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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2010

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法政大学 vs 拓殖大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2010/10/10) 於:秩父宮ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 法政大学  :前半: 2  1  0  0 12 |
       :後半: 3  3  1  0 24 |  36  4
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 拓殖大学  :前半: 3  2  0  0 19 |
       :後半: 1  1  0  0  7 |  26 14


◎出場メンバー

 法政 : 1.高橋 [2].山森 3.石澤 4.後藤 5.栗林 6.光安 7.武者 8.宮田
      9.中村 10.玉村 11.田中 12.原島 13.岡本 14.川原田 15.渡辺
     (16.草間 17.宇佐見 18.吉岡 19.川上 20.高城 21.猪村 22.窪島)

    ○交代 10→20(前29分入替),  4→18(後22入替),  7→19(後27分入替)
         3→17(後30分入替)


 拓殖 : 1.大久保 2.山本 3紺野 4.浅見 5.牧野 6.西原 7.清水 8.ヘル
      9.金澤 10.齋藤 11.森 12.山村 13.イーリ 14.大松 [15].茂野
     (16.滝 17.取出 18.森田 19.島 20.江頭 21.平野 22.北方)

    ○交代  8→19(後10分交替), 11→22(後10分入替),  9→20(後27分入替)
         5→18(後27分入替),  1→17(後37分入替), 14→21(後37分入替)


 レフリー :山田智也(関東協会公認)


◎得点経過

 法政大学    0                             5        12         12
                                             T        G  x
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
             G      T    G
 拓殖大学    0   7      12   19                                19


 法政大学   12    19    26        33            36             36
              G     G         G             P
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                                               G
 拓殖大学   19                                     26          26


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 法政:前半28分 宮田 (T)
      37分 田中 (T)、岡本 (G)
    後半 3分 武者 (T)、岡本 (G)
       9分 武者 (T)、岡本 (G)
      19分 岡本 (T)、岡本 (G)
      33分 岡本 (PG)

 拓殖:前半 2分 茂野 (T)、イーリ(G)
       9分 大松 (T)
      14分 齋藤 (T)、イーリ(G)
    後半36分 茂野 (T)、イーリ(G)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

拓殖大、法政ともに開幕2連敗。どちらもこの試合に敗れると3連敗で入替戦
がちらついてくる。そういった意味では両チームの置かれている状況はイーブ
ンと言えるのだが、事態は法政の方がより深刻に見える。ひとつの理由は、法
政の場合は後半戦に強豪チームとの対戦を控えていること。でも、それだけで
はない。今シーズンの法政は春シーズンで大きく出鼻を挫かれてから不調続き
でシーズンに入ってもそれは解消されていない。文字や日和佐といった中心選
手の卒業の影響が大きいことは間違いないが、それ以上にチーム状態の落ち込
みが大きすぎるように感じるのだが、真相は如何に?

拓殖大も当初期待したようにはチーム作りがうまく行っていないようだ。例え
ば前節からSHのイーリ・ニコラスがCTBに入っている。また、昨シーズン
高速バックスリーの一角として活躍していた北方がベンチスタート。春シーズ
ンの段階では北方はCTBの構想もあったので、超高速ラインの完成かと一縷
の期待を持ってシーズンインを迎えたわけだが、茂野にしても大松にしても持
ち味は発揮しているが「単発」の感が否めない。FWには大型の新人ヘルが加
入したもののリーグ戦Gで1、2を争う軽量であることに変わりない。FWの
核弾頭的存在のナータ・リチャードの不在も響いているようだ。

という予習をした後で、両チームのメンバー表を眺めている。法政はBKライ
ンに若干の変更。ただ、ベテランが名を連ねる拓殖大に比べるとどうしても経
験値不足というイメージを抱いてしまう。拓殖大もSO平野がおそらく前節の
怪我のためベンチスタートとなるものの、CTBイーリ、WTB大松、FB茂
野はなかなかの脅威。法政のBK陣は1、2年生が多いだけに、翻弄されてし
まわないとも限らない。もちろん、そのためにも拓殖大としてはFWから安定
した球をBKラインに供給したい。もちろん、法政としてもBKラインに自信
を持たせるために、いいボールを渡したい。FWの出来がこの試合のカギを握
るのは間違いないだろう。

ほどなくして、両チームの選手達が入場。だが、この試合は始まる前からここ
まで観てきた試合とは雰囲気が違う、というかどこかヘンなのだ。まずは法政。
確かに身にまとうのは法政のジャージ。だが、いつもの相手を威圧するよう
な威厳みたいなものが感じられない。選手達はどこか自信を失っているように
見える。対する拓殖大も何だかヘン。元来、拓殖大は大人しく見えるチームで
ギラギラと闘志をたぎらせて戦うチームではない。もちろん、これは覇気がな
いと言うことではなくてチームカラーがそんな感じ。もしや?という不安がよ
ぎったのだが、それは不幸にも的中してしまう。

(余談ながら、試合後も多くの法政ファンがスタンドに残って次の関東学院と
中央大の一戦を観戦していた。「関東学院はさすが」とか「中央大の選手はい
い身体をしている」といった声に混じって「こちらは大学生の試合だな」とい
う声も。厳しいなぁと思いつつも何故か納得させられるものがあった。)

[前半の戦い]

どことなく怪しい雰囲気の中、法政のキックオフで試合開始。そんな流れを引
きずる形で、拓殖大があっという間に先制点を奪う。法政陣10m/22mで
のラインアウトから拓殖大はオープンに展開。連続攻撃からFB茂野がウラに
抜けタックルにあって倒されそうになりながらも、粘り腰で態勢を立て直して
一気にゴールラインまで到達する。関東学院戦でも再三ロングゲインを見せた
ように茂野はリーグ戦で指折りのランナーではあるのだが、法政のタックルが
甘いことも否めない。明らかに集中を欠いた感じもした。

リスタートのキックオフで拓殖大にノックオンがあり拓殖大陣10m付記でス
クラム。ここで、ホイール合戦があり都合3回、攻守が入れ替わりながらスク
ラムが組み直しとなる。法政がやや優位ながら安定しないスクラムでの攻防戦
はここから始まった。結果的に拓殖大が泣くことになるのだが、マイボールは
しっかりキープしたいところ。6分、法政はPKから速攻で攻めて拓殖大ゴー
ルに迫るがあと一歩のところでタッチに押し出されて得点機を逸する。

その直後の7分、拓殖大のタッチを狙ったキックがノータッチとなり、法政の
WTB田中が力強いランニングで前進を図るものの法政にミスがあり、拓殖大
がボールを拾って大きく前進。最後はWTB大松がゴールラインを越えた。法
政にとっては交通事故のような失点だが、拓殖大のリードは12点(GK失敗)
に拡がる。法政はアタックもディフェンスも明らかに精彩を欠いた状態。SO
玉村のプレーに対しては、(パスが)「早い!」という声がしきりに飛んでい
た。前節までの事情はわからないが、プレーに自信がなさそうなことはスタン
ドからもよく分かる。

さらに14分、拓殖大はラインアウトを起点とするオープン攻撃で大きく前進
し、連続攻撃で最後はこの日SOで先発した齋藤がトライ。試合が始まってか
ら1/4も行かないところで拓殖大は19対0と法政を大きく引き離す。あま
りにも簡単に失点を重ねたことで、法政ファンからは大きなため息。だが、簡
単に取れてしまったことは、拓殖大に取っても意外だったようだ。このまま気
を緩めずに得点を重ねていけば、法政のBK陣は完全にパニックに陥る。BK
ラインのあちこちから「指示」が飛ぶ状態は、関東学院や東海大ならあり得な
い。拓殖大は相手の混乱に乗じてどん欲に得点を重ねていきたいところ。

しかしながら、キックオフ前に気になったことが現実になってしまう。拓殖大
は畳みかけるよりも、いろいろなことをやってみようという雰囲気になってき
た。スクラムだけでなくラインアウトもピリッとしない。17分にはスクラム
起点のアタックからFB茂野がブラインドサイドを抜けて前進するが、キック
でウラを狙い22mを越えたところでタッチアウト。18分、拓殖大は法政陣
22m手前でラインアウトの追加点の絶好のチャンスを掴むがオブストラクシ
ョンを犯す。試合の流れはじわじわと法政に傾き始める。

19分、法政がHWL付近からハイパントで攻めたところで拓殖大にノックオ
ン。このシーンに限らず、拓殖大はハイボールの処理がうまく行かない。絶対
的な強さを持つナータ・リチャードの不在は確かに痛いが、その後も相手のキ
ックオフに対するボールは殆ど確保できない状態が続き、法政に完全に試合の
流れを渡してしまうことになった。21分、拓殖大は自陣のスクラムからヘル
のサイドアタックを経てイーリがタッチに向けてライナー性のキック。敵陣に
行くという意味ではナイスキックなのだが、キックの多様は法政のような攻撃
型のチームにはチャンスボールを与えることになりかねない。

序盤の拓殖大の勢いも止まり、試合が膠着状態に陥る中で、ついに法政の反撃
の狼煙が上がる。ライン攻撃にはキレを欠きながらも、ボールを持つチャンス
が増えた法政の連続攻撃が続く中、拓殖大に反則が増えていく。28分、法政
は拓殖大22m付近でのラインアウトのチャンスを掴む。モールを形成してゴ
ールを目指す法政に対し、パワー不足が泣き所の拓殖大は後退を余儀なくされ
あっさりとトライを献上。BKラインに信頼がないためか、法政の応援席から
は「それでいいんだ!」の声があちこちから飛ぶ。直後に法政は玉村に替えて
SOに高城を投入。この交代で法政の反撃態勢が整った。

拓殖大のリスタートのキックオフは意表を突いてFWの居ないサイドへ。狙い
は悪くなかったが、ボールをしっかり確保できなければ相手にチャンスを与え
るだけになってしまう。ここから拓殖大の攻撃の歯車が狂い始め、法政のチャ
ンスがどんどん増えていく。自陣での反則は避けなければならないが、高城の
投入で法政のシンプルだが速いアタックに勢いが出る。後ろに下げられる展開
だと、どうしても反則が増える悪循環となる。

35分、法政は拓殖大陣22m内でのラインアウトのチャンスを掴むがノット
ストレート。拓殖大はスクラムから反撃を試み、No.8ヘルがウラに抜けてHW
Lを越えパスが上手く繋がればトライというシーンを演出。だが、惜しくもノ
ックオンを犯し、逆に法政選手にボールを拾われて一気に逆襲を許す。オープ
ン攻撃からWTB田中が拓殖大のゴールに迫ったところで拓殖大にオフサイド。
法政は速攻で攻め続けて最後は田中がゴールラインを越えた。GKは失敗する
ものの12−19で法政のビハインドは7点に縮まる。試合の流れから見ても
逆転は時間の問題と、法政の応援席に安堵感が漂い始める。

40分、法政は拓殖大陣10m付近中央の位置でPKを得たところで、WTB
河原田が40mのロングPGを狙うが失敗。拓殖大はすかさずカウンターアタ
ックで一気に法政ゴール前まで攻め上がるものの、ゴール目前で惜しくもノッ
トリリースの反則を犯す。ゴールラインまで到達できれば、法政に完全に傾き
つつあった試合の流れを変えることが可能と思われただけに、拓殖大にとって
は残念な反則だった。

[後半の戦い]

棚ぼたのような得点だったとはいえ、前半で試合を決めてしまう可能性も十分
に考えられた拓殖大だったが、楽勝ムードが禍してかゲームの流れを法政に渡
してしまった。いったん緩んだネジを巻き直すことは難しいが、まだ負けてい
るわけではない。後半は気持ちを入れ替えて巻き返しを図って欲しい。また、
それができなければ上位グループに上がることはできない。何としてもムード
を変えることができる選手、そして選手達に元気を注入するようなガッツ溢れ
るプレーが必要。

と願ったかも知れない拓殖大ファンの期待は開始早々に裏切られることになる。
3分、法政が拓殖大反則により得た拓殖大ゴール前ラインアウトのチャンスを
活かし、得意技?のモールを押し込みトライ。GKも成功してついに法政は同
点に追いつく。これで法政は完全に乗った。法政はラインアウトが安定してお
り、オープン展開でも効果的な起点となっている。逆に拓殖大はラインアウト
が不安定でマイボール確保もおぼつかない。9分、再び法政は拓殖大陣ゴール
前でのラインアウトのチャンスを掴み、今度はモールを押し込んだ後のサイド
アタックから武者が連続トライ。GKも成功して26−19と遂に法政は遂に
逆転に成功した。CTB岡本はなかなか安定したプレースキッカーだ。

法政が前半のチームとはうって変わって自信を取り戻したことで、拓殖大はま
すます窮地に陥る。まだ後半の序盤だがFWに既に足が止まりかけている選手
まで出てくる状態。法政が素速くオープンに展開して攻めてくるため後ろにど
んどん下げられてしまう状況とはいえ、ちょっと早いような気がする。後半か
ら足を引きずっていたNo.8ヘルは10分にピッチを去った。法政は畳みかける。
19分、法政は拓殖大陣22m手前のスクラムからのオープン攻撃でCTB岡
本がラインブレイクに成功しそのままインゴールへ。拓殖大の得点板が前半1
4分からまったく動かないまま、法政が5連続トライを挙げてリードを14点
に拡げた。周囲の法政ファンの間にも安堵の表情が拡がる。

何とか悪い流れを変えたい拓殖大。20分を過ぎたあたりから10分間近くの
間は法政陣奥深くに攻め入る時間帯となる。22分には22m内のゴール正面
の位置でペナルティを得るが、ショットは選択せず、ラインアウトでもなくタ
ップキックからの攻め。しかし、ここは法政が意地を見せて守りきる。結果論
だがショットが決まればビハインドは11点。スコアをデコボコにする(得点
差を7点の倍数にしない)ことで、トライを重ねれば逆転しやすくなる状況も
生まれる。まだ時間は十分にあるし、ここは確実に3点でよかったような気が
するのだが。

拓殖大は肝心なところ(得点機)にアクシデンタルオフサイドやオブストラク
ションを犯し結局自分たちに傾きかけた時間帯で得点を挙げることができない。
33分には法政の岡本がPGを決め手36−19となり、周囲の法政ファンに
も余裕の表情が見られるようになってきた。しかしながら、試合は分からない。
すっかり鳴りを潜めていた拓殖大の高速ランナーが一矢報いる。自陣22mよ
り少し前のスクラムを起点としたアタックから、FB茂野主将がスパート。俊
足を活かしつつ巧みなステップワークで法政のタックラー達を次々とかわし、
80mを走りきってインゴールに到達。難なくGKも成功して26−36と再
びビハインドは10点に縮まる。キックオフは法政だから、拓殖大のランナー
を持ってすればカウンターアタックで2トライ連取も5分あれば十分。

長らく沈黙を余儀なくされていた拓殖大応援席に活気が戻ってくる。だからこ
そ拓大には早くセットをして欲しいのだが、どうもこの辺りが淡泊(緩慢)な
のが不思議せっかくの逆転のチャンスなのに。拓殖大はキックオフに対するカ
ウンターアタックで法政陣内に攻め入るものの、肝心なところでミスが出てし
まう。ゴール前スクラムから連続攻撃で法政ゴールは目前だったが、惜しくも
ノックオン。残り時間が殆どなくなったところで法政はFWでボールキープに
入り時間を使う。時計は40分+インジュリータイムを越えたところで、スタ
ンドからは「早く外に蹴り出せ!」とか「何やってんだ!」という声が飛ぶ。

そういった声も選手達に届かず法政はボールキープを続ける。いや、声は届い
ていたが最後に意地を見せたいと思ったのかも知れない。時計は45分を回っ
たところでようやくボールがタッチに蹴り出されノーサイドとなった。法政に
とってはまさに起死回生の初勝利。拓殖大のちょっとした緩みがなければ、自
信を取り戻す手がかりすら掴めないところだった。そう考えれば嬉しい1勝と
言える。拓殖大にとっては残念な結果に終わった。これが大学ラグビーの怖さ
であり面白さなのかも知れない。

[試合後の感想]

拓殖大の選手達にとっては、負けた気がしない試合ではなかっただろうか。逆
に序盤に簡単に取れていなかった方が、緊張感が保てていい結果が出たかも知
れない。拓殖大はけして法政を甘く見たわけではないと思うが、ピッチに登場
したときの様子にチャレンジャーとしての緊迫感は感じられなかった。序盤に
3つ簡単に取れたと言っても、組織で崩した得点ではなく、個人能力に法政の
タックルミスが重なった結果。

そう考えると、拓殖大がいまひとつチームとして纏まっていないことが気にな
る。個々が持ち味を活かして頑張るのが拓殖大のチームカラーではあるのだが、
ここ一番でチームが一丸となる集中力が出てこないと、なかなか上位グループ
には行けない。試行錯誤の状態が続くBKラインの構成と戦術を固めて高速ラ
ンナーが縦横無尽に駆けめぐる継続ラグビーの完成を早く見たいと思う。

今シーズンの法政を今日初めて観たわけだが、なぜ勝てていなかったのかがよ
く分かる試合だった。まず、選手達が明らかに自信を失っていることが気にか
かる。もちろん、ボールを速く展開して前に出るシンプルなラグビーだけでは
勝てないが、それを繰り返すことにより法政の持ち味(受け継がれたDNA)
が蘇ってくるはず。FWが主でBKが従の高速展開も悪くはないと思う。とに
かく実戦を通じてBKメンバーに自信を持たせることが先決。強気に攻める姿
勢が見られるSO高城の登場を明るい材料として、次戦では確実に2勝目を挙
げられるよう頑張って欲しい。           (2010年10月16日記)

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