ソット・ヴォーチェ



楽屋の話あれこれ@
音楽を愛する聴衆に、あまり裏話を公開するのも考えものですが...ここは「ソット・ヴォ−チェ」です。長年、心にたまっていたあれこれを掃き出して、スッキリすることにしました。

♪ ピアノ室を独り占めする人種

「サントリ−ホ−ル」..この会場の楽屋には、ピアノが置いてある部屋もあります。大体、リサイタルの場合は一人なのでここを楽屋として使わせてもらえ、出番直前まで存分に音出しができます。しかしジョイントコンサ−トの場合は、出演者が複数になるので、控え室として大きな部屋を皆で使用し、ピアノのある個室は、順番に使うことが常です。 先日もその形式でした。(「その筈でした」..の方が正確!)
ピアノの部屋に入り、出て来ない人がいたのです。出番が最後というのに、最初から最後まで籠もりっきりで、ア〜ア〜.発声練習をしているではありませんか!
だいぶ前にも、ピアノのソリストでそんな人がいました。その時は出番直前の演奏者が、「ちょっと、貸して下さいませんか?」とお願いしたのです。それなのに!!「一曲終わるまで待って..」と言いながら練習し続けるのです。ご想像通りです。弾き終わるのを待っていたら、その人は出番に間に合いません。ちょっと指を動かして安心して、演奏に臨みたかった人の気持ちはよく解ります!あきらめて、ステ−ジに向かう彼女の後ろ姿を見、ついに私は切れました!「ねぇ、ここは練習室ではないのよ。本番前に少し音出しをするだけの所なの。他にも出演者が居るのに、どうして全曲弾くんですか?」と言ってしまいました。返ってきたセリフがまた呆れました。「最初から、何分と決めてくれればよかったのに..」そんな問題では無いのです。周りの状況を判断する能力と、思いやりに欠ける人種とは同じステ−ジに立ちたくない!と思ったものでした。何よりも自分の出番前に、くだらないエネルギ−を使わなければいけなかったことが悔しかったことも忘れられません。そしてこの度、久々にあの時と同じ人種を見ることになりました。
状況が違うのは、控え室の隣から歌声が聞こえているのに気がつかない出演者が多かったことです。なぜなら最近の楽屋の特徴ですが、皆、自分の演奏の録音をイヤホンで聞き、自分の世界に入っているのです。そして、隣にピアノがあることを知らない新人が多かったのです。私の出番が、2部であればきっと隣のドアをノックし「私にも発声をさせて下さい」と言ったと思いますが、実際、着替えとメ−キャップで余裕が無かったので、とうとうピアノのある部屋には入りませんでした。そんな訳で、その歌い手は女王様のごとく、一晩、個室を占領したのです!正義感(?)の強いこの私..このまま引き下がったと思います?..いいえ。カ−テンコ−ルで舞台の袖に集まった時、しっかりと言わせて頂きました。「初めまして!控え室でお目にかかれませんでしたので、挨拶が最後になりました。本番直前まであんなに練習して、すごいパワ−ですね!今日は、他にピアノ室を使いたい人が居なくて良かったですね!」「......」苦笑いで何も言えず。そして私のセリフを聞いていた周りの一人が「エッ!あの部屋はピアノがあったんですか?どうして教えてくれなかったんですか?!」...(独り占めした人が、控え室に顔を出し「どなたか使いますか?」..とか何とか言うのが当たり前!と私は思うのですが・・)
スッキリしました!コンサ−トって、自分の演奏だけ良ければいいのではないのです。
良い気持ちで臨むためには、楽屋のム−ドも大切です。ついでに辛口で言わせて頂くと、自分のことしか考えられない人の演奏は、聴かなくても分かるような気がします!    

     
サントリーホール楽屋にて            正面パイプオルゴール