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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2011

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関東学院大学 vs 日本大学 (2011.09.18−観戦記録)

関東学院、何とか緒戦をクリア、決定力不足の日大だが小川が魅せた

[キックオフ前の雑感]

緒戦から厳しい戦いを強いられることが多くなってきた関東学院。かつてのような、
下位チームを容赦なく叩きのめした王者の風格は薄れてしまった。その原因として、
選手の小型化に歯止めがかからず、FWで相手を圧倒する試合ができなくなってき
ていることが挙げられる。しかしながら、かつての関東学院は15人による継続ラ
グビーで強くなってきたことを考えると、今シーズンは原点復帰と言えなくもない。
当初の不安とは裏腹に、覇権奪還も困難ではない状況になってきているだけに、緒
戦でそのきっかけを確実に掴んでおきたい。軽量化とはいってもFWの前5人は安
定しているのでそんな期待も高まる。

加藤HC体制が3年目を迎える日大だが、なかなか結果が出せずファンの期待に応
えられない状況が続いている。その大きな原因は決定力不足にあり、今シーズンの
メンバーを見ても、決定的な仕事ができるのはSO小川とLOタカウの2人。ただ、
新たに加わった大型新人のマイケル・トロケがそんな状況を打ち破ってくれるかも
知れない。組織的な継続に活路を見いだそうとしている日大だが、得点力アップの
ためには(かつての日大がそうであったように)個の頑張りも必要。新たにチーム
に加わるメンバーも、遠慮せずに思う存分暴れ回って欲しい。

[前半の戦い]

南からの強い風が吹いていた昨日とはうって変わり、真夏の太陽が照りつける選手
達にとっては「厳しい残暑との戦い」となる本日の熊谷。試合は日大のキックオフ
で始まった。関東学院はキックを封印し自陣からもオープン展開で前進を図るラグ
ビーを見せる。日大のトロケは背番号12を付けているが、ディフェンスの局面で
はFBに位置するため、カウンターアタックへの警戒感があったのかも知れない。

しかしながら、関東学院の初得点は効果的なキックから生まれる。連続攻撃からゲ
インしたWTBが日大陣奥深くに向けてキック。ボールを確保したトロケのプレー
に日大ファンの期待が集まったが、処理にもたつきターンオーバーを許す。日大陣
22m付近から関東学院は素速くオープンに展開し、ライン参加したLO後藤が力
強くインゴールに走り込んだ。開始4分にして関東学院は幸先良く7点を先制。か
つてほどのアタックの切れ味はなくなっているものの、ここ1番での集中力は流石。

日大も連続攻撃で関東学院陣を脅かす。しかしながら、攻撃のリズムに乗れずミス
でチャンスを活かせない。このあたりが関東学院との差とも言えそう。攻めている
時間は長くても効果的なゲインが得られないのが痛い。が、15分、日大はSO小
川のスーパーブーツにより3点を返す。HWLから5m関東学院陣に入った右中間
の位置からPGを決めた。ショット選択にどよめいた観客席がシーンと静まりかえ
るくらい見事なGKだった。小川はその後もキックだけでなく、ラン、パスワーク
で観客席を魅了し続ける。

その後ゲームは両チームが攻め合う形で膠着状態に。関東学院の連続攻撃に対し、
日大も組織ディフェンスで粘り強く抵抗する。日大のアタックでは、16分に関東
学院陣10m/22mの位置でのスクラムからの8→9を起点にトロケにボールが
渡るシーンも生まれるが、日大ファンの期待とは裏腹にタックルにあってノックオ
ン。その後もトロケにボールを持ったときに日大ファンの歓声がため息に変わるシ
ーンが続く。気のせいかも知れないが、ちょっとプレーに自信がなさそうに見える
のが残念。足を負傷してからはとくにその感が強まった。

そんな膠着した状況の中で、関東学院はチャンスを確実に得点に繋げていく。25
分には日大陣ゴール前のラインアウトからFL田邊がトライ。29分には日大のF
W周辺のディフェンスの甘さをついて、WTB小林が快足を飛ばしてトライを奪う。
GKは失敗するが19−3と関東学院がリードを拡げる。そのまま関東学院が突っ
走るかと思われたが、37分に日大も反撃。関東学院ゴール前のスクラムから8→
9→11とボールが繋がり、ゴール前のラックからタカウが飛び込みビハインドは
11点に。

しかし、ここから前半終了まで日大は自陣を背にして関東学院FWの猛攻に耐え続
ける展開となる。ゴールライン直前で粘り強く抵抗するものの反則が続き、インジ
ュリータイムを消化してもゲームを切ることができない。ついに関東学院のWTB
小林がゴールライン突破に成功する。そのとき時計の針は47分を指していた。後
半に逆転の望みを託したい日大にとっては残念な失点だった。

[後半の戦い]

後半開始早々の3分。日大のSO小川が今度は絶妙のパスワークで魅せる。関東学
院陣22m内でパスを受けた小川がCTBにパスを送った後、ループして再びパス
を受け取り関東学院のディフェンダーをかわしてゴールラインを越えた。右の難し
い位置からのGKを確実に決めて日大のビハインドは再び11点に縮まる。日大応
援席は逆転も視野に入ってきたことで一気に盛り上がる。

日大のアタックにも勢いが出てきた。8分、関東学院陣ゴール前ラインアウトのチ
ャンスから再び小川が絶妙のタイミングで裏に抜けてオープン展開。しかしながら、
哀しいかな後が続かない。せっかくのチャンスもゴールを目前にして痛恨のノック
オン。関東学院は相手のミス(によって生じる隙)を見逃さない。自陣ゴール前の
スクラムからNo.8安井がサイドアタックで大きく前進しオープンに展開。大外でパ
スを受けたWTB小林が快足を飛ばしてこの日3トライ目を奪う。この電光石火の
早業により31−15と関東学院のリードは16点に拡がる。

だが、日大も小川が今度はひとりで決める。関東学院陣22m手前のスクラムを起
点としていったんボールを右に展開してラック。パスを受けた小川が今度は左に回
り込み、関東学院DFのギャップをついてゴール正面まで一気に走り抜けた。GK
成功でビハインドは9点に縮まった。再び元気になる日大応援席。しかし、関東学
院は慌てない。小川個人にやられているだけで組織的に崩されているわけではない。
日大の粘り強いディフェンスに遭いながらも追加点のチャンスをうかがう。

後半も中盤を過ぎた22分、関東学院は日大陣ゴール前のスクラムを押し込んでF
Wでトライ。BKのライン攻撃でなかなか相手防御を破れない関東学院にとって、
FWのモールは有効な得点手段となっている。BKで崩して取る関東学院らしから
ぬ泥臭い攻撃とも言えるが、確実な得点パターンを持っていることは心強い。続く
27分にも再びラインアウト→モールから安井がトライと、「関東学院のかたち」
によるトライが続いて41−22。残り時間から考えてもここで勝負が決まった。

しかし日大も諦めない。関東学院陣22m付近のスクラムからSO小川がドイツで
活躍する香川を彷彿とさせる身のこなしで相手ディフェンダーをかわし、絶妙のタ
イミングでパスをLOタカウに送る。タカウは身体の強さを活かして日大DFをぶ
ち破りゴールラインに到達。日大の黄金コンビとも言える2人による硬軟おり交え
た見事なトライだったが、再三同じような状況にあったトロケにこの働きができて
いれば日大はもっと競った試合ができていたかも知れない。小川から送られるパス
のタイミングやコースが絶妙なだけに惜しまれる部分ではある。

関東学院は38分に得意の形のラインアウト→モールから1トライを追加して48
−29で締めた。流経大が好調なスタートを切り、その他のチーム間にも大きな力
の差がなさそうな今シーズンのリーグ戦Gにあって、「らしさ」は発揮できなかっ
たが関東学院としてはまずまずのスタートではなかったかと思う。

[試合後の感想]

ここ数シーズンは不安一杯で、昨シーズンのように薄氷を踏む思いで開幕を迎えて
いた関東学院だったが、危機感をバネにチームの方向性は固まっているようだ。試
合内容は物足りなくても、まずまずのスタートが切れたのではないかと思う。とく
に相手のミスを見逃さず、得たチャンスを確実に得点に結びつける得点感覚(嗅覚)
は健在で、代々受け継がれてきたDNAは失われていないようだ。今後の戦いも我
慢の連続となりそうだが、序盤戦でしっかり足場を固めてチーム力を上げて欲しい
と思う。

日大はボールを持つチャンスも多く、昨シーズンよりも攻撃のバリエーションが増
えた印象。だが、BKに小川に続く選手が居ないのが残念だ。また、チームプレー
に関しても、経験不足のためか関東学院のように戦術の共有がスムースにできてい
ないように見える。ただ、これは強いチームと対戦することによって磨かれていく
部分のはずなので、1戦1戦を大切に戦って欲しいと思う。また、今後は小川にマ
ークが集中することになるので、得点力を上げるためにも小川を孤立させないよう
なチーム戦術を磨いて欲しい。今後の成長に期待したい。  (2011年9月19日記)

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