音楽ゆかりの地をゆく



うわさのブルー・ノートへ
NYで体験したかったことのひとつ..本場のジャズを聞くこと。幸運なことに、ジャズクラブの代名詞的存在の「ブル−・ノ−ト」のチケットを準備してくれていた。
迎えの車のドライバ−が、「いい日に予約がとれて良かったですね!」と言う。他に予定があるので、その夜をジャズにした程度だったのに..「ウッド・ベ−スのロン・カ−タ−が出演する日です。席が空いていれば、私も聴きたいですよ!」偶然とはいえ、いい気分で店内に入った。想像していたより狭く、人気ミュ−ジシャンが出る日は、隣どうしの肩がぶつかるくらいだった。我々はショ−タイム前に夕食を摂るつもりで、早めに入ったので、ステ−ジがよく見える席を確保できた。
門外の私でさえ名前を聞いたことがあるRON CARTER...どんな人だろう?どんな演奏をするんだろう?ブル−・ノ−ト初体験の夜は、これまで出会ったことのない客層と共に、全身にズン.ズン.ズン.という、重厚なビ−トを浴びた。 大きなベ−スを恋人のように軽く支えて立つ彼は、長身でダンディなおじ様..(今や、大御所でモ−ド・ジャズが台頭した時期の60年代から、名をはせていたというから、おじい様かも!)
先に女性ヴォ−カルのステ−ジがあり、ト−クも入れ楽しいム−ドを醸しだし、彼女のファンも多かったと思う。歌う者として、独特の咽の強さと、声でのアドリブに純粋に感動した。
このステ−ジでは気楽にジャズを楽しんでいたような客達も、ロン・カ−タ−が登場すると、息を詰めたように静かになり、演奏の前の一挙一動さえ見守っているようだった。そこに立つだけで、風格があり絵になるのだ。おもむろにベ−スのイントロが始まり、序々に他のメンバ−が入り、彼の自由な世界へと導く。(彼のカルテットは、ピアノ.ドラム.ギタ−.が加わる)
9時にスタ−トし、1時間以上、演奏し続けたが、その間、一言も発しない。メンバ−全体が余分なアクションも無く、静かで紳士。エネルギ−は全て音に託すから、感じてくれ!...って私には伝わった。
満席であろうと、誰も聞いていまいと、ロン・カ−タ−は、動じることなく、自分の世界に浸るのだろう。あの、目を閉じ愛おしいようにベ−スを奏でる姿に、それを確信した。自分の世界を確立したア−ティストは誰をも、惹きつけるオ−ラがあることを再認識した。いいな−!(2003年.11月2日..私のジャズ記念日になった。)