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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2010

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東海大学 vs 流通経済大学

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2010/10/31) 於:秩父宮ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 東海大学  :前半: 2  1  0  0 12 |
       :後半: 4  1  0  0 22 |  34 14
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 流通経済大学:前半: 0  0  1  0  3 |
       :後半: 1  0  0  0  5 |   8 13


◎出場メンバー

 東海 : 1.三上正 2.木津 3.千島 4.安井 5.三上匠 6.稲橋 7.リーチ [8].前川
      9.鶴田 10.阪本 11.望月 12.吉田 13.森川 14.天坂 15.豊島
     (16.新田 17.水上 18.坂本 19.石上 20.山本 21.中島 22.宮田)

    ○交代  6→19(前15分交替),  9→20(後27分入替), 10→21(後27分入替)
         3→16(後30分入替)


 流経 : [1].山崎 2.池野 3.今村 4.萩澤 5.小野寺 6.高森 7.鹿田 8.イシレリ
      9.児玉 10.宮脇 11.小澤 12.矢次 13.飯岡 14.葛原 15.長谷川
     (16.福井 17.川崎 18.鶴岡 19.辻 20.吉田 21.森岡 22.藤田)

    ○交代  8→19(後39分入替)


 レフリー :町田裕一(関東協会公認)


◎得点経過

 東海大学    0     5                                     12    12
                     T                                     G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                              P
 流通経済大学  0                    3                             3


 東海大学   12      17 22                       27      34     34
                T  T                        T       G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                                              T
 流通経済大学  3                                    8             8


 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 東海:前半 4分 望月 (T)
      42分 天坂 (T)、豊島 (G)
    後半 5分 木津 (T)
       8分 豊島 (T)
      33分 三上匠(T)
      41分 前川 (T)、望月 (G)

 流経:前半19分 小澤 (PG)
    後半35分 矢次 (T)


◎試合内容

[キックオフ前の雑感]

いよいよ後半戦。本来なら最終戦が頂上対決になるはずだが、今シーズンの場
合は、まず調子のいいチーム同士が緒戦を戦う。第2試合で対戦する関東学院
と法政はいずれも明暗が分かれているとはいえ、調子が出ていないという意味
では共通する部分があり、やはり現状のリーグ戦グループのベスト2は東海大
と流経大と言える。ちょっと気が早いかもしれないが、この試合で勝った方が
優勝に大きく近づくと見てよさそうだ。

ただ、ここまで4戦全勝で、内容もすべてが完勝という好調な両チームではあ
るが、東海大が流経大に比べて優位に立っていることは間違いない。選手個々
を比較した場合、ことFWに関する限りは大きなパワーの差はないように思わ
れる。しかしながら、8人でのまとまりで比べてみると、1枚岩のような連携
の取れた動きを見せる東海大に対して、流経大は個人頼みになってしまう部分
がある。また、BKは得点能力の面でタレントが揃った東海大に軍配が上がり
そうだ。

とはいえ、今シーズンの流経大は得点力が確実に上がっており、ツボにはまれ
ば東海大といえども楽に試合を運ぶことはできないはず。大学日本一に向けて
着実にチームを完成させつつある東海大に対して、攻守両面で流経大がどこま
で戦えるかがまずは一つめの楽しみ。また、逆にここまで戦ってチームとは違
ったFWの強さを持っている流経大に対して、東海大が新たなチームの可能性
を見せてくれるのかが二つめの楽しみとなる。

といった期待感を胸に抱きながら両チームのメンバー表を眺める。流石に調子
のいいチーム同士とあってほぼベストの陣容が揃った。東海大はジャパンのス
コッドにも選出されているリーチが先発出場で、この試合に対する意気込みを
感じさせるメンバー構成。一方の流経大は、右FLに鹿田(3年生)がスタメ
ンで起用されルーキーの高森とコンビを組む。第3列ではイシレリばかりが注
目される流経大だが、実はFWの心臓部とも言える役割を果たしているのがリ
ザーブの辻を含めたFL3人衆。本日は過去2戦でスタメンを外れた鹿田の意
気込みに期待したい。

[前半の戦い]

東海大のキックオフで試合開始。まずは流経大がこの試合に賭ける意気込みを
見せる。自陣奥深くから果敢にオープンに展開して前進を図って前進。過去の
イメージから流経大はFWのチームと思われがちだが、今シーズンはオープン
展開で得点が取れるチームになっている。そんな自信の表れを示すようないい
形で攻めた流経大だったが、そこに立ちはだかったのがマイケル・リーチ。ラ
ックでボールがこぼれたところを足で引っかけて流経大のアタックのリズムを
崩すことに成功する。その後、流経大はリーチの存在感の大きさをイヤと言う
ほど思い知らされることになる。

1分、東海大は流経大ゴール前でラインアウトのビッグチャンスを掴む。しか
しながらノットストレートでチャンスは潰えたかに見えた。だが、流経大もラ
インアウトが決まらない。3分、東海大陣22m手前のラインアウトで東海大
がスティールに成功して右オープンにワイドに展開。ボールはラックから逆に
左オープンに展開されて左WTB望月がゴール左隅に飛び込んだ。GKは失敗
したが東海大があっさり5点を先制した。

早い段階で先制点を奪ったこともあり、その後東海大が優位に試合を進める。
しかしながら、これまで東海大と戦ってきた4チームと流経大は明らかに違う。
FWでボールを持ち込んでも接点で絡まれてスムースな球出しが出来ず、反則
でチャンスを潰す展開が続く。逆に流経大も自慢のFWのセットプレーが不調。
ラインアウトでは東海大のリーチや三上匠にスティールを許し、マイボールス
クラムはうまく組ませてもらえない状況が続く。そのため、得意とするモール
攻撃やFWからの速い球出しによるオープン展開になかなか持ち込めない。

さて、流経大の看板選手といえばNo.8のイシレリ。120kgを超える巨体を活かし
た突破力はもちろんのこと、意外に軽い身のこなしにも相手チームは圧倒そし
て翻弄され続けている。12分、そのイシレリに果敢に低いタックルを試みた
東海大のFL稲橋だったが、逆ヘッドの状態となってしまい昏倒してしまう。
このプレーで稲橋は石上と交替する形でピッチを去った。稲橋が早々にピッチ
を去ってしまったのは東海大にとって誤算だったが、東海大FWはその後もひ
るむことなくイシレリに挑み続ける。

東海大優勢ながらも拮抗した展開が続く中で17分、流経大はスクラムからイ
シレリがサイド突破してオープンに展開。ライン参加したPR山崎主将の突破
などで大きくゲインし東海大ゴールに迫る。しかしながら、最後は裏へのキッ
クを東海大に確保されてしまいチャンスは潰えたかに見えた。が、流経大は直
後のラインアウトからオープンに展開。東海大にラックで反則があり、WTB
小澤がやや左10mのPGを確実に決めて3−5と流経大のビハインドは2点
に縮まった。

本日の前半の東海大は攻め込んでは反則が目立つ。しかしながら、流経大はP
Kで掴んだラインアウトのチャンスでことごとく東海大にボールを渡してしま
う。リーチや三上匠が高い壁となりスティール、あるいはボールを自陣側に弾
いてマイボールにしてしまう、そこから素速く攻めるという展開が続き流経大、
東海大ともに得点を挙げることができない。東海大に反則が目立ったのは、流
経大の接点での絡みが効果を発揮した格好だが、逆に東海大も接点で流経大に
プレッシャーをかけてターンオーバーに成功する展開が続く。

このまま得点板が動かないまま前半が終わるかと思われた42分、東海大に鮮
やかな連続攻撃から得点が生まれる。流経大陣22m手前のラインアウトから
東海大は素速くオープンに展開し、最後はWTB天坂がディフェンダーを振り
切ってインゴールに飛び込んだ。GKも成功して12−3と東海大のリードは
9点に拡がった。前半を終了してこのスコアなら流経大の大健闘と言ってよさ
そうだが、ラインアウトがうまくいっていれば、スクラムからいいボールが出
せればの、流経大ファンにとって「タラレバ」の多い前半だった。

[後半の戦い]

前半は優位に試合を進めたとはいえ、接点での反則が目立つなど東海大にとっ
ては反省点の多い内容。後半開始早々の1分、その東海大がビッグチャンスを
掴む。流経大ゴール前でのラインアウトからモールを形成して力強く前進。が、
惜しくもパイルアップで流経大が何とか凌ぐ。東海大は5mスクラムからオー
プンにラックからボールがNo.8前川主将に渡る。前川は持ち前の突破力を活か
して一直線でゴールポストに到達するが、ここで流経大のFLが身体をうまく
入れて前川からボール奪取に成功。際どいところでルーキーが流経大のピンチ
を救った。

しかしながら、東海大の圧力は凄まじい。5分、流経大ゴール前でのラインア
ウトでモールを形成して前進し、今度は木津がボールをインゴールに持ち込む
ことに成功した。GKは失敗したが17−3と東海大のリードは14点に拡が
った。東海大は畳みかける。7分、東海大は自陣22m手前での流経大ボール
ラインアウトの局面でリーチがスティールに成功して攻撃権を奪い返す。そし
て8分、流経大陣22m付近でのラインアウトからSO阪本を経てパスを受け
た吉田と森川のCTBコンビがタテにボールを運ぶ。そしてボールはラックか
ら素速くオープンに展開され、飛ばしパスを受けたFB豊島が流経大のディフ
ェンス網を切り裂きゴールラインを越えた。

前半はFWが接点で反則を多発(前半だけで10個)した東海大だが、BKへ
のオープン展開中心に戦術を切り替えたことで2トライ目が生まれた。リーチ
や木津のライン参加も効果的。GKは失敗したが22−3と東海大がリードを
19点に拡げる。このまま東海大が勢いに乗って得点を重ねるかと思われた。
だが、流経大もイシレリらのパワーを活かしたアタックで見せ場を作る。

リスタートのキックオフからイシレリがループパスを使って前進し、LO小野
寺を経て右PR今村が巨体を揺らしながら大きく前にボールを運ぶ。ここで東
海大に反則があり、流経大は東海大ゴール前でのラインアウトのチャンス。得
意とするモールでの得点が期待できる状況だったが、ここでも東海大のLO三
上にボールをスティールされてしまう。そして、東海大のキックはレシーバー
が顔面キャッチの状態となりノックオンというオマケまで付いてしまう。

ここから東海大は流経大ゴール前でスクラムのチャンスを掴む。流経大がコラ
プシングを連発するなど、都合4回スクラムが組み直されたが、ここは何とか
流経大が無失点で凌いだ。東海大の優位は変わらないが、なかなか追加点を奪
えないまま22−3のままゲームは終盤へ。33分、東海大は流経大陣22m
内での流経大ボールスクラムからのイシレリのアタックを強力なプレッシャー
をかけて止めラック。ボールがこぼれたところをPR三上が巧みに拾ってその
ままインゴールに飛び込んだ。GKは失敗したが27−3となり試合はほぼこ
こで決まった。

しかし、このままでは終われない流経大も一矢報いる。直後のキックオフで東
海大が自陣で反則を犯す。流経大はタップキックで攻めてLO萩澤が一気にゴ
ール前まで前進してラック。ここからボールがBKに展開され、SO宮脇が東
海大DFのタイミングをうまく外してギャップを作りラストパスをCTB矢次
に送った。態勢はほぼ決しているが、流経大が目指しているBK展開でのトラ
イがようやく生まれた。

東海大は終了間際の42分、PKからの速攻で前川主将がトライを奪い熱戦に
終止符を打った。最終スコアは34−8で東海大の完勝。ただ、流経大ファン
は圧倒されたというよりも、不完全燃焼という印象を受けたかも知れない。ス
タッツの5/16という数字に象徴されるように本日の流経大はラインアウト
が不調。前半は東海大に反則が目立っただけに、けして少なくはなかったチャ
ンスを活かせなかったのが響いた。逆に言うと、それだけ東海大のFWが余裕
を持って戦うことができていたことになる。流経大の強力FWと対峙すること
で、東海大FWの底知れぬ強さを実感することができた戦いだった。

[試合後の感想]

スコアも内容も流経大の完敗。ではあるが、叩きのめされたという印象も受け
なかった。東海大との間には力の差があることは事実だが、メンバー構成を考
えると来シーズンこそは流経大のシーズンになることも十分に考えられる。元
気いっぱいのFL高森やCTB矢次といったルーキー達の活躍を見るまでもな
く、明日を担う選手達が元気いっぱいなのが流経大の魅力。組織重視のラグビ
ーを指向するチームだが、洗練された東海大とは違った荒々しさも大切にチー
ム力をアップさせていって欲しいところ。決戦を終えて一山越えたとはいえ、
残り2戦でも緩むことなく、悲願の大学選手権初勝利に向けてチャレンジャー
精神を失うことなく戦い続けて欲しい。

5戦目にしてようやく強いFWとの対戦が実現したことで、この試合は、東海
大のチームとしてのバランスの良さがよくわかる戦いとなった。今シーズンの
東海大はどこからでも点が取れるチーム。また、個の強いチームにありがちな
ややもするとバラバラになってしまいそうな危うさもない。今後求められるこ
とはコンビネーションに磨きをかけることよりも、むしろピッチ上で起こりう
る様々な状況に対して、いかに15人がプレーのイメージを共有出来るように
なることではないかと思われる。まだまだ進化していく可能性を秘めていなが
ら最終形がどんな形になるのかが分からない。それが今シーズンの東海大のラ
グビーの最大の魅力かも知れない。          (2010年11月8日記)

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