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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2011

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流通経済大学 vs 法政大学 (2011.09.17−観戦記録)

流経大、初制覇に向けてまずまずのスタート、法政は不安な旅立ちだが...

[キックオフ前の雑感]

2011シーズンは第2節からの観戦。「日本一熱い町」を標榜する熊谷だけに、
熱中症が心配される陽気だったが、かなり強い風(もちろん名物赤城おろしとは逆
方向)が吹いていて、気温ほどは暑く感じられない。もちろん、双方が力一杯ぶつ
かりあう「熱い戦い」は大歓迎だ。このカードは伝統的に首脳陣にとって胃がキリ
キリ痛むような神経戦になることも多い。

さて、まずは双方とも大変気になるメンバーの確認から。昨シーズンの陣容から考
えれば、今シーズンの優勝候補の最右翼は流経大とみて間違いない。4年生が数人
というメンバー構成で2位にまで上り詰め、今シーズンは東海大がパワーダウンし、
関東学院も法政も「復活」の兆しが見えつつあるとはいえ、流経大の牙城を崩すこ
とは難しそう。しかしながら、韓国遠征(合宿)で故障者が続出しベストメンバー
が組めないという話が伝わってきており予断を許さない状況にある。

だが、スタメンの顔ぶれを見る限りは流経大はほぼベストに近い陣容と言えそう。
昨シーズンはFW3列の一角を担う形で頑張っていた鹿田はHOに転向し、主将と
してチームを引っ張る。FWはFLの辻と高森(ユース代表コンビ)を除きすべて
が4年生で盤石の体制。もちろんNo.8は学生では最も怖い選手のひとりイシレリだ。
BKはHB団が初登場のコンビなのが不安材料だが、CTB矢次、WTB小澤、F
B長谷川らが居るのでさほど心配はない。右WTBの吉田はSH登録だがWTB並
(以上?)の高速ランナーで、どんな走りを見せてくれるかも楽しみ。

一方の法政では、注目は多士済々でいろいろな構成が考えられるHB団の組み合わ
せ。蓋を開けてみれば、昨シーズンの後半にレギュラーに定着した本村と高城のコ
ンビで、まずは手堅く確実にといったところだろうか。大学屈指のエースのひとり
竹下は右WTBで出場し、森谷はFBを務める。だが、3、4年生が主体とはいえ、
No.8には小池、CTB(12)には金、左WTBには半井といったルーキー達がそれぞ
れ起用されている。上位復活に向けて好調な船出となるかどうか、不安と期待が入
り交じった陣容と言えそうだ。

[前半の戦い]

熊谷名物のひとつは厳しい残暑と強い風。ただ、今日の風は赤城おろしとは逆の南
風でプレーに影響が出そうなくらい強く吹いている。風下に陣取った法政のキック
オフで両チームの緒戦の火ぶたが切って落とされた。

序盤はFWのパワーで勝る流経大のペースで試合が進む。昨シーズンほどのパワー
は感じられないものの、鹿田主将を中心に良く纏まっている。そして、いろいろな
面で話題になるイシレリもチーム戦術にフィットする形で機能。流経大が理想とす
る、FWで確実にボールを前に運び、機を見てオープンに展開してBKで取るスタ
イルがようやく定着してきたようだ。だが、緒戦ということもありノックオンなど
のミスが目立ちなかなか得点を奪えない。

法政は流経大とは逆に素速くオープンに展開してエースの竹下主将らのラン能力を
活かすラグビーを信条とする。当初パワー不足が心配されたFWだったが、スクラ
ムも負けていない。ミスやペナルティが多く波に乗れない流経大に対し、法政も徐
々にペースを掴んでいく。ただ、キックが有効な地域獲得手段とならない強風下で
は、なかなか敵陣に入れない苦しい展開が続く。流経大は風に乗ってよく伸びるキ
ックを活かし難なく法政陣奥深くまで攻め入ることができる。

そんな中で、最初に得点を挙げたのは流経大。12分、法政陣22m手前で得たP
GでWTB小澤が確実にGKを決め3点を先制。が、直後のリスタートのキックオ
フで流経大のイシレリがボールを大きく前に運ぶもののノットリリース。今度は法
政のCTB岡本がほぼ同じ距離(位置)からPGを狙うが外れる。流経大はカウン
ターアタックからキックで法政陣10mまで陣地を一気に挽回。風上の利もあるが、
よく伸びるキックは流経大の武器といってもよさそう。

直後のラインアウトで法政がボールを後方に弾いたところで、流経大がボールの確
保に成功しFWのサイド攻撃からオープンに展開。CTB藤澤からパスを受けたF
B長谷川がゴールをめざす。が、ゴールライン手前で法政のタックルに遭い、身体
を伸ばしてインゴール到達を目指すもののノットリリース。優位にゲームを進める
流経大もあと数センチの壁が越えられない。

ただ、ペナルティやノックオンのミスが多いとは言え、流経大はブレイクダウンの
部分で激しくボール奪取を試みる。BKも明らかに法政に比べて体幹が強く鍛えら
れている。ボディコントロールの巧みさも含め、この辺りは流経大の方に一日の長
がある。FWもボールを奪取してからの繋ぎがよい。過去の流経大なら無理にボー
ルを前に運ぼうとしてクラッシュしていたが、第1列の選手も身体の大きさに似合
わぬ器用なオフロードパスを繋いだりと、「ボールを動かす流経」はホンモノにな
りつつある。イシレリも意識改革に成功したようでプレーが柔らかくなってきた。

膠着した中に流経大ペースで試合が進む中で法政にビッグプレーが出る。19分、
法政は自陣ラインアウトからのオープン攻撃の連続でFLの武者がビッグゲインを
稼ぎ一気に流経大陣へ前進。がオープンに展開したところでノックオン。さらにス
クラムでコラプシングを取られ、自陣で相手ボールラインアウトのピンチとなる。
22m付近での流経大のラインアウトからの攻撃は法政に阻止されるものの、25
分にマイボールスクラムから8→9でショートサイドの突破に成功し、ラストパス
を受けたFL高森は力強くゴールラインを越えた。そして左サイドからの小澤のG
Kはまるで風を計算したかのようにポストの右外からフックがかかった状態でクロ
スバーを超える。サッカーに例えればバナナシュートのような絶妙なキックだった。

流経大は畳みかける。30分、自陣10m/22mでの法政ボールラインアウトで
絶妙なタップからボールのスティールに成功しキックで前進。法政が自陣からカウ
ンターアタックを試みるものの、パスミスがありこぼれ球をイシレリが拾って約2
0m走りきりゴールラインを越えた。右中間からのGKも決まって流経大のリード
は17点に拡がった。その後、両チームによる激しいボールの争奪戦が続くものの
得点板が動かないまま前半が終了。風下とはいえ、法政は流経大の22m内に殆ど
入ることもできなかった。ただ、流経大のミス多発がなければもっと点差が開いた
可能性もある前半の法政の戦いぶりだった。

[後半の戦い]

後半は風上に立つ法政。FWの健闘ぶりからも17点のビハインドはまだまだ挽回
可能。しかしながら、FW、BKともに法政に激しくプレッシャーをかける流経大
が優勢に試合を進める。ペナルティが多いため得点には繋がらないものの、風の影
響はあまり感じられない。法政もボールを展開するチャンスは少なくはなかったも
のの、肝心なところでパスミスやノックオンが出てチャンスを潰す。流経大のプレ
ッシャーもあるが頼みの竹下がゲインする局面がないため、BK攻撃に勢いが出て
こない。攻守とも組織的に動けるかどうかが両チームのBKの違いで、このギャッ
プは簡単には埋まりそうもない。流経大は1部昇格から紆余曲折を経てこのスタイ
ルを積み重ねてきているが、法政はその間に首脳陣の交替が何度もあったので。

それはさておき、両チーム一進一退の攻防が続く中、法政は12分にSO高城に替
えて2年生の加藤を投入。直後のスクラムからのオープン展開で絶妙なループを見
せるなど、ゲームの流れを変えそうなプレーを披露して法政ファンの期待を高める。
さらに14分、法政はHWLから流経大陣で得たペナルティで何とスクラムを選択。
この辺りにも法政FWの自信が伺える。ここからのオープン展開で加藤が裏に抜け
てWTB半井が流経大陣22m内に突入しラストパスを竹下へ。法政がようやくら
しさを発揮した素晴らしいトライに見えたが、オブストラクション。ここが決まっ
ていたら試合の流れも分からなくなる残念なシーンではあった。

そんな法政にとってはもどかしい展開が続く中、後半も半ばに差し掛かったところ
で法政に待望の得点が生まれる。19分、CTB岡本がゴール正面約35mのPG
を決めて法政のビハインドは14点に縮まった。この得点に力を得た法政の押せ押
せムードとなる中で、FWを軸としたオープン展開で法政は攻め続ける。しかしな
がら、流経大の組織DFを乱すまでには至らず、肝心な局面でノックオンやパスミ
スがあり、法政ファンが深いため息をつく場面が続く。

なかなか法政陣に入ることができない流経大だったが、28分にワンチャンスを得
点に繋げる。法政陣22mでの相手ボールラインアウトの法政ゴール前でターンオ
ーバーに成功。ゴール前のラックからSO森岡がゴロパントのような形でCTB矢
次に絶妙なキックパスを送り、矢次は難なくゴールラインを越える。これが、残り
時間から考えてもゲームを決めるビッグプレーとなった。終了間際の40分には、
この日GKをすべて決めているWTB小澤が自らトライを奪い、流経大リードが2
6点をリードして試合終了。両チーム、ブレイクダウンでの激しい攻防はあったも
のの、終始淡々とした感じで時間が過ぎていく不思議な試合でもあった。

[試合後の感想]

勝ったとはいえ、この試合で流経大が犯した反則19(うちFK2つ)は大きな反
省材料。法政のラインアウトのミスにも助けられた形。とはいえ、流経大のチーム
戦術はほぼ固まったようだ。安定したセットからまずFWで確実にボールを前に運
び、BKに展開して得点を目指すスタイル。HB団の動きが安定すれば確実に得点
力が上がっていくものと思われる。急造WTB?の吉田もしばしばビッグゲインを
見せてスタンドを沸かせていた。本職が復帰したらインパクトプレーヤー的な起用
があるのかもしれない。悲願の初制覇に向けて、流経大はまずまずのスタートが切
れたのではないだろうか。

自慢のアタックが殆ど機能せず、まさかのノートライでの完敗に終わった法政。シ
ョックは隠しきれないと思われるが、FWが流経大にも力負けしなかった部分に期
待が持てる。問題はBKで、ポイントはやはりHB団ということになるのではない
だろうか。ここが決まらないと法政自慢のBK攻撃の魅力は出てこない。堅実性な
ら高城で、創造性なら加藤ということになるのかも知れないが、司令塔のどちらか
がリザーブというのはチーム戦術面でもマイナスのような気がする。今後の対戦相
手は流経大ほどの難敵ではなさそうなだけに、期待を持って観ていきたいと思う。
                            (2011年9月17日記)

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