音楽ゆかりの地をゆく



メトロポリタン美術館 
巨大美術館メトは、増改築を重ねて、巨大だけではなく複雑。ざっと観るだけで丸一日。じっくり観ると、2.3日でも足りないほどと言う。
ラッキ−なことに、案内をして下さった方は、ニュ−ヨ−ク在住の画家、富永隼人氏。
観光客用のお決まりのガイドでは無く、ア−ティストの立場での案内で、楽しく話が弾んだ。(彼の主観もかなり感じたが、私とフィ−リングが合ったと思う)
まずは、一日のコ−スを、通い詰めた彼のキャリアを駆使して半日程度にまとめて頂く。迷わなければ、見所をその時間に収められるらしい。
ここで、このタイトルをなぜ「音楽ゆかりの地...」に入れたのか、おことわりを。
10年以上も前だが、NHKみんなのうたで「メトロポリタンミュ−ジアム」というおもしろい歌があった。(ご存知の方もいると思う)作者はきっと、メトに行ったのだと思う。
ヨ−ロッパの美術館では、エジプト美術の神殿やファラオなどにはお目にかかれないから、この歌を聴き、メトロポリタン美術館というものが、見当もつかず、大いに興味がわいた。
そして、作者の個性的なセンスに感動したものだった。  (作詞.作曲 :大貫妙子)

私のメトロポリタン美術館への思いは、この歌とともにあったので、私にとっては「音楽ゆかりの地」という訳だ。
数年前、この美術館のコレクションを、渋谷Bunkamuraで観たが、もちろん、絵画だけだった。
N.Yのメト..歌詞の中に、「美術館の中には夜になると冷えるので、天使の像に赤い靴下を片方あげる」という内容があったのを思い出し、ロダンの彫刻の前でそっと囁いてみた。「靴下、片方しかないのは貴方?黒でよければ、もう片方、あげるよ!」エジプトでは、もしかして、ファラオが目覚めてないかな?とのぞいてみた。
19世紀ヨ−ロッパ絵画では、どの絵の中に閉じこめられたいか..?本気で悩んだ。情熱あふれるゴッホがいいかな?印象派の音楽も聞こえてきそうな、モネもいいかも!バレリ−ナになってドガの絵の中にも入りたい!
富永さんの説明も上の空で、変なひとときも味わった私だった。
200万点を超えるコレクションのうち、公開できるのは、そのうち数十万点で、定期的に展示作品を換えるのだという。長年、ニュ−ヨ−クに住み、自分の別荘のように通い続けている富永氏でさえ、全コレクションの、ほんの一部しか観ていないと言うから、気が遠くなるようだ。
とにかく、大国アメリカの財力で、人類の宝物が、ここに集中しているのだ。かつて、絵(美術)を志す者たちは、ヨ−ロッパへ行った。特に、日本人はフランスへ留学すると、箔が付くと思っているようだが、今は、それは古いのだそうだ。音楽にも言えることだが、歴史を確立したのはヨ−ロッパであるが、継承し、発展させているのは、この国なのかもしれない。
各セクションを回り、目についた光景だが、子供たちのグル−プが多い。鑑賞している子達もいるが、名画の前でスケッチしているのだ。覗いてみると、目の前の絵を模写している子もいれば、全く、自分の想像の絵を描いている子もいる。
教育の一環で、先生が引率してきているという。驚いたことには、まるで自宅のリビングにでもいるように、寝ころんで書いている子も少なくない!
日本の美術館や、美術展を思い出してほしい。整然とし、各コ−ナ−に居る警備員はにらんでいるようだし、大声だって出せないム−ド。
この厳格さは、ヨ−ロッパの美術館でももちろん同じだ。自由の国とはいうが、このように子供達をのびのびと教育していることには感動さえおぼえた。
そういえば、オペラハウスにも、団体で、子供達が見学に来ていたっけ。我が国では、社会科で、工場見学や国会議事堂見学には、連れて行くが、国立劇場の見学に行くとは聞いたことがない。幼い頃から、本物の芸術に触れ、美術館も劇場も敷居の高いものと感じないで、成長した子供達の中から、確実に、21世紀のゴッホやピカソが、出現するにちがいないと思った。今、固定観念に囚われず、新しいものを生み出せる国は少ない。
おかげで、私も余計な緊張感もなく、ゆったり、おしゃべりもし、いいかげんに(?)名画に向かうことができた。
富永氏は12月、帰国して個展を開くという。「では、日本で会いましょう」..こんなセリフは社交辞令のようで、大体は「さようなら」という意味に等しいという人もいるが、私の場合は、いつも本気。2003年12月8日.N.Yより帰国し、およそひと月後、富永氏と再会。京橋にて、ニュ−ヨ−カ−に人気のモダンア−トを鑑賞。富永画伯の色使いは幻想的だった。
ここでは、息をひそめ、なぜか緊張して観た。リラックスして観る分野と思うのだが、周りのム−ドがよくない!(ここは東京だった)
「また、ニュ−ヨ−クへ来たら、連絡して下さい。今度はもう少し、ゆっくりね!」
私は、これも社交辞令とは思っていない。きっと、今回、観られなかったコ−ナ−を訪ねたいと思っているし、ゴッホの「糸杉」にも再会したい!
「メ−ルします。ホ−ムペ−ジもお互い、見ましょうね」

 余談になるが、かわいい「メトロポリタンミュ−ジアム」という歌、私流に調理して歌ってみようかな!?