音楽ゆかりの地をゆく



待望の“シドニ−・オペラハウス”
青い海に、白く輝くシドニ−のシンボル、オペラハウス。帆船を思わせる美しいフォルムは、世界中の人々から注目されています。デザインは32カ国233点の公募から選ばれた、デンマ−クの建築家ヨルン・ウッツォンのものです。
ユニ−クな建築物故、オペラや音楽に興味のない人たちまで、観光スポットとして訪れ、世界中のオペラハウスの何処より、周りが賑わっているのではないかと思いました。
 中に入って解ったのですが、いくつかの、あの帆のような形の屋根はそれぞれ独立しており、一番大きな形のところが、コンサ−トホ−ル、二番目が、オペラシアタ−、その他、小ホ−ル、演劇用ホ−ル、バレ−シアタ−等に分かれていたのです。(外観だけでは解らないものです!) このシ−ズンは、オペラは「トロヴァト−レ」(ヴェルディ).コンサ−トホ−ルは、「ウィンナオペレッタの名曲とウィンナワルツ」でした。
チケットは、日本を発つ前からインタ−ネットで予約していたので心配はありません。
コンサ−トが始まると、ゆっくり内部の見学ができないので、まずは早朝、「見学ツア−」を申し込み、全館を見学しました。ヨ−ロッパのオペラハウスのように歴史があるわけでは無いので、音楽家の壁画や重厚な室内装飾はありません。その近代的な建物の成り立ちや、オ−ストラリアという国の歴史等が壁画として並んでいました。
このオペラハウスが誇りにしているのは、外観はもちろんですが、内部で音楽を聴いた者しか味わえない、「中から海を見渡せる」という感動であることを知らされました。
  “聴衆はステ−ジの裏から入り、港(海)を見渡すホワイエに進む!”...絶対にどこの国にもこんな設定のホ−ルなどありませんね。
ウッツォンは半島に建てられるのにふさわしい形、背景を考慮のうえ設計したのです。
二つのシアタ−(コンサ−トホ−ル.オペラシアタ−)の双方共から広大な港の風景が眺められるように、相並んで設計され、聴衆が音楽と共に劇場訪問を心楽しいものにすることを考慮していました。その景色は、朝に夕に、季節の変化と共に色合いを変え、音楽とともに、二度と同じものには巡り会えないのです。どんな名画にも勝るとも劣らないこのパノラマを考案した氏に脱帽でした! 建物は、四方八方から眺められ、時には上空からさえも鑑賞される場所にあることから、外観は一つの彫刻でなければ!...全てに高い理想が掲げられたのでした。建設にあたり、このデザインを実現させるために、設計者と建築業者との数々のぶつかり合い、諸問題を経て、この驚異の建造物が誕生したということです。
  
実現までの歴史にも驚きました。
        1956年.現在の地に建設することを発表。
        1957年.ヨルン・ウッツォン氏のデザイン採用。
        1959年.建設開始。
        1966年.舞台空間の設計を構造上、実現させることができず、
              ウッツォン氏帰国。完成を目指し、シドニ−の建築家が引き継ぐ。
        1973年.英国女王エリザベスU世によって公式に
              開館される。(10/20)
             ♪初回公演:プロコフィエフ「戦争と平和」

今でこそ、毅然と誇らしげに建っているこのオペラハウスも、構想当時は「不可能」と世界中から嘲笑されたといいます。オ−プンまでの長い年月を思うと、その課程で現代科学技術も、共に進んだにちがいありません。20世紀という時代ならではの、オペラハウス建設だったと思います。それにしても、あきらめなければ、理想や夢は叶う!と言うことを改めて教えて貰いました。(もちろん、多くの人の努力を忘れてはいけません)
昨年(2003年)は、開館30年記念の式典が開催されたそうですが、街で面白い(?)エピソ−ドを耳にしました。その式典には、設計したウッツォン氏が今も健在で招待されたということです。ガイドブックやものの本には、氏はあのデザインを「貝殻をイメ−ジして作った」と書いていますが、改めて尋ねると、「そんな美しいイメ−ジでは無く、子供がミカンの皮を剥いているのを見た時にひらめいたのです」..と答えたとか?もちろん、見学ツア−のガイドは、美しい方の表現をします。真相は定かではありませんが!

見学ツア−は、ヨ−ロッパの主要なオペラハウスでも経験できますが、見るだけで精一杯という所が大部分です。シドニ−は何と、食事付き、パフォ−マンス付き等がセットされており、最低でもお茶付きです。私はこのお茶付きツア−で充分満足でした。再三伝えているように、この場所は見学してすぐ帰る..というふうにできていないのです。広大な美しい海を見ながら、コ−ヒ−やワインを..というようなム−ドがセットされた劇場であることをお忘れなく!(決して、PRを依頼された訳ではありませんよ)

見学ツア−は、大体、午前中で終わります。特に、土、日は、コンサ−トが午後の時間帯から始まりますから。
午後2時、いよいよ公演に向かい、コンサ−トホ−ルの階段を昇ります。その日の音楽を想い、ホ−ルに入る時のときめきはいつも同じですが、この日は、音楽の前の序奏として、階段を昇ると「海の景色」が待っているのです!ホワイエで、種々のドリンクでくつろぎ、着飾った人たちに酔い、景色に酔い、その高まったム−ドで着席へ進むわけです。「ウィンナオペレッタ」は、このホ−ル初体験の日のプロとしては最高でした。優雅で、熱く、オシャレで、楽しく...。演奏中はウィ−ン。開演前と休憩はまさに「シドニ−!」でした。
ワルツの調べが耳に残り、オペラハウスと周りが一体となった景色は目に焼き付き...この日の幸福を思い出せば、きっと辛いことや嫌なことも乗り越えられると思った私です。                〜2004.8. オ−ストラリアは冬でした〜
                            
この度、シドニ−オペラハウスで覚えてきたフレ−ズを記述しておきましょう。

“世界の七不思議に続く八番目の驚異!”(七不思議自体、ハッキリ覚えていませんが)