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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2010

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法政大学 vs 大東文化大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2010/10/16) 於:熊谷ラグビー場
<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 法政大学  :前半: 0  0  2  0  6 |
       :後半: 1  0  0  0  5 |  11  9
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 大東文化大学:前半: 3  2  2  0 25 |
       :後半: 2  1  1  0 15 |  40 12


◎出場メンバー

 法政 : 1.高橋 [2].山森 3.石澤 4.後藤 5.吉岡 6.光安 7.武者 8.宮田
      9.中村 10.高城 11.田中 12.原島 13.岡本 14.川原田 15.渡辺
     (16.草間 17.宇佐見 18.新谷 19.川上 20.猪村 21.近藤 22.百武)

    ○交代 14→22(後 0分入替),  7→19(後17入替),  2→16(後28分入替)
        12→21(後28分入替),  1→17(後28入替),  4→18(後33分入替)
        10→20(後33分入替)


 大東 : 1.高橋 2.井上 3.中井 4.川端 5.斉田 6.川本 [7].濱口 8.フィリペ
      9.茂野 10.出村 11.福津 12.シオネ 13.武政 14.越智 15.梶洋
     (16.シリベヌシ 17.深野 18.井川 19.井東 20.市川 21.大庭 22.林)

    ○交代  4→19(前21分入替), 12→21(後 8分入替),  3→17(後21分入替)
         2→18(後27分入替), 10→22(後30分入替),  5→16(後33分入替)
         9→20(後38分入替)
    ●シンビン 19(後半20分:不当なプレー)


 レフリー :グッダー・マシュー(ウェリントン)


◎得点経過

 法政大学    0  3      6                                        6
                  P      P
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                    G      P    G         P    T
 大東文化大学  0          7      10   17        20   25          25
       

 法政大学    6                    11                           11
                              T
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
             x T                         G          P
 大東文化大学 25     30                        37         40     40


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 法政:前半 1分 岡本 (PG)
       8分 岡本 (PG)
    後半19分 岡本 (T)

 大東:前半 9分 斉田 (T)、出村 (G)
      16分 出村 (PG)
      21分 斉田 (T)、出村 (G)
      31分 出村 (PG)
      36分 シオネ(T)
    後半 4分 フィリペ(T)
      30分 梶洋輔(T)、出村 (G)
      41分 林  (PG)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

法政の調子が上がってこない。というか、そもそもチームが出来上がっていな
い。前節の拓殖大戦で初めて今シーズンの法政を観たわけだが、正直どんなコ
ンセプトでチームが作られているのか分からなかった。その拓殖大戦では何と
か勝利を収めることができたものの、前半であと2つ続けて取られていたら勝
つことは難しかったように思われる。法政の「怪勝」といった感が強く、拓殖
大の自滅に助けられた形。

だから、この試合では前節の勝利によりチーム立て直しのきっかけが掴めたの
かどうかを確かめることが法政に対する着目点となる。出だしはよくない年で
も、試合を重ねるごとに「自分たちの形」を思い出し、最終戦を戦う頃には関
東学院と優勝争いができるチームになっていたのが東海大が台頭する前の頃の
法政。ちなみに法政がもっとも不調だった年は1999シーズンで、前年度の
優勝から一気に5位まで急降下している。ただ、その時はFWのスクラムの崩
壊という明確な理由があり、最終戦では関東学院に圧勝する意地を見せている。

そう考えてみると、今シーズンの不振の原因がよくわからなくなってくる。確
かに文字や日和佐といった主力選手の卒業は大きい。ただ、それは織り込み済
みのはず。BKラインが下級生中心になるのなら、高速展開はとりあえず封印
してFW中心でチームを組み立てる方法もある。FWに関しては昨シーズン大
型化を図ったはずだが、それは今シーズンを見越してのことではなかったよう
だ。繰り返しになるが、チームコンセプトが見えないのが今シーズンの法政。
拓殖大戦にしても、BKは高速に展開しているだけのメリハリのないラグビー
に終始している印象があった。

対する大東大も緒戦の関東学院戦で1点差の惜敗のあとは、流経大と東海大に
それぞれ71点、80点を取られて敗れている。チーム状態は法政とイーブン
といってもいいかもしれない。ただ、関東学院戦で好印象を得たこともあるが、
チーム状態は法政ほど深刻ではないような印象を受ける。FWが力不足気味な
のが気になるものの、東海大や流経大以外が相手なら他のチームと比べて戦力
が落ちるわけではない。そういった意味でも、本日の試合は大東大のリーグ戦
G全体における立ち位置を知る上で楽しみな面がある。

といったような雑感を抱きながら、両チームのメンバーを確認する。法政でま
ず気付くのはSOに高城がスタメンで起用され、2、3戦目では先発だった玉
村の名がリザーブからも消えていること。高城は拓殖大戦勝利の立役者のひと
りといってもよさそうなので納得ではあるのだが、ならば何で(もっと早く使
わなかったのか)?という法政ファンの疑問もよくわかる。LOには栗林に代
わって吉岡が起用されている以外は前節と同じ顔ぶれなので、ようやくメンバ
ーが固まったと見てよさそうだ。

大東大は何と言ってもCTBシオネ(ファマオ・テアウパ)の復帰が心強い。
突破役としては少し物足りない部分があるが、アタック、ディフェンスとも堅
実なプレイヤーで大東大にとって欠くことができない選手となっている。その
他にもBKラインには昨シーズンのレギュラー選手達が顔を並べており、FW
も含めてようやくベストに近いメンバーが揃った。負けられないことは同じと
はいえ、今後の対戦を考えると崖っぷちに立たされているのは法政の方。東海
大戦での大敗のショックさえ引きずっていなければ、大東大は優位に試合を運
ぶことができるかもしれない。

[前半の戦い]

3強との対決を目前に控え、絶対に負けられない法政がキックオフから大東大
に強力なプレッシャーをかける。大東大が自陣22m付近でオブストラクショ
ンの反則を犯したところで法政はショットを選択。22mライン手前でやや左
の位置からのPGをCTB岡本が確実に決め、法政が開始1分で幸先よく3点
を先制した。法政は3分にも大東大陣22m付近でラインアウトと追加点のチ
ャンスを掴むが、モールは大東大に押し戻されて逆襲を許しオフサイド。

追加点のチャンスは潰えたに見えたが、法政は攻撃の手を緩めない。6分、大
東大陣10m/22mの位置でのラインアウトからオープンに展開したところ
で大東大にオフサイドの反則。今度はやや正面やや右で距離は約24mのPG
を再び岡本が決めて法政のリードは6点に拡がった。PG2本とは言え、序盤
にリードを奪ったことで法政の応援席に安堵感が漂う。前節の拓大戦のように
あっさり3本取られてしまったのとは逆の展開。

だが、負けられないのは大東大も同じ。直後のキックオフで法政の蹴り返しに
対するカウンターアタックからオープンに展開して逆襲。CTBシオネを活か
す形で大きく前進し、ラックから出たボールを出村がライン参加したLO斉田
に飛ばしパス。斉田は法政のタックラーを振り払いながら力強く前進を図り、
法政のゴールラインまで到達してしまった。斉田は大東大FWの中心選手とし
て期待されながらも、昨シーズンは怪我のため不完全燃焼に終わっている。そ
の鬱憤を一気に晴らした形の見事なランニングだった。とはいえ、せっかくリ
ードを奪った法政としては確実に止めておきたかったところ。GKも成功し、
7−6と大東大が逆転に成功した。

しかし、法政も負けてはいられない。キックオフから気合い十分でマイボール
の獲得(奪取)に成功。キャッチングの際に法政選手と激突したNo.8フィリペ
がピッチに倒れた状態の中で、法政は一気にオープンに展開して大東大ゴール
ラインに迫る。てっきりトライだと思いメモを取ろうとピッチから目を離した。
するとレフリーが5mスクラムを指示。何と痛恨のインゴールノックオン。こ
のトライが決まっていたら法政は完全に勢いに乗っていたかも知れない。トラ
イに至るまでのプロセスが素晴らしかっただけに残念なシーンだった。心配さ
れたフィリペも起き上がり戦列に復帰。

14分、大東大が自陣10m/22mの位置での法政ボールラインアウトでボ
ールの奪取に成功し、No.8フィリペが力強く前進する。フィリペからのパスを
受けたFL濱口が法政陣の10mラインを越えたところで法政に反則。ここで、
大東大はショットを選択し、SO出村が左中間37mの位置からのPGを鮮や
かに決めた。10−6と大東大のリードは4点に拡がる。キックだけでなく自
身のラン、ラインコントロールに非凡なものを持っている出村の完全復帰は大
東大ファンにとっては嬉しい。

大東大の追加点を機に法政に反則やミスが目立つようになり、ゲームの流れは
徐々に大東大に傾き始める。まず、リスタートのキックオフでアーリータック
ル。ひとつ前のキックオフを彷彿とさせるプレーだが、気持ちは伝わってきて
も一歩間違えば危険なプレーだけに自重したいところ。大東大のPKがノータ
ッチとなるなか、カウンターアタックでも法政はミスでチャンスを潰す。19
分、大東大は自陣22m/10mの位置でのスクラムからNo.8フィリペが(先
ほどの激突の影響を感じさせない)力強いランでショートサイドを駆け上がる。
身体はさほど大きくない(178cm,95kg)が、身体能力の高さとファイティング
スピリット漲るプレースタイルが魅力的な選手だ。

このフィリペの闘志に力を得た大東大が畳みかける。19分、法政が自陣10
m/22mの位置でのラインアウトからオープンに展開したところでミスがあ
り、大東大が前へ。ゴール前のラックからLO斉田が抜け出して再びゴールラ
インを越えた。26分に法政は大東大ゴール前でのラインアウトのチャンスを
掴むが反則でチャンスを潰す。その直後、大東大がラインアウトから連続攻撃
で攻めたところで法政にノックオンオフサイド。出村が左中間30mのPGを
確実に決め、20−6と大東大のリードは14点まで拡がった。

36分、大東大の出村が今度はランで魅せる。法政陣10mラインから少しゴ
ール寄りの位置でのラインアウトからオープンに展開。出村の動きに幻惑され
たのか、法政のディフェンス網に一瞬ギャップができてウラに抜ける路ができ
あがったのを見透かしたかのように、SH茂野からSO出村に絶妙のタイミン
グでパスが渡る。出村が鮮やかなコースどりで22m内に入り一旦はFWにボ
ールを預ける。そしてゴール前のラックからボールがオープンに展開され、ラ
ストパスがCTBシオネに渡った。イージーなGKは失敗(出村らしい?)す
るが、25−6と法政は何もできないまま点差がどんどん開いていく。

序盤は勢いを見せてファンの期待を抱かせた法政だったが、接点でことごとく
大東大のディフェンダーに絡まれて速い球出しを抑えられたこともあり、完全
に勢いに乗れなかったのが痛かった。チャンスの場面でミスが目立ったのも響
いた形。ただ、大東大のメリハリの効いたアタックに比べると、工夫が見られ
ない(と言っては失礼かも知れないが)攻めに終始していたことは否めない。
高速に展開しても、攻めが単調なら止められてしまう。FWを効果的に使うと
いった余裕もないのが法政の現状といえる。窮地に立たされた法政の巻き返し
は成るか?

[後半の戦い]

大東大のキックオフで後半開始。法政は自陣22m内から果敢にオープンに展
開して活路を開こうとする。法政の気持ちがよく表れたプレーだったが、大東
大のディフェンスに捕まってノットリリース。PKの位置は正面やや左30m
の位置で、出村は迷うことなくショットを選択する。が、外してしまう。法政
はフェアーキャッチからボールをタッチに蹴り出してピンチを逃れたかに見え
た。自陣からも高速展開に賭ける法政は、カウンターアタックからオープンに
展開。ここで、大東大DFの要となっているCTBマオにビッグプレーが出る。

法政がオープンに展開したボールがWTBに渡ったところでマオが相手の上半
身を抱え込むような形でタックルし、太い腕でボールの奪取に成功。ボールが
フォローしたNo.8フィリペに渡りそのままゴールへ。GKは失敗するものの、
開始早々4分のトライは、反撃に向けた闘志をももぎ取ってしまう法政にとっ
てはショッキングなプレー。直後のキックオフで法政はWTB百武(後半から
川原田に代わってピッチに登場)がビッグゲインで法政の応援席を沸かせるが、
惜しくもゴール寸前でタックルにあってタッチに押し出されてしまう。

点差をじわじわと拡げられる苦しい状況ではあるが、法政も簡単には引き下が
れない。8分、大東大ゴール前でのスクラムからのアタックはパイルアップ。
14分の大東大陣22mでのラインアウトを起点とした連続攻撃も反則でチャ
ンスを逃す。さらに、16分にも大東大陣22mでのラインアウトのチャンス
を掴むがノックオン。しかしながら、18分には大東大陣22m内でもライン
アウトからモールで前進した後オープンに展開し、CTB岡本がようやく大東
大ゴールラインを越えた。GKを失敗したがようやく法政にトライが生まれた。

リスタートのキックオフに対するカウンターアタックから法政は「自陣からも
継続」で攻め続け、大東大に反則が続く展開。ここで、大東大のLO井東にイ
エローカードが出された。残り時間は20分程度と少なくなってきたが、法政
は諦める必要はない。大東大ゴール前で得たPKのチャンスから法政はタップ
キックで攻めるものの惜しくもスローフォワード。好機にミス連発の悪い流れ
を法政はなかなか断ち切れない。そんな中で25分、大東大はフィリペがカウ
ンターアタックからボールを持ち込み前は無人。あとはゴールラインまで走り
込むだけの状態となる。しかしながら、ゴール目前にして痛恨のポロリ。しか
し、大東大ファンからはもはやため息も悲鳴も聞こえない。

そして30分、大東大にカウンターアタックからのダメ押しのトライが生まれ
る。法政陣に向けてキックしたボールのこぼれ球をFB梶が拾ってインゴール
にボールを運びゴールキックも成功して37−11。リスタートの法政キック
オフはノット10m。法政に明らかに疲れが見られ、攻め続けるもののノック
オンなどのミスを連発してゴールラインまでボールを運ぶことができない。終
了間際の40分には大東大の林(後半30分に出村と交代出場)がPGを決め
て40−11と法政を突き放す。

結局、法政はボールを持つチャンスは少なくなかったものの、2トライ目を挙
げることができずに試合終了となった。法政の勝ちたいという気持ちがよく表
れていた試合だった。しかしながら、それを具体的な形にできずに終わってし
まった感が強い。もちろん、大東大も勝ちたい気持ちが強く表れていた。勝敗
を分けたのは、それを実現するための形を持っていたこと。終わってみれば、
1999シーズンの勝利を最後に、大東大が法政にずっと負け続けていたこと
が信じられないくらいの大東大の完勝だった。

[試合後の感想]

流経大と東海大に完膚無きまでに叩きのめされた大東大だったが、心は折れて
いなかったようだ。とくにSO出村の完全復帰が大きく、マオも存在感を十二
分に示した。SH茂野の球捌きも安定しており、FWから活きたボールが供給
されれば大東大の得点力は確実に上がる。FWではLO斉田が2トライを挙げ
て自信を掴んだことが明るい材料。昨シーズンは後半戦で負傷者が続出するな
ど失速して入替戦に回った大東大だが、今シーズンこそは、ようやく固まって
きたベストのメンバーで最後まで戦い抜いて欲しいと思う。

法政は今日も気合いが空回りという感じの戦いぶりだった。拓殖大戦(とくに
後半)では機能したアタックも大東大のディフェンスには通じなかった。やは
り、点を取る形を作ることができないままシーズンインしてしまった影響は計
り知れないくらいに大きいと言わざるを得ない。次節からより厳しい戦いが始
まることになるが、一番手の関東学院も結果が出ているとはいえチーム作りに
苦しんでいる様子が見受けられる。大東大と日大に苦戦していることが戦う上
でのヒントになるかも知れない。次節こそは、精神論だけでなく、相手をじっ
くり研究して戦いに臨み、意地を見せて欲しい。     (2010年10月23日記)

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