ソット・ヴォーチェ



中国ピアノ事情@
私は2001年2月と2002年9月、日中文化交流団の一員として中国に行く機会に恵まれました。
最初の年は、南京公演と上海でした。国立江蘇省戯劇学校(日本の芸大のようなところ)を視察し、その後、中国国立江蘇省紫金大劇院(江蘇省地方の最も大きなホ−ル)で友好交流公演が開催されました。
日本側が先に出演し、後半に戯劇学校から選ばれた優秀な学生達が出演するという形式でした。
とにかく、到着して驚いたことですが、この素晴らしく、立派なホ−ルにピアノが無いと言うのです!
「エッ!日本にいる時、聞いていませんでしたよ。ピアノが無くて、歌える訳がありません!それに、何のためにピアニストが同行したのか分からないじゃありませんか?!」..
私は、あまりに思いがけない状況に怒りの口調だったと思います。ピアノを使うのは私だけではなく、合唱団も行きましたので、そのピアニストも伴奏をしなくてはいけません。
団長と中国側の責任者が話し合い、戯劇学校からホ−ルへピアノを運んでくれることになりました。
これだけのホ−ルにピアノが無いのも不思議でしたが、事前にプログラムの内容を送ってあり、当日用に印刷されたプログラムには、私の紹介とピアノ伴奏者がしっかり載っているのに、「ピアノを準備しよう..」と思わないのも不思議でなりませんでした!
この国ではレンタルピアノや楽器運搬業など無く、学校の先生達で運ぶのですから、小さなアプライトピアノでした。
大きなステ−ジにチョコンとアプライト..客席に背中を向けて演奏するピアニストがかわいそうでしたが、何とか、中国まで行った目的を果たすことができました。
かの南京の地で歌うのは不安ではありましたが、会場の皆様から暖かい拍手を頂き感激しました。中国側からもソプラノ(学校の先生)が歌うことになっていましたので、伴奏はどうするのか興味深く待っていると...一人で登場。
ピアノも他の楽器奏者も出てきませんが、おじぎをしました。そして、会場のスピ−カ−から前奏が流れました!
そう。ナマの伴奏では無く、声楽もカラオケで歌うのです。ピアノが無くてもいいことは解りました。でも、これだけ立派なホ−ルでピアノの演奏会はないのでしょうか?やっぱり謎でした。
 この年の交流団は、声楽、合唱以外は、伝統芸能(邦楽関係)の諸先輩の皆様でした。その中で若輩者の私が、出演者代表として、開演前にスピ−チをさせて頂きましたので、記念の、そのスピ−チを紹介します。(数行ごとに、通訳が入る形式でした。)

        <中日友好交流公演に際して>

中国国立江蘇省戯劇学校の皆様、この度は中日友好交流公演にあたり、このような素晴らしいホ−ルを準備して下さり有り難うございました。また、南京の皆様の熱烈な歓迎に、一同、心より感激いたしております。間もなく、交流公演が始まりますが、21世紀を担う方達の幅広い内容のプログラムを拝見し、期待に胸が高鳴っております。
私共も日本の伝統芸能や、それぞれの専門分野を、皆様の心にお届けできますよう
精一杯、努めたいと思います。”芸術文化”という共通の花をステ−ジに咲かせ合うことで、両国間の友好が深まり、新世紀は平和でありますよう祈り、私のご挨拶とさせて頂きます。謝々!
       日中伝統芸能文化交流団 顧問.声楽家 吉元恵子
                         2001年2月28日

   
                 中国のソプラノ歌手