサイドアタックを経てオープン展開。宮田から菅生へ
とWTB同士での飛ばしパスが成功し、菅生がゴール左隅に飛び込んだ。GK
は失敗したが22−9と東海大のリードは13点に拡がる。

しかし、試合は法政も粘る。直後のキックオフで東海大がまたしても自陣での
痛恨の反則。文字が今度も正面20mのPGを決めて東海大のリードは10点
に縮まる。せっかくトライを奪っても、東海大は後方から迫り来る追っ手にじ
わじわと距離を縮められる感じ。動揺をもたらすほどではないが東海大選手達
の心理状態も内心穏やかではないはずだ。試合は自分たちが優位に進めている
はずなのに、得点ボードを見ると圧倒できていない。なるほど、PGにはこん
な精神的な効果もあるのかということに気付く。

16分のリスタートのキックオフで今度は東海大がレイトチャージ。法政選手
がキックしたボールの落下地点は東海大陣10mを越えた辺り(左中間)。文
字なら問題のない位置だが、今度も狙うのか?といった感じで文字を見たレフ
リーに対し、文字は躊躇なくタッチラインを方向を指さした。時間帯から見て
もいよいよ法政は勝負に出たようだ。FWに向かって、「今度はお前達で決め
ろ!」というような暗黙のサインのようにも見えた。(ここでの文字の選択は、
もし、法政がこの試合に勝利を収めていたとしたら、ターニングポイント2に
なっていただろう。)

ここで、確かに法政のFWの闘志に火が付いたように見えた。東海大陣22m
内でのラインアウトからモールを形成してFWで激しく前進を図る。そして、
ゴール前でのラックからボールは左オープンに展開され、左WTB田中がゴー
ル左隅のギリギリの位置にボールをグラウンディングに成功。GKは失敗した
ものの17−22と、法政は1トライで追いつくところまで来てしまった。こ
こで法政の応援席の興奮度が一気に沸騰する。リスタートのキックオフでSH
日和佐が自陣から一気に東海大陣深くに攻め入るなど、法政の勢いは止まらな
い。ゲームの流れから見ても、法政の逆転までそう時間はかからないと思われ
るような一種異様な雰囲気が秩父宮に漂い始めた。

しかし、ここで東海大は満を持してストッパー(火消し役)を投入する。ベン
チで今か今かとピッチに飛び出すチャンスを窺っていた前川をNo.8マウに替え
て起用。前川は水を得た魚のようにスクラムからサイドアタックで力強く前進
を図る。おそらくこのプレーが東海大の選手達にエネルギーを与えることにな
り、また法政の選手達にはプレッシャーを与えることになったに違いない。2
8分以降の時間帯は、法政が自陣を背にして東海大の猛攻を凌ぐ苦しい展開と
なるが、法政も必至の粘りを見せる。両チームのFWを中心とした肉弾戦は見
応えがあるが、チーム関係者にとっては胃の痛くなるようなプレーの連続だっ
たに違いない。

試合も終盤に近づいた37分、法政は自陣スクラムからのアタックでWTB竹
下が裏に抜けてキックで東海大ゴールを目指す。竹下がそのままボールを拾え
ばトライに繋がりそうな局面だったが、東海大のFB豊島が間一髪のタイミン
グで絶妙のカバーリングを見せてボールをタッチに蹴り出し、事なきを得る。
関東学院戦の最後のタックルといい、今回のプレーといい、豊島の最後の砦と
しての役割の大きさを感じずにはいられない。

後半は19分以降得点板が動かないまま試合は進み、ついに2分間のインジュ
リータイムに突入。東海大は逆転に燃える法政FWの抵抗に遭いながらもFW
でボールキープを行いながら時計を進める。そして2分間が経過したところで
HO木津がタッチにボールを蹴り出して熱戦に終止符が打たれた、と同時に東
海大の3連覇が決定した。最後まで息詰まるような展開となり、劇的な幕切れ
となった関東学院と東海大の戦いとは違った意味で、見応えのある好ゲームだ
った。

[試合後の感想]

最終的には5点差と際どい勝負になったこの試合だったが、内容的には東海大
の圧勝と言ってもいいと思う。その理由は、組織的な動きの違いで、アタック
でもディフェンスでも多くの局面で一歩先に陣形を整えていたのは東海大の方
だったこと。このことが東海大のラグビーに安定感を与えていたように感じら
れた。得点力のある法政を1トライに抑えた鉄壁の組織防御は見応えがあった。
ことごとく失点に繋がった不用意な反則がなければ、ここまで競った展開には
ならなかったと思う。この点は、やや不安定だったラインアウトとともに大学
選手権に向けた反省材料。ただ、FWだけでなくBKも緩急を付けたアタック
が実を結ぶようになっており「楽しみ」であることは確かだ。

キックオフから気合い十分で試合に臨み、高速展開指向で攻めた法政だったが
1トライしか奪えなかったことは誤算。とくにチャンスでことごとくノックオ
ンが出てしまったのが残念だった。逆に言えば、それだけ東海大が法政のミス
を誘うような形でのしっかりしたディフェンスができていたことになる。法政
ではこの試合を競った展開に持ち込むことに成功した文字の戦術眼が光る。こ
れも関東学院戦での反省を踏まえてのことだったようだが、終盤でFWの闘志
に火を付けることを忘れない辺りに卓越した指揮官としての才能を感じる。来
るべき選手権では、本日(その一端を披露したと思われる)スペシャルプレー
に磨きをかけ、リベンジを果たして欲しい。このまま終わってしまうチームで
はないはずだ。                   (2009年12月5日記)

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