Live Report from Rugby Stadium

熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2010

試合日程&結果

Rugby Top

週間情報

東海大学 vs 中央大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2010/09/25) 於:熊谷ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 東海大学  :前半: 5  4  0  0 33 |
       :後半: 8  3  0  0 46 |  79  9
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 中央大学  :前半: 1  1  0  0  7 |
       :後半: 0  0  0  0  0 |   7 10


◎出場メンバー

 東海 : 1.三上 2.木津 3.千島 4.安井 5.三上匠 6.稲橋 7.リーチ [8].前川
      9.鶴田 10.阪本 11.宮田 12.吉田 13.森川 14.望月 15.豊島
     (16.新田 17.水上 18.真田 19.石上 20.山本 21.中島 22.鶴ヶ崎)

    ○交代  3→16(後20分入替), 13→21(後20分入替), 14→22(後30分入替)
 

 中央 : 1.大和 2.丸井 3.米谷 4.山本 5.藤原 6.竹野 7.烏田 8.山下
      9.松尾 [10].松下 11.吉原 12.宇野 13.城戸 14.森山 15.羽野
     (16.勝瀬 17.大塚智 18.藤井 19.堀野 20.高崎 21.大塚大 22.山北)

    ○交代  6→18(後 0分入替), 11→21(後15分入替),  1→16(後20分入替)
        13→22(後30分入替),  3→17(後30分入替),  9→20(後35分入替)
         5→19(後35分入替)


 レフリー :下村大樹(関東協会公認)


◎得点経過

 東海大学    0        7  12      19  26    33                  33    
                        G  T       G   G     G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                        G
 中央大学    0              7                                   7


 東海大学   33      38 43  50    55        62   67  74 79      79
                T  T   G     T         G    T   G  T
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
           
 中央大学    7                                                  7 


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 東海:前半 7分 木津 (T)、望月 (G)
      10分 木津 (T)
      18分 望月 (T)、望月 (G)
      22分 阪本 (T)、望月 (G)
      28分 阪本 (T)、望月 (G)
    後半 5分 リーチ(T)、望月 (G)
       8分 森川 (T)
      12分 鶴田 (T)、望月 (G)
      18分 豊島 (T)
      28分 豊島 (T)、望月 (G)
      33分 豊島 (T)
      38分 リーチ(T)、豊島 (G)
      40分 豊島 (T)

 中央:前半13分 森山 (T)、松下 (G)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

台風の影響が心配された本日の熊谷だったが、風もさほど強くなく秋晴れの絶
好のラグビー観戦日和。つい2週間前には選手も観客も酷暑との戦いを強いら
れたことを思うと今日は天国に来たような気持ちになってくる。

さて、本物の台風はやって来なかったが、リーグ戦Gにはピッチ上に希にでは
あるが台風級の暴風雨を持ち込むチームがある。それは中央大。ここのところ
不振をかこっており、そんな鬼気迫るような試合を観ることもなくなってしま
ったが、リーグ戦Gの中に強いチーム、巧いチームは数あれど、怖いチームと
言えば中央大しか思い浮かばない。

ただ、中央大が怖いチームになる場合には条件がある。ボール支配率で下回り
守勢に回るも執拗に低いタックルでアタックを止め続ける。そして、その過程
で15人全員にエネルギーが充填されていく。遂に、相手に攻め手がなくなっ
たところで反転攻勢のスイッチが入り、堰を切ったような猛攻が始まるのだ。
これは実際にその場にいないとわからない恐怖体験とも言える。

ここ数シーズンは粘り強いディフェンスも実らず、東海大に対していいところ
なく敗れ続けている中央大としては、そんなDNAがしっかりと受け継がれて
いることを見せるチャンスがやってきた。緒戦で法政を破ったこともあり、中
央大波に乗っている。もしかしたら、弱い熱帯低気圧から大型台風へと急成長
を遂げるかも知れない。もちろん、そのためにはタックルに次ぐタックル、し
かも低く突き刺さる相手を恐怖に陥れるようなタックルあるのみ。BKライン
には魅力的な陣容が並ぶだけに攻撃のチャンスを出来るだけ多く掴み取りたい。

対する東海大も緒戦で日大を一蹴して順調なスタートを切った。日本代表、U
20、セブンズなどの代表チームに多くの選手を派遣しながら、開幕からベス
トメンバーで試合に臨めることがチーム関係者にとっては心強く、またライバ
ル校にとっては脅威となる。目指すは1部復帰から一貫して目指してきた「大
学日本一」だが、中央大は甘く見てはいけない相手。緒戦を観ていないだけに、
チーム状態が盤石かどうかを見ておきたいところ。

そんな過去から未来へと想いを馳せながらメンバー表を眺めてみる。どちらも
開幕戦とまったく同じで、この辺りにも両チームの好調ぶりが伺われる。やは
り日本代表2人を含む東海大の陣容の方に重みを感じる。ただ、中央大もけし
て魅力が薄いわけではない。とくにSO松下、昨シーズンのSOからCTBに
回ってラインに厚みを加えつつある2年生の宇野、元気印の吉原に快足ランナ
ーの森山、さらには大型ルーキーのFB羽野といったメンバーが揃うBK陣は
リーグ戦屈指と言える魅力的な構成。ただ、それもディフェンスが鉄壁で、F
Wがとびきりの奮闘を見せてこそ...。

[前半の戦い]

秋晴れで南よりのさほど強くない風が吹く中、風下(北側)に陣取った中央大
のキックオフで試合開始。東海大の蹴り返しに対して中央大がカウンターアタ
ックで攻めるものの惜しくもノックオン。東海大陣10m付近のスクラムから
東海大がオープンに展開したところで中央大がビッグタックルを決める。今日
の中央大の心意気を十二分に見せつけるプレーでピッチ上も観客席も引き締ま
る素晴らしいプレーだった。

強力FWを軸にして、自陣からもFWのサイドアタックで前進を図ろうとする
東海大に対し、中央大はキックで敵陣に行く戦法。キックオフからしばらくの
時間帯は東海大陣22m付近での攻防が続く。立ち上がりは東海大が慎重だっ
たこともあって、中央大もやれるという実感が掴めたかも知れない。大きなミ
スもなく、プレーがなかなか途切れない息をもつかせない展開となる。

しかしながら、東海大に堅さが取れてきた7分、HWL付近手前のスクラムか
ら東海大がオープンに展開してWTB宮田が一気に中央大陣に駆け上がり、ラ
ックからPR三上が前進。さらにボールがオープンに展開されゴール前でのラ
ックから、HO木津がボールを拾って抜け出しゴール中央に鮮やかな先制トラ
イ。続く10分、カウンターアタックからWTB望月→No.8前川→FLリーチ
と繋いで中央大陣ゴール前まで大きく前進しラックからショートサイドに展開。
今度は右WTBに位置した木津がタッチライン際を快走してゴールラインを駆
け抜けた。

昨シーズンの場合は木津のトライといえば「モールの押し込み」だった。だが、
今シーズンはWTBなど「BK選手」としてゴールラインを駆け抜ける木津の
姿が多く見られるかも知れない。序盤にして、早くも中央大の1次防御に穴が
開き始めた。それも、タテ1本で抜かれてしまうシーンが目立つ。東海大が本
来目指しているラグビーは高速展開。ただ、直球1本やりの単調な攻めで相手
にとっては止めやすかったことも事実。FW、BKに満遍なく個人突破ができ
る選手達が揃う東海大の選手を止めることは難しい。でもそれができないとア
タックのチャンスは殆どなくなり、ゴールラインも遠くなってしまう。

このまま東海大が一気に波に乗ってしまうかと思われたが、中央大も一矢報い
る。キックオフからの東海大の蹴り返しに対してカウンターアタックでボール
が左から右に大きく動きWTB森山に渡る。森山の前には東海大の選手達が多
く立ちはだかっていたが、森山が22mライン付近で果敢に内側に切れ込んで
ディフェンダーをかわしながらゴール中央に到達した。おそらく完封を目指し
たであろう東海大としてはまさかの失点。7−12となり中央大応援席にも、
やれる!という期待感が充満する。

以前の東海大なら緩みが出てしまうところ。だが、今日の、いやもしかしたら
今シーズンの東海大は違う。ここからは相手にカウンターアタックのチャンス
を与えることになる自陣からのキックもほぼ封印。強力かつ連携の取れたFW
のタテ突破に素速いオープン展を交えた厳しいアタックに中央大は防戦一方と
なる。18分にはラインアウトからのオープン展開からWTB望月がラインブ
レイクに成功してトライ。20分にはリーチが本領発揮でキックオフからのカ
ウンターアタックで自陣22mから一気に中央大陣22m内まで駆け上がる。
リーチはゴール目前でタックルにあって前にボールをこぼしてしまうが、現役
日本代表としての格の違いを見せつける豪走だった。

22分、中央大陣22m内の東海大ボールラインアウト。スローワーのボール
が後方に転々とするところをSO阪本が拾ってそのままゴールラインに到達。
東海大にとってはラッキーな得点とも言えるが、その後もラインアウトは安定
していたとは言えず、今シーズンも課題となりそうだ。直後の24分に中央大
にビッグプレーが出る。FB羽野がハイパントで大きく前進し、自身でボール
確保に成功。中央大にとってもリーグ戦Gにとっても頼もしいルーキーだ。

ボール支配率で大きく下回る中央大としては、マイボールは大切にしたいとこ
ろ。しかしながら28分、自陣10m付近のラインアウトを起点としたラック
でターンオーバーを許し、巧くボールを拾った東海大のSO阪本が一気にゴー
ルラインを越えた。33−7となり東海大のリードは26点に拡がる。東海大
の高いボール保持能力を活かした得点の連続に、中央大応援席には「今年もや
っぱりダメか...」という空気が漂い始める。

しかしながら、前半も残り10分を切ったところで東海大に自陣での反則など
のミスが続き、中央大に得点のチャンスが巡ってくる。まず36分、東海大陣
22m内で得たPKのチャンスから中央大は速攻で攻めてオープンに展開。シ
ョートキックはインゴールに到達して東海大選手がノックオン。中央大のスク
ラムからのアタックに対して東海大に反則があり、中央大はPからGOで攻め
てゴールラインを越えたものの、レフリーにタップキックが認められず得点の
チャンスを逃す。東海大がやや集中を欠いていた時間帯だっただけに残念な場
面だった。

39分のSO松下のキックパスもラインオフサイドと、どうも肝心なところで
ミスを犯してしまうのは、中央大の選手達に受け継がれた悪しきDNAなのだ
ろうか? とはいっても、東海大が圧倒的に攻める中、中央大も健闘を見せて
締まった内容の試合展開で時間があっという間に過ぎてしまった。今年の、い
や今年こそ中央大は違うということが十分に感じられる前半の戦いだった。

[後半の戦い]

FW周辺を修正してしっかりと反撃に出たいところ。だが、FWにパワーと走
力を兼ね備えたメンバーを揃える東海大の攻勢はさらに強まる。前川を止めて
もリーチ、稲橋、安井、木津といったランナー達が絶妙のタイミングでフォロ
ーしてどんどんボールを前に進められたら相手にとっては堪らない。そして、
大きく前進したところでボールはスピードと切れ味鋭いステップワークが自慢
のBK陣にボールが渡る。もちろん、隙あらば抜け目なく前進を試みる鶴田−
望月のHB団もケアしなければならない。ボールが繋がるとどんどん攻撃のテ
ンポが上がっていくのは脅威であり驚異。

中央大としては初期段階でしっかりと相手のアタックを止めなければならない
のだが、名前負けしてしまっているのかとくにFWのタックルが決まらないこ
とが気になる。5分、東海大は中央大ゴール前でのスクラムを押し込み、オー
プンに展開しフォローしたリーチがトライ。続く8分にはキックオフに対する
カウンターアタックからリーチ→安井→稲橋→鶴田→(再び)リーチへとテン
ポよくボールが繋がり一気に中央大陣22m内に到達。最後はフォローしたC
TB森川がゴールラインを越えた。東海大FWは個々が強力なアタッカーだが
無理をせずにテンポよくボールを繋ぐことが出来る。

ここから中央大はキックオフからカウンターアタックを許して自陣まで後退と
いう、前半以上に苦しい戦いを強いられることになる。東海大がキックを殆ど
使わないため、アタックのチャンスは前半よりもさらに少なくなり、スクラム
もホイールされて攻撃権を渡してしまう。12分にはスクラムからのオープン
展開でブラインドサイドから参加したWTB宮田を経てFB豊島にボールが渡
り、豊島が40m走りきってトライ。18分にはスクラム起点の8→9で鶴田
がトライと、東海大の得点はどんどん増えていく。

中央大のSO松下のキックオフは十分な高さがあり、中央大の選手達が届く位
置に落ちている。だが、東海大のキャッチングがしっかりしており、むしろ相
手の反撃の起点になっていたのが残念だった。深い位置から相手に蹴らせてカ
ウンターアタックを、の目論見は完全に外れたのが中央大にとっては誤算。

20分には東海大の「期待の新人」でCTBの中島が登場。千島に代わって登
場したPR新田も昨シーズンはスタメンだった選手といったように、東海大は
選手層も厚いのが強み。とくに社会人を経験している中島は、短い時間ながら
来年度以降の東海大の精神的支柱を担えそうな存在感を早くも示していたこと
が東海大ファンにとっては頼もしい。

中央大の選手達のことをもっと書きたいのだが、後半はとくに東海大の選手達
がボールを持って前進する場面の連続のため書くチャンスすらない。28分、
33分には豊島、37分にはリーチ、そして40分には再び豊島がトライは重
ね、後半だけで東海大のトライは8個。序盤の頑張りで期待を持たせた中央大
だったが、終わってみれば7−79の歴史的な大敗になってしまった。

楽勝ムードにも緩むことなく攻め続けた東海大を誉めるべき試合だと思うが、
初期段階でしっかりと踏みとどまり、BKの組織でディフェンス、そして相手
に蹴らせる展開に持って行きたかったところ。ことに後半は攻撃力のあるBK
ラインが殆どボールを持つチャンスすらなかったのが残念だった。

[試合後の感想]

中央大にとっては残念な結果でショックも大きいことと思う。試合が終わった
後の挨拶の場面で見られたちょっとした混乱(ホームとアウェイ側に選手が分
かれて挨拶死そうになった)にもそんな様子が見受けられた。でも、切り替え
て欲しい。今日の試合で初期段階のディフェンスの大切さ、ボールを相手に渡
さないことの大切さ痛いほどわかったと思う。今後の戦いは接戦続きとなるこ
とが予想されるだけに、自分たちの得意とする攻撃を活かすためにディフェン
スとFWのセットプレーを立て直してい欲しい。

東海大は予想を上回る仕上がりだった。メンバーを見ると、オレがオレがにな
りそうな危険性を孕んだチーム。しかしながら、前後半80分の戦いを通じて
チーム全体の一体感が希薄になるような瞬間は殆どなかったといっていいくら
いなことに気づき、ある種の衝撃を受けた。こんなチームを観たのは初めての
ような気がする。纏まっているように見えるチームにしても、どこかに無理な
部分や綻びはあるものだ。この強力なチームを纏め上げているキャプテンの想
像を超える努力と力量、そして人望の厚さを感じざるにはいられない。このチ
ームはどこまで強くなっていくのか本当に楽しだ。   (2010年9月25日記)

Top       

本ウェブサイトの記述内容の無断転載を禁じます。