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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 2011

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東海大学 vs 関東学院大学 (2011.11.06−観戦記録)

東海大が苦しみながらも5連覇に大きく前進、追い詰めた関東学院に拍手!

[キックオフ前の雑感]

どうしても昨シーズンと比較されてしまう東海大。予想通り、ここまで5戦の戦い
ぶからは(主に数字からの判断だが)相手を圧倒できていないように感じられる。
でも、気になるのはそういった戦力ダウン(?)よりもチームのモチベーション。
元もと潜在能力が高い選手達が揃っているので、FWを中心に経験値が上がってい
けば急成長を遂げてトップが狙えるチームになる可能性もあるのだ。メンバーも試
行錯誤を重ねながらほぼ固まってきており、流経大を破り覇権奪還に向けて意気上
がる関東学院を相手にどこまで進化を見せてくれるだろうか。

一方の関東学院は、シーズン当初は東海大以上に戦力ダウンすることが心配されて
いた。とくに不安材料はBKラインの核となる両CTBが卒業したこと。プレシー
ズンでは計算できるFW中心の戦いできたことも頷ける。ただ、今シーズンの関東
学院は危機感をバネにした意識改革に成功し、15人の一体感を武器に戦うチーム
へと変貌を遂げている。そして、先日の法政や流経大との戦いでは、本来目指して
いる形と思われるオープン展開指向でトライが取れるチームへのステップアップに
成功。地力では東海大の方が優位に立っていることは否めないものの、試合巧者だ
けに好勝負が期待できる。

[前半の戦い]

関東学院のキックオフで試合開始。入りが良くない東海大は今日も健全?だった。
マイボールにすべきボールを混沌とした状態の中で関東学院に奪われ、いきなりピ
ンチに陥る。切り返しの判断が速い関東学院が早速本領発揮で、オープン展開で一
気に東海大ゴールに迫る。

東海大は自陣ラインアウトからキックで陣地を挽回しピンチを逃れたかに見えた。
しかしながら、関東学院がカウンターアタックからLO後藤が大きく前に前進しラ
ックからオープン展開で連続攻撃を仕掛ける。この電光石火の早業でCTB関口が
東海大ゴールを超え、関東学院が開始僅か2分で5点を先制した。出足でやや集中
を欠いた感がある東海大だったとはいえ、関東学院らしさが出た見事な先制パンチ
だった。やはり、関東学院はBKのフロントスリーが安定してきたことが大きいと
思う。決定力のある両WTBにいい形でボールを渡せば得点に繋がる確率が高いこ
とが安心感を与えているのかも知れない。

ここで、東海大も目を覚ます。FW、BKとも胸板の厚さが証明するように関東学
院よりもパワフル。5分、関東学院陣22m付近のラインアウトからモールで前進
しラックを経てオープンに展開。CTB三坂が惜しくもゴールを目前にしてタック
ルに遭いノックオンを犯すが、スピードに乗った力強いオープン展開は東海大の信
条とするところ。今シーズンの東海大の戦い方はおそらくこの形というものが見え
たアタックだった。

勢いの出てきた東海大のアタックのプレッシャーが増す中、関東学院は自陣22m
からなかなか脱出できない状況となる。しかしながら、東海大はなかなか関東学院
の身体を張った防御を前にゴールラインを越えることができない。やはり、FW中
心になってしまうと東海大の持ち味であるスピードが活きなくなってしまう。東海
大がボール支配を続けるものの膠着状態となった12分、東海大はゴール正面25
m付近の位置でPKのチャンスを得る。ここは、攻めあぐみ状態だったこともあり
確実に3点を選択し、東海大はビハインドを2点に縮めた。

ここから両チームによる激しい攻防が展開される白熱した好ゲームが展開される。
18分には関東学院のPR田中主将が負傷退場し岡と交替するなど、とくにFW戦
が熾烈を極める状況。そんな中で20分、東海大は関東学院陣22m付近のライン
アウトを起点として素速く攻め、SHからいったんWTB小原がパスをもらってゲ
インしオープンに展開。パスがきれいに10→12→15→11と渡り、WTB宮
田が一気にゴールラインを越えた。GKは失敗したが10−5と東海大が逆転に成
功する。小原は1年生ながら既にエースの風格を持つ選手になっている。

このトライで東海大の攻撃はさらにパワーアップ。24分、関東学院陣10m付近
のスクラムから8→9でショートサイドを突きラックからオープンに展開。LO三
上がタテ突破を図ってゴールラインまであと一歩の所まで迫るもののノットリリー
スの反則。自陣からでもオープン展開でボールを前に運棒とする関東学院に対し、
SO佐藤のキックで敵陣に入ってから勝負といった形で対照的なスタイルで戦う両
チームだが、基本的にはオープン展開指向。ボールが大きく動く攻防が続く中で時
計はどんどん進んでいく。

結局、前半はそのまま東海大が5点をリードして終了。ゲームを支配しながらもF
Wで攻めきれない東海大に対し、執拗なタックルと切り返しからの素速い展開で決
定力のある両WTBが機能していた関東学院といった形で、後半への期待も膨らむ
大一番となった。

[後半の戦い]

後半はキックオフから東海大が関東学院に激しいプレッシャーをかけ、関東学院が
反則。ゴール正面のPGをSO佐藤が決めて東海大が13−5とリードを8点に拡
げる。勢いから見て東海大がこのまま得点を重ねるかと思われたのも束の間、関東
学院のキックオフに対して東海大がオープン展開を仕掛けるもののパスミスがあり、
パスを受けたWTB小林がぐんぐん加速して東海大DFを置き去りにしてゴールラ
インを越える。GKは失敗するが関東学院のビハインドは2点に縮まり、逆転は時
間の問題と思われる状況となってきた。

続くキックオフ、関東学院が攻勢に出たところで東海大選手がボールのスティール
に成功し一気に関東学院陣へ。関東学院がノットリリースの反則を犯したところで
PKのチャンスを得るがタッチインゴールの痛いミスが出てしまう。8分のPGも
外して東海大はなかなか追加点を奪えない。そして8分、関東学院は自陣10m手
前でのスクラムを起点とした8→9攻撃からショートサイドを付いた後オープンに
展開。CTB関口がラインブレイクに成功して12→ライン参加したFBを経てボ
ールは絶対的なエースに成長した小林に渡る。小林は前に立ちはだかるDFを絶妙
なステップワークで抜き真っ直ぐゴールへ。15−13と遂に関東学院は逆転に成
功した。

さらに15分、関東学院は東海大陣22m付近でのラインアウトからオープンに展
開。ループパスを受けたSO楢崎が東海大ゴールに向けて絶妙のグラバーキックを
蹴り、東海大選手に競り勝ったWTB渡邊が巧くボールを確保してトライに成功す
る。遠目にはノックオンにも見えたプレーだったが、東海大選手が後ろに弾いたボ
ールに対してうまく身体を入れて回り込む形で(ノックオンをせずに)グラウンデ
ィングに成功する際どいプレーだった。この試合で初めてキッカーを務めた小林が
GKを成功させ、関東学院のリードは一気に9点まで拡がった。

完全に波に乗った関東学院。覇権奪還への道程が開けてと思われたが、キックオフ
で痛恨のオブストラクション。何でもない偶発的な反則だったが、結果的にこのミ
スは痛かった。ここから東海大に反撃を許すことになる。23分、東海大は関東学
院大22m手前で得たラインアウトのチャンスから素速くオープンに展開。ライン
参加したFB高平が関東学院のDFを振り切りゴールラインに到達。GKは失敗し
たが22−18と関東学院のリードは4点に縮まる。

東海大は20分にも関東学院22m付近でラインアウトのチャンス。ここもモール
は作らずにオープンに展開し、ライン参加したPR阿部がペネトレータ役を果たす
形でボールを力強く前に進める。関東学院は東海大のスピーディなオープン攻撃に
後退を強いられ、ゴール前までボールが運ばれたところで東海大BKが完全なオー
バーラップ状態となる。SH那須がそのままオープンに展開してもトライだったが、
外にドリフトした関東学院選手をあざ笑うかのように内側ステップを切って難なく
ゴール中央に飛び込んだ。GK成功で25−22と東海大が再逆転に成功する。

東海大が再逆転に成功したところで残り時間は17分余り。まだまだ関東学院にも
再々逆転のための時間は残されている。ここから加点をして逃げ切りたい東海大と
1トライで手が届く関東学院の間の死力を尽くした攻防が繰り広げられる。両チー
ム関係者も手に汗握る展開となった中、どちらも得点のチャンスを掴むことができ
ずどんどん時計が進んでいく。ただ、FW戦で消耗を強いられた関東学院に疲れが
出てきたのか、関東学院は残り10分となった時間帯でもなかなか自陣から脱出す
ることができない。そして遂にタイムアップ。大一番は最後まで目が離せない緊迫
した状態のままノーサイドとなった。

[試合後の感想]

戦前の予想を翻すと言っては失礼かも知れないが、関東学院の大健闘が強く印象に
残る試合だった。とくに素晴らしかったのがFW、BKを問わず身体を張って相手
を確実に止め続けたタックル。東海大のタックルがやや高く、関東学院に前進を許
す場面が多かったのとは対照的だった。また、切り札の両WTBにボールを渡すま
でのプロセスも「らしさ」が出ていて素晴らしい。FWでは牽引役としてボールを
前に運び続けたLO後藤の活躍が光る。前々から「横走り」の多さは気になってい
たものの、中核選手としての自覚にもとづく闘志溢れるプレーは関東学院選手に多
くの勇気を与えたはずだ。

残念ながら覇権奪回のチャンスは消えてしまったものの、大学選手権の舞台では、
意識改革に成功した関東学院のしぶとさと巧さが対戦校を苦しめることになるかも
知れない。既にチームは完成しており、チームとしての一体感も近年では感じられ
なかったくらいに感じられる。今後はさらに戦術に磨きをかけて欲しいところだ。

戦前の予想を翻す戦いを見せてくれたのは東海大も同じ。昨シーズンのように何で
も出来てしまうが故に、結局肝心な試合で勝利のための方程式を完成できなかった
チームとは違い、BK展開でテンポ良くスピーディに攻めて取るという形でほぼチ
ームコンセプトが固まったのではないだろうか。あと、ひとつ感じられたことはF
Wの選手の活かし方。東海大のFW選手はBKラインに入っても違和感なくプレー
できるのが強みだが、PR阿部やFL石上のように絶妙に位置取りとタイミングで
ボールをもらって前進するというオプションも加わり面白さが増した感じ。とくに
PR阿部が浅い位置でボールをもらうプレーはDF側の脅威になりそうだ。

あと、東海大で感じたのはいい意味での監督離れ。過去のチームを観ていると、ど
うも「あとで何を言われるか」を気にかけたようなプレーが散見された。また、精
神面での脆さを露呈することが多かった。そういったチームを観てきたことを思う
と、後半、関東学院優勢にゲームが流れていった中でも冷静さを失わずに再逆転に
成功したところに、このチームの精神的な成長を感じたのだ。東海大はメンバーや
戦術がほぼ固まり、故障者が復帰しつつあるといった明るい材料もある。これから
チームをさらに熟成させていって欲しい。どうしても対抗戦の5強の戦いぶりが気
になる中、両チームの戦いぶりを観て僅かだが安心感を取り戻すことができたこと
がこの試合を観た最大の収穫かも知れない。        (2011年11月13日記)

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