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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2011

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中央大学 vs 日本大学 (2011.10.23−観戦記録)

FWとBKが噛み合った日大の会心の勝利、敗れた中央大は崖っぷちへ

[キックオフ前の雑感]

今シーズンの日大を引っ張るのはFWのタカウとBKの小川。この2人の得点力は
対戦校にとって脅威となっている。逆に、日大はこの2人を徹底マークすれば怖く
ないとも言い換えられる。その2人が2戦目からはNo.8とSHという形でタッグを
組むことになった。SH小川は当初構想通りとはいえ、現状では大きな賭とも言え
そうな布陣。だったのだが、東海大戦で日大は王者をあと一歩まで追い詰める健闘
を見せた。緒戦の関東学院戦での華麗な司令塔の面影しかないだけに、この新8−
9コンビがどのように機能しているのか一刻も早く観てみたい。リザーブとはいえ
下地の復帰も日大にとっては明るい材料だ。

一方の中央大。緒戦(大東大に惜敗)、2戦目(拓大に辛勝)と2試合観たが、チ
ームがうまく機能しているとは言えず、とくにFWのパワーが活かしきれていない
印象を受ける。BKにワイドに展開しても、FWの運動量が不足気味で、なかなか
エース羽野がトライを量産という形にならない。この試合の後には目下の3強との
対戦が控えているだけにチームを何とか完成に持って行きたい。というかこの試合
は絶対に負けられない。相手が3連敗中のチームとはいえ、立場も勢いも違う。そ
れに、中央大にはかつて日大を大いに苦しめたライバルの意地もあるはずだ。満を
持して?11番のジャージで登場の羽野にも期待が高まる。

[前半の戦い]

日大のキックオフで試合開始。中央大FWがボールを後ろに逸らしたところでノッ
クオンがあり、日大は中央大ゴール前でスクラムという絶好のチャンスを得る。し
かしながら「スクラムの日大」は既に過去のものとなっている。中央大にスクラム
をあっさりホイールされてしまう。FWのパワーならやはり中央大が上で、このま
ま中央大がペースを握るかに思われた。だが、ボールが動きと力関係は逆転する。
3分に中央大がFKで得たチャンスもラックでターンオーバー。実はこのブレイク
ダウンでの攻防こそがその後の戦いの行方を決めたのだった。

本日の中央大はBK展開でも大外まで振らずにFWを使う作戦のようだ。過去2試
合を観ても2次攻撃の段階で既にミスマッチの状態だったことを踏まえての作戦変
更だろうか。5分には自陣10m付近のスクラムを起点に8→9でショートサイド
を突破し羽野がビッグゲインという、中央大にとってはファンを狂喜乱舞させるシ
ーンが生まれる。残念ながら22m内に入ったところでオフサイドの反則となるが、
中央大はやはりこの形と思わせるキレのいいアタックだった。FWのスクラムが安
定しているだけに、この形をもっともっと作りたい。

7分、中央大は日大陣10m付近のラインアウトを起点にオープンに展開。しかし
ながらラックで日大がターンオーバーに成功して逆襲に転じる。何となくぎこちな
さを感じさせるアタックだが日大はFWとBKが一体になってボールを前に運び中
央大ゴール前に到達。ラックからボールが出たところでSO及川から内に切れ込ん
だ(というよりも回り込んだ)WTB瀧水にボールが渡る。エアポケットができた
かのような前が開いた状態で、瀧水が難なくゴールラインを越えた。攻撃側が虚を
突かれるくらいにあっけないトライにより日大が7点を先制する。

日大らしからぬと言っては失礼かも知れないが、多少ぎくしゃくはしてもしっかり
FWとBKが連携してトライを取るプレーは新体制ならではのもの。タカウが積極
的にライン参加して核となり、小川はSHの役割に徹して活きたボールをBKに供
給といった具合にアタックの形ができてきた。小川のプレーはとくに俊敏という感
じもしないのだが、無理なくむらなく確実にボールをBKラインに渡す。このよう
に攻守のバランスを上手く取れるのは、司令塔としての経験が成せる技なのだろう
か。小川の動きを観て、SHに対する見方が少し変わったような気がする。

それはさておき、中央大のアタックは相変わらず機能しない。FW主体に変えてみ
たものの相手をえぐるまでに至らない。BKに回してもミスが多く、そしてラック
ではターンオーバーを喰らうといった状況。14分、17分には相次いで日大ゴー
ル前でラインアウトという絶好機を得るものの強力なはずのFWが押し切れない。
26分には日大が自陣からオープンに展開したところで、羽野がインターセプトを
試みて果敢にダイブを見せるが負傷...(結局その後交替となる)。あと一歩で
ゴールまで行けたかもという惜しいプレーだったとはいえ、エースの早すぎる退場
と、中央大はツキからも見放された格好となる。

そして31分、膠着状態にピリオドが打たれる。中央大陣10m付近のラインアウ
トから日大のLO大窪が裏に抜けてボールがタカウに渡りインゴールへ。ここから
日大の怒濤のトライラッシュが始まった。リスタート直後の33分、中央大が自陣
からオープンに展開したところで日大のCTB新井が好タックル。新井はそのまま
こぼれ球を拾って力強くゲインしWTB栗本にラストパスを送る。続く37分にも
日大はカウンターアタックからオープンに展開し、新井を経由して今度はWTB栗
本からFB徳留にラストパスがわたる。

14−15の絶妙のコンビによるムーブでオープンスペースを創り出す動きも(失
礼ながら)かつての日大には観られなかった動き。個人技で抜ける選手は何人も居
たけれど。個人から組織へと改革を遂げた日大を強く印象づけるプレーだった。3
連発で日大の動きが俄然良くなってきた。前半終了間際の41分、中央大ゴール前
でのラインアウトからモール、と見せかけたサインプレーでショートサイドに回り
込んだHO吉田にボールが渡る。虚を突かれた形の中央大がまったく対応できずに
難なくトライを許す。29−0の日大リードでの折り返しという予想外の形で前半
が終了した。

[後半の戦い]

羽野のビッグゲイン以外に殆ど見せ場のなかった中央大。後半はネジを巻き直して
ピッチに登場し反転攻勢に出る。PKからの速攻でタテを突いてボールを繋ぎ日大
ゴールに迫る。やはりタテ、タテで前に出てくる中央大のアタックは迫力がある。
日大は自陣ゴールを背にして反則が続く状態となりピンチの連続となる。そして、
ついに7分、中央大に待望の初トライが生まれる。ラインアウトからモールを押し
込んでNo.8藤井がトライ。GKも成功し7−29だが、まだまだ時間はある。よう
やく多数派を占める中央大の応援席がお通夜状態から解放された。

しかし、今日の(今年の?)日大は違った。キックオフの蹴り返しに対するカウン
ターアタックから連続攻撃でボールを繋ぎ、中央大が自陣10m付近で反則を犯す。
ここから日大はPからゴーで攻めてタカウがゴール前まで到達。BKラインに完全
にオーバーラップが出来たところで日大はオープンに展開し、途中出場のCTB下
地が難なくゴールラインを越えた。CTB新井が核となる中、下地が完全復帰の状
態になれば日大の攻撃力はさらに上がる。そして、控えにはマイケルもいる。

27分にはそのマイケルが自陣からのカウンターアタックで50m以上を走りきり
トライを奪う。緒戦を観た感じではどこか頼りなさを感じさせたマイケルだが、よ
うやくチーム戦術にフィットしてきたようだ。このトライは自信になるはず。中央
大のことを書きたいのだが、なかなかいい場面が生まれない。「組織の日大」の前
に為す術なく時計の針が進んでいく。とくにブレイクダウンで5回以上もターンオ
ーバーを許してしまったのが痛い。それだけ日大のFWが機能的に動けていたわけ
だが、逆に中央大のFWがパワーを活かせなかったことになる。

終了間際の43分、日大はPKでショットを選択。小川は31分に退いたため、マ
イケルがPGを蹴り成功。結局、中央大の得点は後半開始早々に挙げた7点のみで、
7トライを奪った日大の圧勝に終わった。中央大に元気がなかったとはいえ、過去
2シーズン、得点力不足に泣いたチームとは思えないアタックの連続。それも組織
化されたものだ。もしかしたら、この勝利に一番ビックリしたのは実は日大ファン
だったかも知れない。BKラインにコマが揃ってきたので、あとはFWのスクラム。
後半戦で勝ち星を重ねていけば大学選手権、そして4位以内への道も開ける。日大
ファンの楽しみが一気に膨らんだ格好だ。

[試合後の感想]

本日の日大で一番印象に残ったのことは「小川が目立たなかったこと」。これに尽
きる。SOで一人気を吐いていた関東学院戦のSOと同じ選手とはとうてい信じら
れないくらいに、SHというか黒子に徹していた感がある。もちろん、今日の状態
なら無理に自分で行く必要がなかっただろうし。一見、SHとしても特別な動きは
していなかったように見えたが、攻撃の起点としてしっかりと機能していたように
思う。

FWがスクラムで劣勢を強いられた中でも、(高速ではなくても)確実に正確にボ
ールを送り続けることで日大のBKラインを機能させる。もしかしたら、ここに加
藤HCの狙いがあるのかも知れない。トリッキーな動きで相手を翻弄することが出
来ることも(相手に強く意識させる形で)キープしつつ、堅実なSHとしてライン
を動かす。今後、小川がどんな形で進化を遂げて行くのかをじっくりと見ていきた
い。ただ、そこには強力で頼りになるタカウの存在があることも忘れてはいけない。
けして博打ではなくて、計算され尽くした8−9コンビでもあるのだ。

本当に今日の試合に関しては、中央大について書くことがなかなか思い浮かばない。
ひとつ書くとしたら、日大にブレイクダウンで5回以上ターンオーバーを許し、チ
ャンスの目を潰したFW戦の完敗ということになる。個人個人は強くても、組織と
して機能しないことが気になる。日大のFWも関東学院や東海大や流経大のような
動きができるようになってきたことが逆によく分かった。チーム全体に関しても、
やりたいことがさっぱり分からない(伝わってこない)。日大が3シーズンかけて
進化を遂げつつある中、どうしても中央大の「停滞」が気になってしまう。
                            (2011年10月28日記)

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