Live Report from Rugby Stadium

熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2011

試合日程&結果

Rugby Top

週間情報

中央大学 vs 拓殖大学 (2011.09.25−観戦記録)

中央大、拓大を圧倒もほろ苦の辛勝、拓大は2本のGK失敗が惜しまれる

[キックオフ前の雑感]

選手の個々の力が年々確実に上がっている中央大。上位に定着しても不思議ではな
い陣容になっているはずなのだが、戦績がともなってこないのは何故だろうか。ひ
とつ考えられる理由は、チーム戦術が必ずしもピッチ上で戦う選手間で共有されて
いないのではないかということ。せっかくいい形で攻めていても、最後はミスや反
則でチャンスを潰してしまうことが多く、ゴールラインが遠いもどかしい試合が多
い。緒戦の大東大戦(結果的に惜敗)も上手く試合を運んでいればと惜しまれる。
今日こそは、緒戦では「消えて」いた羽野の活躍に期待したいところ。

相手がチーム再構築中の東海大とはいえ、一時は1点差まで王者を追い詰めるまず
まずのスタートを切った拓大。だが、FWはリーグ戦グループ1の軽量小型の陣容
で今後も厳しい戦いが続く。ただ、FWの核になれるウヴェの戦列復帰は明るいニ
ュース。茂野、イーリ、平野らが抜けた穴は小さくないが、大松、北方、植田で組
むバックスリーは昨シーズンに劣らない高速トリオのはず。FW戦でふんばり、B
Kに活きた球を供給できればBKラインで中央大を攪乱することも十分に可能。そ
のためにも、自陣22m内でのラインアウト→モールの展開は出来るだけ避けたい。
中央大優位が予想される中で、どこまでFWが踏ん張れるだろうか。

[前半の戦い]

中央大のキックオフで試合開始。開始早々の拓大陣22mでのスクラムから中央大
は8→9→15→14と繋いでゴール1歩手前まで迫るものの、森が惜しくもタッ
チアウト。以後、拓大は自陣22m内から殆ど脱出できない苦しい展開が続く。中
央大は緒戦(大東大戦)の後半で猛威を奮ったラインアウト→モールのパターンで
得点を狙う。しかしながら、拓大のしぶといディフェンスに遭ってなかなかゴール
ラインを越えることができない。7分に中央大はゴール正面15mの位置でPKの
チャンスを得たところでショットを選択し3点を得る。

なんとか中央大の攻勢に耐えて失点を最小の3点に抑えた形の拓大。だが、中央大
の攻勢は止まない。ゴール前のラインアウトからは迷わずモールだが、セットプレ
ーからは基本的に「オープンに展開で大外勝負」が中央大の基本戦術のようだ。だ
が、一発でラインブレイクするのは難しいし、FWのフォローが遅れればアタック
のスピードも上がってこない。緒戦でも気付いたことだが、2次攻撃の段階でライ
ンにFWが残っていてしかも歩いている選手が多い。それとFB羽野がライン参加
で繋ぎ役というのはもったいないような気がする。

圧倒的にボールも地域も支配しながら決めきれない中央大。上で書いたような理由
でボールを運べば運ぶほどスピード感がなくなっていく。が、13分に待望の追加
点が生まれる。自陣を背負った拓大にペナルティが多くなる中で、ゴール前のPK
からクイックで攻めてNo.8藤井がインゴールに飛び込んだ。GKも成功して10−
0と勢いから見ても一方的な展開となりそうな雰囲気も漂ったのだったが...ミ
スでチャンスを潰す、いつもの中央大が顔を出す。

逆に拓大は中央大のノックオンを拾ったWTB植田が起死回生のキックを中央大陣
へ。22m付近でボールのキャッチングに成功したかに見えた拓大だったが惜しく
もノックオンで得点のチャンスを逃す。しかしながら、大きく陣地の挽回に成功し
たところで拓大の逆襲が始まる。中央大とは対照的に、拓大はテンポ良くボールを
繋ぐオープン展開。無理に大外まで振らずにセンタークラッシュを経るので、アタ
ックにもリズム感がある。SH江頭の珠捌きが素晴らしいこともあり、同じBK展
開でも観ていて楽しいのは拓大の方。

23分、拓大は中央大陣ゴール前のラインアウトからモールを押し込み、FWのサ
イドアタックで仕掛けた後、最後は切り札のFB大松がインゴールに飛び込んだ。
SO岩谷のGKも成功して7−10と拓大のビハインドは3点となる。続く中央大
のリスタートのキックオフで、拓大はカウンターアタックからボールをオープンに
展開し大松へ。拓大ファンにとっては期待が高まるシーンが生まれるところだった
が、数秒後にそれは大きなため息に変わる。大松がノックオンを犯し万事窮した。

ピンチの後にチャンスありで、ここから再びFWのパワーに勝る中央大の時間帯と
なる。自陣22m付近から拓大は脱出出来ないままに、逆に言うと中央大も決めき
れないままに時計がどんどん進んでいく。31分にはオープン展開からの裏を狙っ
たチップキックが拓大選手にフェアーキャッチのナイスプレゼントになるなど、中
央大はちぐはぐ。逆に拓大は渾身のタックルなどで粘り強く中央大のアタックを止
め続ける。

このまま中央大が攻めきれずに前半が終わるかと思われた37分、拓大に痛恨のミ
ス。自陣22m付近での中央大のノックオンでピンチを脱したかに見えたが、スク
ラムをホイールされて中央大ボールに。ここから中央大はFWのパワーを活かして
スクラムを押し込み、ゴール前でモールを形成してさらに前進。最後はNo.8藤井が
ボールのグラウンディングに成功した。GKも決まり中央大のリードは10点に拡
がる。拓大としては確実に敵陣に入っておきたかった場面だった。

[後半の戦い]

後半は拓大のキックオフで試合開始。中央大の蹴り返しに対するカウンターアタッ
クでWTB植田からFB大松にパスがわたりビッグゲインか?と思われたが、また
してもノックオン。大松にとっては前に抜けるイメージが出来ていたのかも知れな
いが、まずはしっかりとボールを確保して欲しいところ。トライゲッターにありが
ちな「自分で行く!」という強い気持ちは大切だが、少し自意識過剰にも見えた。
回りが活きるプレーが出来るようになると拓大の攻撃は確実に増すだけに、自重し
て欲しい部分ではある。

拓大にとっていや〜なムードが漂い始めるが、2分に自陣10m/22mでの中央
大ボールラインアウトで拓大は「モールに入らないプレー」を選択。まんまと中央
大のオブストラクションを誘い、拓大はピンチを脱する。昨シーズンに大きな話題
となり、いろいろと論議を巻き起こした?付きのプレーだが、軽量FWの拓大にと
っては有効なオプションとなっていた。その後も同じ方法で中央大FWを翻弄する。

その後中央大に反則が続いたところで、拓大はゴール正面でPKのチャンスを得る。
当然ショットを選択と思ったが、拓大はラインアウト→モールを選択。ここで、中
央大のお株を奪うようなドライビングモールを見せ、ゴール前でNo.8鶴田がサイド
を突きインゴールへ。GKが決まればビハインドは3点に縮まるところだったが失
敗。さほど難しくなかった位置だっただけに(その後の展開を考えても)決めてお
きたかったところ。とはいえ、逆転も現実味を帯びてきたことで、拓大応援席は一
気に盛り上がる。

しかしながら、中央も12分に拓大陣右中間30mの位置からのPGを宇野が確実
に決めて再び点差を8点に拡げる。拓大はせっかくの追い上げムードに水を差され
た格好。だが、リスタートのキックオフから、拓大は中央大陣奥深くに攻め入って
ペナルティを誘いゴール前でラインアウトのチャンス。モールからLOウヴェがデ
ィフェンダーを吹っ飛ばしながら強力に前進をはかりゴールラインを越える。GK
を確実に決めればビハインドは1点に縮まる。位置的にも当然2点が追加されるも
のと思われたが、ここでも痛いミス。キックが僅かに逸れてしまい加点できない。

中央大としてもお尻に火が付いた状況で、勢いに乗る拓大とのせめぎ合いによる点
の取り合いも期待される状況となってきた。中央大も後半の終盤になってようやく
エンジンがかかってきた感じ。だが、得点板はまったく動かない状態となってしま
うから不思議。30分以降は拓大が中央大陣22m内で攻め続ける展開となるが、
拓大も攻めきれない。35分のラインアウトも痛恨のノットストレートで、ゴール
ラインは遠い。41分の連続攻撃も実らず、結果的には中央大が逃げ切りに成功す
る形で試合はノーサイドとなった。

[試合後の感想]

地力に勝り、序盤から圧倒的に攻め続けるも、終わってみれば僅か3点差の辛勝に
終わった中央大。ワイドなオープン展開を指向しながらも、有効な得点パターンは
FWのモールが起点という形でちぐはぐな印象を受ける。FWのパワーを活かすた
めにも、まずはFWで近場を攻めてオープン展開の方がいいような気がする。元来
中央はタテに強く、決定力があるバックスリーのスピードが活きる形を持ち味とし
ていたはず。1次で大外まで展開してしまうことでどうしてもスピードダウンして
しまう。エースの羽野もFWに近いところに居た方が相手にとっても脅威になると
思うのだが。充実した戦力を活かすためにも、チーム戦術の再確認は急務と思われ
る。とくに今シーズンは上下間の実力差が縮まっているので。

昨シーズンよりさらに戦力ダウンしたのでは?と心配された拓大だったが、取り越
し苦労だったようだ。エースの茂野が抜けた影響は少なくないが、チーム戦術の徹
底と一体感は昨シーズンのチームより上。軽量のはずのFWがしぶとく食い下がり、
SH江頭の珠捌きもよかったため、テンポよくボールを前に運ぶラグビーができて
いたように思う。惜しまれるのは、さほど難しくない位置からのGK2本を確実に
決められなかったこと。とは言っても、ここ数シーズンのチームに観られたような、
時折集中が切れてエアポケットに落ちる時間帯が減ったのは進歩と言えそう。入替
戦回避から上位進出も見えた戦いぶりだった。       (2011年10月1日記)

Top       

本ウェブサイトの記述内容の無断転載を禁じます。