ソット・ヴォーチェ



白神山地と深浦のうたごえ
 2005年10月8日(土)〜10日(月.祭)森のフクロウツアー『白神山地と深浦のうたごえ』がありました。
この企画は森のフクロウ氏(以下M氏と略)が、うたごえリーダーとなり青森県の深浦に“うたごえ喫茶”を出前するというもので、3年目になると聞きました。
日頃、うたごえ喫茶「カチューシャ」に音楽スタッフとして関わってはいるものの、このようなツアーに参加するなど夢にも思っていませんでしたが、何と2泊で行ってきました...。

 【事の発端】

 ある日、M氏が突然カチューシャへ現れ、「世界遺産の白神山地へ遊びに行かない?」と始まりました。??..「秋はコンサートシーズン、遊んでる暇は無いわ。それに土曜日のカチューシャは休めないし..」
これ以上のハッキリした断り方は無いと思われるのですが、M氏は動じません!
「紅葉も綺麗だし、不老不死の温泉等もあり...世界遺産は行っておいた方が..」等々。私は「世界遺産」という言葉に弱いので、心が揺れ始めました。
しかし?このM氏が、単なる観光として誘う訳がありません!(私も、ただの観光なら、他の大手の旅行社のツアーに参加した方が気が楽です。)じわりじわりと、M氏が私に会いに来た理由が解ってきました。
深浦での“うたごえ喫茶”にゲスト歌手として参加して欲しいとのこと...白神山地の話の後で、「ついでに、深浦の途中の秋田で、ひとつ公演をしてから..」が加えられました。
「巧い!!」...M氏の話術は以上のようなものでした。
ピアノ伴奏者問題や移動方法等、話し合いの余地はありましたが、結果的にカルメンは、ホセでもなく、闘牛士でもなく、頭のいい(?)フクロウに墜ちたのでした!!

【出発〜秋田】

 私がこのツアーのゲストとして行く決心をしてから、カチューシャの常連さんや、知人等にツアーのパンフレットを配布し、参加者を募りました。
嬉しいことに、いつもコンサートの声援をして下さる方々が、10人以上も申し込んでくれました。
日頃、親しくして頂いている皆様と美しい自然を愛でつつ、歌う喜びも分かち合えると想い、面白い企画だと思えるようになっていましたが、現実は甘くありませんでした。
長距離のバスでは、疲れて声が出ないと判断しました。修学旅行のように皆さんとバスで楽しむことは諦め、私は一人、早朝、新幹線で秋田へ向かいました。
到着して昼食を摂る間もなく、すぐ現地のピアニストと伴奏合わせです。初めて会う秋田合唱団の指導者が、このツアー(2ステージ)の伴奏者でした。3時の本番まで、二人の息が合うようにしなければいけないのですから、大変な経験でした。
 秋田市土崎港.海の見えるお洒落なスペースでした!
秋田合唱団の強力なバックアップのもと、温かく和やかな“うたごえ喫茶”が実現しました。
この合唱団は定期的に“うたごえ喫茶”を主催しているとのことで、運営がスムーズで、団員たちが観客に自然に溶け込むことも心得ていました。
私のソロステージでは、皆さん集中して聴いて下さり、暖かい拍手を贈って下さいました。
ほんものの(?)メリーウィドウにも会えました。
即興で書いた詩をプレゼントして下さったキーボーさん、有り難うございました!最初に“吉元恵子さんの歌に触発されて”と記してありました。
私の歌が多少なりとも人の心を動かしたとしたら、それだけで、はるばる行った甲斐がありました。嬉しい限りです!
 その夜、私は近くのホテルに宿泊し、翌日に備え、ゆっくり休ませてもらいました。M氏とバンドの皆さんは、片づけが終わり、休む間もなく車で、深浦に向かいました。お疲れ様でした!(その頃、ツアーのバスは渋滞に遭い、遅くまで東北自動車道を走っていたそうです)

【初めて訪れる深浦】

 10/9(日)朝食が済むと、秋田合唱団のTさん夫妻がホテルに迎えに来てくれました。
車でピアニストと合唱団のメンバー数人が同行し、“深浦のうたごえ”に向かうことになっていました。
秋晴れの良い日に恵まれ、途中の道の駅等で旅情を味わいました。
日本海を眺めながらのドライブは快適で、後に本番が無ければどんなにいいか!って思ったのはきっと、私とピアニストでしょう。
深浦に近づくにつれ、現実が待っています。悲しいかな..演奏家は本番を前に、他が見えなくなってきます。それでも皆さんの手前、必死に喋り、神経質に見えないよう努力もします。私のキャラクターになってしまっているので、今更「私は声楽家ざーます」なんて気取ったり、黙りこくったりはできないのです。
結局、昼食時にバスツアーの皆さんと合流した時は、観光客に成りきり、はしゃぎました。
みんな午前の部の観光と散策を終え、きれいな空気を吸ったせいか生き生きした表情でした。いつも会っている人たちと、遠くの地で会うと新鮮なものを覚え、大げさに思えるほど再会を喜び合いました。
昼食とその後の記念写真撮影...私の楽しみは束の間でした。ツアーメンバーは午後の観光と、温泉に向かうバスに乗りましたが、私は夕刻からのコンサートを控え、発声やリハーサルです。(皆さんが向かった温泉は、最初、M氏に誘惑された『不老不死温泉』です。結局、私は入れない日程ではありませんか!)

 “うたごえ”の会場は深浦公民館ですが、まずは主催者のbunbunさん宅にお邪魔し、練習をさせて頂くことになっていたので、そちらまでTさんの車で送ってもらいました。
「こんにちは〜初めまして、よろしくお願いします」と握手。bunbunさん、bunママさん共に、写真で拝見していたので初めて..という気はしませんでした。
出たー!本物の深浦弁。純粋な“原語”は心地良く響き、暖かく楽しいご夫妻とは、ず〜っと前から知り合いだったように打ち解けることができました。
この日の“うたごえ”の為に、大変な努力の日々だったことと察しました。
私たちがピアノを貸して頂き練習を始めた時には、ご夫妻は準備のため会場に向かいました。
ひろーいお宅で驚きました。家を出るとすぐ海が見えます。近所が一軒しかないので、そちらに「お騒がせします」と挨拶をしたそうで...もう、窓を開けたまま、のびのびと大きな声で歌いました。伴奏合わせ後、打ち上げの場所になるであろうその広々としたスペースに、大の字で寝ころんでみました。(ピアニストも一緒です。bunbunさんにはナイショ!)その時、思いました。
ここまで来て、白神山地は見られない.不老不死の湯で若さを保つことは出来ない...「まぁ、いいかっ!!自分のふるさとへでも帰ってきたような思いを味わうことができたんだもの!」
深浦公民館に集まる皆様に、楽しくて、良い思い出ができるよう、精一杯歌い、今回は歌い手に徹しようと自分に言い聞かせたひとときでした。

♪深浦中央公民館にて17:00〜「深浦のうたごえ&吉元恵子ミニコンサート」

 会場の皆様との“うたごえタイム”に挟まれ、私のコンサートのプログラムは「歌の翼に乗って世界の旅へ!」でした。
ウィーンのコーナーでワルツのお相手をして下さったジェントルマン、私の歌に涙して下さったという方々には有り難い思いでいっぱいです。
当日の詳細は、bunbunさんのホームページとエーちゃんのホームページで詳しく紹介してありますので、私は忘れないよう、ここまでに到る課程と感想を記してみました。
 皮肉ではなく、M氏には感謝します。世界遺産の地まで行きながら、おあずけになりましたが、大自然は逃げていきません。いつかまたチャンスがあると信じます。
でも人と人の縁はタイミングを逃してはいけない気がします。
東京から出発した皆さん、秋田で出会った皆さん、深浦の皆さん、この全ての方達と交流が持てたのは、あのタイミングだからこそ!と思えてなりません。個性的な方、愉快な方、懐かしい方、旅のお陰で深く知ることができた方、新しい出会いetc.ただただ感謝です!そして、ジャンルを越えてみんなを結びつけてくれた“歌”に、最高の感謝状を贈りたいと思います。
『2005年秋』は、私の心のページにしっかりと刻まれました。皆さん、有り難うございました!(ハンドルネーム:カルメンでした。) 

★P.S 打ち上げの夜は、bunbun様宅に泊めて頂きアットホームな一夜を過ごさせて頂いたことを記しておきます。
そして翌朝、深浦からの帰りは、皆さんと同じバスに乗り、窓越しに、深まりゆく“北国の秋”を満喫し、観光気分を味わうことができました。
それにしても、バスのメンバーは、東京まで歌いっぱなし...こんなツアーは世界中のどこにも無いでしょう!!
どんな人たちが乗っていたのか?「顔が見たい」と思う人も多いことでしょう。
運転手さんもホントにお疲れ様でした!

http://bunbun.boo.jp/  (bunbunさんのホームページ)
http://utagoekissa.web.infoseek.co.jp/  (エーちゃんのホームページ)