ソット・ヴォーチェ



高田三郎先生の思い出@
以前、固有名詞(名前)のことを話題にしましたが、作曲家、高田三郎先生とのエピソ−ドを思い出しました。
日本歌曲、合唱曲等の作曲で知られていますが、名字を「タカタ」と読むことを知っている方は少ないのではないでしょうか?大部分の人たちが「タカダ」と言っていると思います。私の母校である国立音大の教授でしたが、学生時代、グレゴリア聖歌の授業を受けましたし、合唱の古典となりつつある「水のいのち」「心の四季」は、作曲家自身の指揮で歌うこともできました...。それなのに、「タカダサブロウ先生」と言っていました。周りの学生達も同じです。
そして、卒業し、歌い手として活動するようになり、10数年ぶりに再会することになりました。日本の音楽展で、先生の作品を歌うことになり、レッスンに伺うことになったのです。
その時のことを思い出すと、今でも冷や汗が出ます。「もしもし、タカダ先生のお宅ですか?」「ちがいます...」電話は切られました。私は番号を間違えたと思い、もう一度、かけ直しました。すると私が声を発する前に、ゆっくりと「タ.カ.タです。どなたですか?」とおっしゃいました。すべて、理解できたので「お名前を間違い、失礼しました...」と会話をすすめることができました。
その後、他界なさるまで、かわいがって頂きましたが、音楽以外の、多くのことを学びました。後でうかがったことですが、学生や、その辺の人が、名前をまちがっても、目くじらは立てないが、音楽家としてやっていこうという人間が、無神経なのは、許せないということでした。もし、私が、すぐ気がつかなければ、歌のレッスンを受ける前の段階で、門前払いだったのです。
それから、できるだけ、機会がある度に「高田三郎先生は、タカタと発音するのよ」と伝えてきましたが、コンサ−ト等でアナウンサ−が、堂々と「作曲、タカダサブロウ」とプログラムを読み上げるのを聞き、悲しくなります。(ふりがなはありませんが、楽譜には、アルフアベットでTAKATAと記してあることが多いです。歌う人なら、それ位、気がついて!と天国から先生が言っているようです。)

フォルテで言いたい、ソット.ヴォ−チェでした。