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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2011

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流通経済大学 vs 関東学院大学 (2011.10.30−観戦記録)

15人の力が結集した関東学院会心の勝利、流経大の悲願達成は一歩後退

[キックオフ前の雑感]

悲願の初優勝達成に向けてばく進する流経大!と書きたいところだがちょっと雲行
きが怪しくなってきた。今シーズンのチームには昨シーズンほどの爆発力が観られ
ない。高速ではなくてもテンポ良くボールを動かすラグビーが停滞気味のように感
じられる。卒業したSO宮脇の存在感はけして小さくはなく、その穴が埋めきれて
いない。期待された森岡は負傷ということで前節は急遽オペティが司令塔に起用さ
れたが、急造だから当然だがフィットしていたとは言い難い。もちろん、これは彼
の能力に問題があったのではなく、チーム構想の問題。本日起用された桜庭がどれ
だけやれるだろうか。

対する関東学院は緒戦からしっかりチームを仕上げてきており、また一戦毎に戦力
の積み上げが感じられる。たとえばBKライン。緒戦の日大戦ではオープンに展開
してもCTBのところで攻撃がつっかえて、なかなか決定力のあるバックスリーに
いい形でボールが渡らなかった。しかしながら、前節の法政戦では両CTBがライ
ンの核と機能するようになっていて、WTBで取るチームが完成。本日は14番と
FBの選手が初スタメンだが、それもBKラインが安定してきたことの裏付けと思
える。

シーズン開幕前なら圧倒的に流経大と予想されたこのカード。でも現時点なら流経
大の伸び悩みと関東学院の成長で力の差は縮まっている。それに、関東学院は何と
いっても試合巧者。流経大の持ち味を消すラグビーができる。逆に流経大は重要な
試合で普段着のラグビーができなくて苦渋をなめてきたチーム。はたして流経大は
悲願達成に大きく前進できるのだろうか。それとも...

[前半の戦い]

ピッチに登場した両チームの選手達を見比べてみると、やはり流経大の選手達の胸
板の厚さが目に付く。FWは言うに及ばずBKの選手も見るからに体幹が強そう。
でも闘志では関東学院の選手も負けていない。その関東学院のキックオフで試合が
始まった。開始早々から、激しい肉弾戦が繰り広げられる。パワーなら体格に勝る
流経大だが、関東学院も速さとまとまりの良さで対抗。とくに後者の相手を確実に
倒す低いタックルが目を惹く。

関東学院の気迫に押されてか、ブレイクダウンの局面で流経大に反則が目立つよう
になり、6分、7分、10分と相次いで関東学院が流経大ゴール前でラインアウト
のチャンスを掴む。モールからのトライは関東学院の確立されたトライパターン。
だが、流経大もモールに自信を持っているチームだけに、簡単にはゴールラインを
超えさせない。流経大がこのまま凌ぎきるかと思われたが12分、関東学院はこの
シリーズ4度目のチャンスをものにした。モールを組むと見せかけてボールはジャ
ンパーの後藤からショートサイドに位置したHO新井に渡る。新井は虚を突かれた
形の流経大FW陣を横目にあっさりとゴールライン突破に成功した。

このトライをきっかけに、ブレイクダウンでの攻防はさらに激しさを増す。16分、
今度は流経大が相手の反則から関東学院ゴール前でラインアウトのチャンスを掴む
がノックオン。関東学院は自陣22m内のスクラムからタッチキックを蹴らずにオ
ープン展開を試みる。このあたりは意思統一もしっかりしており、確実にゲインを
稼ぎブレイクダウンのところで流経大に反則という形で優位に試合を運ぶ。流経大
はイシレリにボールを持たせて前進を図る作戦だが、ここは関東学院も十分対策を
錬っている。確かにボールは前に運ばれるものの、テンポよく攻めることができな
い。司令塔が本日初スタメンということも影響しているのだろうか。

関東学院がやや優位に試合を進める中で27分、関東学院に追加点が生まれる。敵
陣10m/22mでのラインアウトからは素速くオープンに展開してWTBで取る
のが関東学院のトライパターンのひとつ。しかしながら、ここではショートサイド
に回り込んだWTB小林にボールが渡り、小林が快足を飛ばして一気にゴールライ
ンを超えた。決め所でしっかりトライが取れるところは流石といえる。

前半も終盤に差し掛かった30分過ぎからはようやくエンジンのかかってきた流経
大が攻め続ける時間帯となる。だが、関東学院も厳しいディフェンスで対抗。イシ
レリのようなパワフルなFW選手に対してはダブルタックルで確実にボールを殺し、
BK選手に対しては低いタックルを浴びせる。ブレイクダウンの攻防で優位に立て
るのも相手を確実に倒すことができるから。40分には自陣ゴール前でのスクラム
から効果的なキック2本で一気に流経大ゴールに迫り、流経大は辛くもキャリーバ
ック。続くスクラムのチャンスはターンオーバーを喫してしまうが、関東学院の想
定を超える健闘により流経大はノートライに押さえ込まれ、前半は12−0での折
り返しとなった。

[後半の戦い]

後半はネジを巻き直した流経大がキックオフからラッシュをかける。開始からほぼ
10分間、関東学院は自陣ゴールを背にしてひたすら流経大の強力なFWの圧力に
耐える展開となる。ラインアウトから得意のモールでゴールライン突破を目指す流
経大に対し、関東学院も巧みなモールディフェンスでパワーの分散を図る。ゴール
前ラックでボールが停滞したところで流経大は展開を試みるが、結果的にボールを
後ろに交替させるだけで手詰まり間を快勝することはできない。まるで、関東学院
の懐の深いディフェンスにFWで攻めさせられているような印象。もちろん、そん
な意図はないにしても、関東学院の術中に填ってしまった感がある。

さて、前半2分に時計を戻すが、流経大のSOは先発の桜庭が負傷したためオペテ
ィに交替。前節のテストが思わぬ形で役立つ形となったのだが、やはりBKライン
のぎくしゃく感はすぐには解消されない。もちろんこれはオペティの能力に問題が
あるわけではなく、彼を急造SOにしたことの結果。1年のブランクを経てイシレ
リと一瞬見間違うくらいに大きくなったオペティだが、パスを出すのではなく、受
ける立場のCTBだったら相手にとっては脅威が増すことだろう。速さはなくても
テンポ良くボールを動かすラグビーを指向する流経大にとって、昨シーズン大活躍
したの宮脇の例を挙げるまでもなく、HB団は重要な役割を担っている。ゲーム終
盤はオペティを飛ばす形でのオープン展開が機能した格好だった。

それはさておき、流経大が取り切れないところで関東学院に待望の追加点が生まれ
る。10分、自陣10m/22m付近でのラインアウトから素速くオープンに展開
し右サイドでラック。ここからパスがタイミング良く走り込んできたSO楢崎に渡
り、楢崎はそのまま流経大DFをかわして60m以上を走りきってゴールラインま
で到達してしまう。攻め込んでいた流経大にとって、この一瞬の隙を突かれたよう
な失点は少なからずショックだったに違いない。

19点のビハインドとお尻に火が付いた形の流経大のアタックはヒートアップする。
序盤と同じように関東学院が流経大FWのアタックにひたすら耐える展開が続く。
そして18分、関東学院陣22m内に流経大がボールを運んだところで長いホイッ
スルが鳴る。関東学院の反則と誰もが思ったのだが、主審は流経大のイシレリを呼
んでレッドカードを提示した。危険なプレー(スタンピング)での一発退場は追撃
態勢を強めたい流経大にとっては大きな誤算。

関東学院は流経大の動揺につけ込む形で追加点を挙げる。ラインアウトを起点とし
てキックを使って流経大陣22m内へ前進。ここから流経大はカウンターアタック
を試みるが、関東学院はインターセプトに成功して前進しラック。ボールはオープ
ンに展開されて最後はこの日初スタメンとなるFB杉町がゴールラインを越えた。
関東学院らしい繋ぎと状況判断が主役されたようなトライでリードは24点に拡が
る。振り返ってみれば、レッドカードからの一連の流れを観ても試合の流れを決定
づけた得点と言ってよさそうだ。

攻撃の核を失い14人での戦いを強いられることになってしまったが、ある種の開
き直りもあってか流経大のアタックが俄然機能するようになってきた。ボールが力
強く大きく動くラグビーこそ流経大の指向している形。イシレリのパワフルな突進
は魅力ではあっても、ボールを動かすテンポが遅くしてしまうきらいがある。流経
大には2、3列にタイプが異なるランナーが揃っているだけに、彼らを連携させて
個人ではなく組織でボールを動かす方が断然いい。と、ここで展開されている攻撃
を観てそう思った。30分のLO小野寺のトライはそんな「流経大らしい形」から
生まれたもの。

しかし、いかんせん遅すぎた。また、せっかくの初得点の後にすぐさま関東学院の
反撃を許してしまったことが惜しまれる。リスタートからさらに追加点を狙う流経
大が連続攻撃からHWL付近まで到達。ここで関東学院のCTB清水がインターセ
プトに成功し、ボールはトライゲッターの小林へ。相手のミス(あるいは心のちょ
っとした隙間)につけ込む試合巧者の関東学院を彷彿とさせるノーホイッスルトラ
イにより勝敗は完全に決した。

敗色濃厚でもこのままでは終われない流経大が最後に意地を見せる。40分、自陣
スクラムからパスを受けたオペティが関東学院ゴールに向かってロングキック。W
TB小澤がゴール前でボールの捕獲に成功しゴールラインを越えた。最初からオペ
ティをSOとしてチーム作っていたらと思わせるプレーではあった。相手陣に居た
時間も攻めている時間もおそらく流経大の方が長かったはず。しかしながら、関東
学院の切れ味鋭いアタックの前に思わぬ大差が付く試合となってしまった。

ひとことでこの試合を総括するなら、普段通りの戦いができ、そこに勝利への執念
と言ったプラス要素が加わった関東学院に対し、普段自分たちが取り組んでいるラ
グビーができずに気迫が空回りしてしまった流経大といったところになるだろうか。
そしてもうひとつ。関東学院の勝因は気迫のこもった粘り強いタックルを80分間
通して続けられたこと。この試合でもっとも印象に残っているのはそんなひたむき
なタックルシーンの数々だ。

[試合後の感想]

シーズン前は覇権奪回どころか上位キープも危ぶまれるような状態だった関東学院。
しかしながら、ここに来て優勝候補の最右翼というところまでチーム力が上がって
きた。大東大に敗れてはいるが、本日の勝利が大きく、東海大と中央大を破れば優
勝できる。かつての強豪チームの面影は完全に消えたが、新たな形で強力なチーム
が再生したと言っていいだろう。タレントは居なくても15人の力を結集させるこ
とで難敵を打ち破ることもできる。大学選手権を見据えて、今シーズンの関東学院
にはそんなラグビーで旋風を巻き起こしてくれることを期待したい。

またしても肝心な戦いで力を発揮できなかった流経大。FWに拘らずにオープンに
展開していくラグビーの完成、そして悲願達成を期待していただけに残念な結果に
終わってしまった。BK陣の主力に負傷者が多いことが響いた形。だが、これはイ
シレリの退場後でも思ったことだが、流経大のアタックでは彼の存在が必ずしもプ
ラスになっていないような気がする。FW8人のまとまりでボールを前に動かして
いい形でBKラインに展開しWTBで取る、というラグビーを指向する上で今一度
考え直して欲しい部分。特別な試合でも普段着のラグビーができるようになること
がやはりこのチームには必要。優勝戦線からは一歩後退したことは否めないが、諦
めずに頑張って欲しい。                  (2011年11月3日記)

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