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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2010

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関東学院大学 vs 拓殖大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2010/09/26) 於:熊谷ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 関東学院大学:前半: 4  3  0  0 26 |
       :後半: 4  1  0  0 22 |  48  9
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 拓殖大学  :前半: 1  0  0  0  5 |
       :後半: 3  2  0  0 19 |  24  8


◎出場メンバー

 関東 : 1.稲垣 2.岡田 3.田中 4.大田 5.山田 6.松本 7.佐々木 8.平田
      [9].大島 10.南 11.小林 12.谷野 13.笹倉 14.渡邊昌 15.黒田
     (16.渡邊友 17.岡澤 18.岡 19.安井 20.山路 21.遠藤 22.立木)

    ○交代  2→16(後 0分入替),  9→20(後 2分入替), 14→22(後38分入替)


 拓殖 : 1.大久保 2.山本 3紺野 4.浅見 5.牧野 6.西原 7.清水 8.ヘル
      9.金澤 10.平野 11.森 12.岩谷 13.イーリ 14.大松 [15].茂野
     (16.滝 17.取出 18.大野 19.島 20.北方 21.山村 22.植田)

    ○交代 10→21(前21分交替), 14→22(後32分入替), 11→20(後34分入替)
         8→18(後38分入替)


 レフリー :橋元教明(関東協会公認)


◎得点経過

 関東学院大学  0     7  12    19                         26      26
                     G  T     G                          G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                                      G
 拓殖大学    0                            5                     5


 関東学院大学 26                                 31  36 43 48    48
                                           T    T  G T
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                          G    T         G
 拓殖大学    5                12   17        24                24


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 関東:前半 4分 稲垣 (T)、大島 (G)
       7分 谷野 (T)
      13分 笹倉 (T)、大島 (G)
      40分 平田 (T)、大島 (G)
    後半32分 渡邊友(T)
      37分 平田 (T)
      40分 南  (T)、笹倉 (G)
      43分 小林 (T)

 拓殖:前半27分 ヘル (T)
    後半15分 大松 (T)、イーリ(G)
      20分 イーリ(T)
      30分 金澤 (T)、岩谷 (G)

◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

拓殖大は流経大とともに上位進出を期待しているチーム。もちろんリーグ戦グ
ループで上位といえば3位以上。奇しくもこの2チームは緒戦で対戦している
が流経大の圧勝に終わっている。スコアから見て流経大が強いのか、それとも
拓殖大が期待ほどパワーアップできていないのかが分からない。ただ、この試
合に先駆けて行われた第1試合では、流経大が予想以上の強さを見せて大東大
を圧倒。その大東大に緒戦で辛くも勝利を収めた関東学院が今日の相手だから、
拓殖大の力が今日でほぼわかるはず。

対する関東学院は、先に書いたように緒戦で大東大に辛くも勝利。勝つには勝
ったもののFWとBKのコンビネーションが悪く、今シーズンも前途多難を思
わせる旅立ちとなった。とくに猛暑の影響があったのかも知れないが、FWの
動きがよくなかったことが気になる。昨シーズン来、FWの小型化が話題に上
る関東学院だが拓殖大のFWはさらに小さい。関東学院としては、FWのボー
ル支配率を高めて拓殖大の誇る高速ランナー達につけいる隙を与えないように
したい。

流経大圧勝の余韻が残る中、両チームのメンバーを確認する。関東学院は左L
O(中尾の代わりに大田が出場)とバックスリーに変更(WTBだった黒田が
FBに回り、新たに小林がWTBとして出場し、緒戦でFBだった立木はリザ
ーブ登録)があった。緒戦同様、昨シーズンはFBとして大活躍した荒牧の名
前がリザーブにも見あたらないのは負傷のためなのだろうか?

拓殖大もメンバーを入れ替えてきた。緒戦でNo.8だったナータ・リチャードの
名はリザーブにもないのはおそらく負傷のため。代わりに緒戦ではLOを務め
た大型新人のヘルがNo.8に入った。そしてBKには大きな変更が。SHのイー
リ・ニコラスがCTBに回ったのが目を惹く。関東学院用の特別措置なのか、
それとも首脳陣に迷い(SHよりもCTBで起用した方がBKラインが機能す
ると判断?)なのか気になるところ。

両チームのBKの特徴(関東学院の技 vs 拓殖大の速さ)が活かされたアタッ
クの応酬となることを期待しつつ、キックオフを待った。

[前半の戦い]

赤城おろしとは反対方向の南東の風(風速はさほど気にならない)が吹く中、
風下に立った関東学院のキックオフで試合開始。本日の関東学院も、緒戦の大
東大戦と同様に自陣からもキックを使わずに継続する作戦のようだ。ただ、緒
戦とは別にチームになったかのように今日の関東学院はFWとBKの連携がい
い。ポイントからスムースな球出しでボールがタイミングよくオープンに展開
され、拓殖大は開始早々から防戦一方となる。

4分、関東学院は拓殖大キックに対するカウンターアタックからの連続攻撃で
一気に拓殖大陣ゴール前まで到達し、最後はPR稲垣がゴールラインを越えた。
間髪入れずに6分、拓殖大はオープン展開からWTB大松がラインブレイクし
てチップキックを関東学院選手の裏にころがす。大松の俊足が活かされそうな
場面だったが、大松は躓いてしまい失速。その間に関東学院のWTB渡邊昌紀
がカウンターアタックを仕掛けて拓殖大陣まで攻め上がり、フォローしたFL
佐々木からラストパスがCTB谷野に繋がった。

開始からあっという間に関東学院が12点をリードする展開に、拓殖大応援席
は意気が上がらない。関東学院の無理や無駄のない連続攻撃を前にして、拓殖
大は序盤から自陣深くでの苦しい戦いを強いられる。そんなことにはお構いな
く、関東学院は畳みかける。13分には自陣10mライン手前でもラインアウ
トからSH大島主将がウラに抜け出しCTB谷野にパス。ボールが拓殖大陣ま
で運ばれたところで関東学院には珍しいパスミスがあったが、CTB笹倉が上
手くボールを拾って颯爽とゴールラインを駆け抜けた。関東学院のリードはさ
らに19点まで拡がる。

このまま勢いに乗った関東学院が得点を重ねて圧勝かと思われたが、気の緩み
が少し出たのか関東学院がミスで出てリズムが崩れ始める。18分にはSHか
らのパスミスが絶妙のフェイントになってボールを拾ったLO山田が一気に拓
殖大ゴールに迫るシーンも。21分に拓殖大はSO平野が負傷して山村と交代。
SOの位置にはCTBで先発したイーリが入った。期待の布陣でもあるのだが、
この交代が終盤に展開に微妙な影を落とすことになる。拓殖大ではNo.8に入っ
たヘルがラックでしばしばターンオーバーを演出するなど活躍。調子を落とし
気味の関東学院とは反対に、徐々に拓殖大のペースが上がってきた。

27分、拓殖大に待望の得点が生まれる。関東学院陣ゴール前でのラインアウ
トからの攻撃は、関東学院が自陣側にボールを弾いて失敗に終わったかに見え
たが、No.8ヘルがインゴールに転がったボールを一足先にグラウンディングに
成功。GKは失敗したが5−19と、拓殖大は貴重なプレゼントをもらった形
となる。序盤がオーバーペースだったのか、関東学院の攻撃のリズムが乱れ勝
ちとなり、その後試合は膠着状態となった。

とはいっても関東学院優位の展開は変わらない。30分以降、拓殖大は自陣2
2m内からなかなか逃れられない苦しい展開となる。しかしながら、ここで威
力を発揮したのがSOに位置したイーリの安定したロングキックで、関東学院
のアタックをことごとく自陣10m付近まで押し戻す。SHとしてのイーリの
成長を観たかったところだが、SOとしての安定したプレーを観るのも悪くな
い。キックだけでなく、パスダミーで相手ディフェンダーを翻弄するなど、大
技、小技いろいろと魅せてくれる選手。

このまま前半終了かと思われた40分、関東学院は貴重な追加点を得る。拓殖
大のキックパスを逆に関東学院のNo.8平田が拾ってそのまま拓殖大のゴールラ
インを越えた。SH大島との8−9アタックが不発気味で、緒戦そしてこの試
合と今一歩機能していない感があった平田だが、ここ一番の走力は魅力。GK
も成功し、26−5と関東学院が危なげなく前半の戦いを終えた。

[後半の戦い]

前半のような状況が続くと、拓殖大は緒戦に続き完敗を喫してしまう。そんな
流れのなか、キックオフ早々に関東学院にアクシデント発生。大島主将がラッ
クの中で倒れ込み地力で起き上がれない状態となり山路と交代。後半の開始早
々で、ここまで優位に試合を進めていた関東学院の雲行きが怪しくなってきた。
ディフェンスにも綻びが見え始め、FB茂野やWTB大松といった拓殖大の高
速アタッカー達に突破を許す場面が多く観られるようになる。

4分、拓大は自陣22m付近での関東学院のスクラムからの攻撃でターンオー
バーに成功。ボールはWTB大松からFB茂野に繋がり、茂野は一気に関東学
院ゴール前まで迫ったところで関東学院に反則。拓殖大はPKから速攻で攻め
るものの、オープン攻撃でミス。7分に訪れたゴール前でのPKのチャンスも
ゴール目前でタッチに押し出される。といった具合に拓殖大にいつ得点が生ま
れても不思議ではない展開がしばらく続くのだが、得点板は動かないまま時間
が過ぎていく。チャンスはソツなく得点に結びつける関東学院との違いを感じ
ずにはいられない。肝心なところでついつい力が入ってしまうのだろうか。

関東学院が劣勢に陥った原因のひとつにはスクラムの不調も挙げられる。前半
とはうって変わって軽量のはずの拓殖大FWにスクラムをコントロールされる
場面が増えてきた。拓殖大ファンにとってもどかしい展開が続く中、15分に
ようやく拓殖大に得点が生まれた。関東学院が自陣からFKでオープンに展開
したところで拓殖大のイーリがターンオーバーに成功してラストパスを大松に
送る。イーリのGKも成功して12−26と拓殖大が逆転に向けての足掛かり
を掴む。

ようやくフォローの風を掴んだ拓殖大が畳みかける。20分、両チームによる
激しいターンオーバー合戦が繰り広げられる中で、拓殖大のFB茂野がライン
ブレイクに成功し、今後はイーリがラストパスを受け取った。GKは失敗した
ものの17−26と拓殖大のビハインドは9点まで縮まる。関東学院にとって
は予断を許さない展開となってきた。24分、拓殖大は自陣10m手前からの
PKをタップキックで攻めてFB茂野が一気に関東学院22m内まで攻め込む
ものの惜しくもノックオン。拓殖大応援席からはため息混じりの歓声が、逆に
関東学院応援席からは悲鳴が上がる展開が続く。

そして30分、拓殖大は自陣10m手前のスクラムからオープン展開を主体と
した連続攻撃で大きく前進し、イーリからSH金澤にラストパスが渡る。岩谷
のGKも成功して24−26と拓殖大のビハインドは1PGでも逆転可能な2
点差まで縮まった。残りは10分余り。勢いから見ても拓殖大の逆転は時間の
問題と拓殖大ファンのみならず、関東学院ファンも感じたかも知れない。その
くらい関東学院は窮地に追い詰められることとなった。

しかしながら、もちろん結果論だが、ここで拓殖大に残念なプレーが出てしま
う。関東学院のキックオフからのリターンの場面で、SOイーリがタッチキッ
クではなく(確信を持って)オープン展開を選択。劣勢の関東学院とは言って
も、こういった挑発的なプレーには敏感に反応する。また、過去にもそんな場
面を何度も観ている。拓殖大陣22m内のゴール正面の位置で拓殖大CTBが
タックルを受けてラックとなり、関東学院が気合い一発でターンオーバーに成
功。ボールを確保したWTB渡邊はゴールまで10m走るだけでよかった。残
り10分でリードを許しているとはいっても、ビハインドは僅かに2点。イー
リのキック力を持ってすれば、HWL付近まで関東学院のポイントを押し戻す
ことも十分に可能と思われたのだが...。

GKは失敗したが残り8分となったところで31−24と関東学院のリードは
7点に拡がった。そして、この得点で息を吹き返した関東学院が本領を発揮す
る。直後のキックオフに対するカウンターアタックから、関東学院の頼れるエ
ースであるCTB笹倉が拓殖大ゴールに向けて大きく前進。関東学院はゴール
前でモールを形成して一気に押し込む。ここはパイルアップとなったものの、
関東学院は5mスクラムから再びモールを形成して押し込み、No.8平田がグラ
ウンディングに成功。GK失敗ながら36−24となり、残り時間から考えて
も「勝負あり」となった。

逆転勝利も視界に入ってきた土壇場で立て続けに2トライを奪われたことで、
拓殖大は意気消沈。さらに関東学院は40分と43分にもトライを重ね、終わ
ってみれば48−24とダブルスコアの勝利。拓殖大は昨シーズンも22−3
1で関東学院に惜敗しているが、この試合は昨シーズン以上に悔しい結果とな
ったのではないだろうか。得点差ほどの力の差は感じられなかった試合だが、
関東学院の勝負強さ、ゲーム運びの巧さがより強く印象に残る結果となった。

[試合後の感想]

前半の戦いを観る限り、緒戦とは別のチームになっていた関東学院。FWとB
Kの連携による継続ラグビーは東海大のような破壊力こそないものの、対戦相
手にとっては脅威となる。ただ、まだFWの突破の局面で単発に終わることが
多いことが課題として残っているように感じられる。また、後半の苦戦の原因
のひとつはスクラムが劣勢となったことにあり、これも反省点。FW、BKと
もメンバーが固まるまで少し時間がかかりそうだが、現時点で2強と目される
東海大や流経大との戦いは11月中旬以降でまだまだ時間はある。どのような
形でチームを完成させていくのかに注目したい。

拓殖大にとっては本当に残念な敗戦で、結果的に関東学院の勝負強さに屈した
形。ただ、惜敗と言える内容ではあるものの、関東学院とはまだまだ力の差が
あることを露呈したともいえる。このあたりは経験を積んでいくしかないのか
も知れない。あとひとつ気になったのはイーリ・ニコラスの位置。拓殖大はF
Wが小型ということもあるが、FW周辺でボールを動かすよりも素速くBKに
ボールを展開した方が茂野や大松のランニング能力がもっと活きるように思わ
れる。大型SHとしての成長を期待しつつも、チーム戦術から考えると、イー
リはSOあるいはCTBでプレーした方がフィットするように思う。次の法政
戦でどのような答えがでるのかが楽しみだ。      (2010年10月4日記)

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