2003年6月議会 一般質問
1.今後の行財政のあり方“負担とサービスのバランスについて”【提言】
4市合併の是非を問う住民投票の結果、志木市民の判断が賛成約6割、反対約4割であったことを受けて、市長が様々な場所で
「負担は高く、サービスは低いのが志木市」 と発言し、それについて検討するように庁内に指示している。
合併協議での15協定項目のうち、負担とサービスに違いのある7項目(地方税、国民健康保険事業、介護保険事業、上・下水道事業、福祉医療制度、保育事業)についての検討に関して
【例1.地方税】
貴重な自主財源であり、近年の税収減にあって、安易に税率を下げることにより、志木市が自由に使える一般財源が減り、財政運営の硬直化を招き、地方交付税の減少とも相まって志木市独自の行政サービスの選択肢が狭められ、その質・量ともに従来のサービスが受けられなくなる恐れも生じかねない。
【例2.介護保険料】
志木市では2000年度介護保険制度導入に向け、高齢者保健福祉計画審議会・介護保険事業計画策定委員会の市民委員を中心に、在宅重視の考え方で、在宅サービスが抑制されることなく十分に提供されることにより、可能な限りその年齢・心身の状態なりの自立的な生活が営まれるとともに、寝たきりになるのを防ぎ、地域の中で尊厳をもって生活していかれるようにとの配慮、他市にない住宅改良・移送サービス等の市特別給付を盛り込み、保険料基準月額2,842円となったものである。
その過程では、委員会主催の公聴会(計7回)で市民の意見を反映し、市民のコンセンサスを得ながら市民自らがつくり上げてきた、市民自治そのものである。
【例3.水道料金】
志木市では1978〜93年度の間料金改定が行われず、志木市の水道料金は県内最低であったが設備投資は遅れていた。大原浄水場改修(92〜94年度)に続き、阪神大震災規模の地震に備え、宗岡浄水場改修工事(97〜99年度)、貯水タンク改修(03〜05年度予定)を計画的に進めてきた結果、4市では最も高い料金設定となった。(県内では中間より安い)
水道事業会計は地方公営企業法に基づく独立採算制であり、経営の助成のための一般会計からの繰り入れは認められない。
一方、他市は今後大規模改修工事をしなければならないとのことで、将来的には値上げもあり得る。
- 以上のように、サービスとそのための負担のあり方は、それぞれの経緯とサービスの内容や質、地域性等により異なるものである。単純にサービスを高く、負担を低くすることが真に市民生活に資するものなのか、一時的な市民サービスの向上と称して、将来世代へ負担を先送りする結果とならないか、十二分な検証が必要。先ず、現状のサービスと負担の背景や内容を検証し、市民に公開することが重要であり、負担とサービスのバランスは、その後市民がその責任において判断すべきものである。
- 行政サービスを仮に7項目のみ充実しても、他のサービスが低下となってはならず、多種多様な行政サービスと負担の全体像を踏まえて検証すべき。他市にない志木市独自のサービスや情報公開・市民参画等ソフト面での志木市の特徴、良さにも目を向ける必要がある。
- 住民投票の市民の意思は単純に負担とサービスのあり方だけではなく、多角的に検証すべき。合併の検討に際して、「負担は低く、サービスは高く」 の観点そのものが疑問。合併するしないに関わらず、サービスと負担のあり方については、我がまちの財政状況を見極めながら、まちづくりのビジョンに基づいて、一つ一つ丁寧に合意形成を積み重ねていくべき。
- 志木市は、新たな自主財源の確保を検討するなど、厳しい財政状況にある。サービスは収入が増加することにより拡大するものだが、収入減が心配される中での負担とサービスのバランスについては、充分注意をし、検討すべき課題である。
【市長】 経緯と地域の独自性が異なる4市の格差要因については、分析の上、市民に説明する必要がある。「行政施策等の全体のバランスから論ずるもの」
との提案は正論であるが、「負担は軽くサービスが高いことが目標」 との考えも数多くある。今後、他市とは異なる独自施策、市民サービスについて、7項目に限らず検証し、広報等で公表し、市民に考えていただく。いただいた貴重なご意見は、今後の検証を深める中で参考にしていきたい。
2.市民病院の運営について
(1)経営状況
- 2002年度決算で純利益約3000万円を生じたものの、前年度との比較では約7000万円の利益減、本年4月のみの比較では1800万円減となっており、このまま推移すれば2003年度は1億円超の赤字が懸念される。
- 7月より常勤医師による麻酔科が新設され、ペインクリニックによる疼痛緩和治療等が行えるようになり、外科手術の安全性確保にとっても喜ばしいことだが、肝心の麻酔を要する手術件数は4,5月で昨年度の1/2程度であり、赤字要因にもなっている。
- 昨年度まで、外科医である院長らにより年間249件の手術を行い、収益増に貢献してきたが、派遣期間を終え、自治医大から代わりの外科医師が派遣されず、内科・小児科・整形外科もそれぞれ欠員となっている。
(2)今後の見通し
- 救急件数(救急・時間外)は2001年度1万2,873件、02年度1万9,694件と35%伸びており、医師確保は喫緊の課題。04年度から研修医制度が始まり、医師確保も難しく、100床・医師12名体制の市民病院の経営環境は一層厳しさを増すと予想される。
- 病院一丸となっての経営改善計画を立て、更に、市民病院運営審議会、市民委員会、各診療所、保健福祉関係者との連携も図りながら、地域医療を支えるためのビジョンをつくっていくことは最重要課題。
【市長】 自治医科大学は47都道府県のための派遣医師の確保には大変困難をきたしている。他大学も含め、医師確保を真正面から検討、施設の老朽化対策・救急医療のあり方等、諸課題の解決についても検討し、病院経営安定化に向け努力していきたい。
3.高齢者福祉について
(1)
指定介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の計画的な整備
- 介護保険事業計画では2007年度の目標量を173人と見込んでおり、本年3月末現在の利用者数67人以外に106人分を整備する必要がある。待機者は現時点で120名程度、重複して複数申し込んでいる方もいるので、その7割程度が待機を強いられている。
- 高齢者の方々は、「2,842円(基準月額)の介護保険料を納めるのは良いが、充分なサービスを受けられる見通しがあるのかが大変不安。」とのことであり、第1号被保険者(65歳以上)の方々に不安を与えることの無いよう、民間参入の可能性も含めて最大限の努力をしていくべき。
- 2002年度から新たに建設される特別養護老人ホームは完全個室化が補助採択の条件とされる。自己負担(ホテルコスト)に関わる低所得者対策についても提言していきたい。
- 新たな施設整備にあたっては、計画段階から近隣住民の理解を得て、ともに地域福祉における施設の機能・経営理念・運営方針等を固めていくことの重要性を、民間の社会福祉法人に認識されるよう、市としての役割を果たしていってほしい。
【市長】 特別養護老人ホームの建設計画が現在も検討されていると聞いているが、厚生労働省の2005年度における新しい施設の開設方針に注目するとともに、実現が確定するまで、志木市型高齢者福祉施設を引き続き国に提案していきたい。
【天田】 市長は、現在希望通り利用できない状況にあるショートステイについても第3次構造改革特区構想に提案していきたいとのことだが、特別養護老人ホーム1ヵ所にショートステイ20床整備されれば、2007年度の目標量9,008日は達成されることになる。市民のニーズは逼迫しており、民間参入が実現可能な状況になってきた場合は、ぜひ積極的に取り組んでほしい。
(2) 地域の実態に応じた施策展開
- 高齢者保健福祉計画では、地域ケア体制のために、基幹型在宅介護支援センター(市)を中心に、地域型支援センターを5ヵ所(内1ヵ所は市が兼ねる)設けることとされている。
- 地域ケア体制の、地域ごとのサービスユニットのうち、地域型支援センターについて、宗岡地区では03年度宗岡の民間事業者に委託、本町地区はブロンに委託、柏町地区は10月より第二福祉センターに続き社会福祉協議会に委託の方向性であり、3ヵ所が整備されることになる。
- 館・幸町地区の方々からも、「市役所に行かなくても身近な歩いて行かれるところに、いつでも相談が受けられる体制をつくってほしい。」との要望がある。西原地区の区画整理事業の進捗に応じて、民間の多様な施設にあわせて地域型支援センターを配置し、地域福祉の拠点として、介護サービス事業者・民生委員・町内会・市民団体等、地域福祉に関わる人々が共にそれぞれの地域の実態に応じたケア体制をつくっていく必要がある。
- 厚生労働省が打ち出している小規模・多機能サービス拠点(地域の中で訪問介護やデイサービス、ショートステイ等、複合的に24時間提供する拠点で、グループホームとして住むこともできる等)も含めて、今後も整備を提言し続けていく。
【市長】 在宅介護支援センターの整備を進めることは重要と考えており、今後策定予定の地域福祉計画の中でも地域の実態に合った施策の検討を進めていきたい。
4.自立をはぐくむ教育について
(1) 幼児教育構想
- 「志木市としての一貫教育」「幼保・小・中の接続教育」(2000年、教育改革座談会)については従来から提言し続けてきた。「しつけ」 という狭い観点にとどまらず、発達段階に応じた自立をはぐくむ教育のあり方について、共に論議していってほしい。
【教育長】 25人程度学級の検証により、個人差に応じた指導の充実のため、5歳児教育との円滑な接続教育が必要であると考え、小学校・幼稚園・保育園・民間託児施設・身障児施設・福祉関係機関等とネットワーク化を図り、就学前教育の一分野であるしつけ等についての研究を進める。
(2)特別な支援を必要とする子どもたちへの支援体制
【志木市における支援体制】
・ 2000年度…教育サービスセンターが校長の要請に基づき研修を受けたボランティアカウンセラーを派遣(低学年対象)
・ 2002年度… 〃 (全学年対象)
・ 2003年度…特別支援員派遣( 〃 )
【提言】
- 03年度は予算措置が無い中、「特別支援員」としてホームスタディ制度予算から執行されており、早急に補正予算措置すべき
- 普通学級における 「特別な教育的支援を必要とする子どもたち」
はおよそ6.3%、ユネスコ 「特別なニーズ児」10〜20%と言われており、学校でも認識を深め、必要な支援体制を
- 県のLD,ADHD等指導者養成講座(02〜04年度)の受講者を中心に、教育相談専門員会での研究を深め、全ての学校について、「見逃され、見過ごされる子どもが無いように」
- 既にサポートしてきている民間教育機関、医療機関等と連携し、一人一人に応じたサポートチームを
【教育長】 特別支援員としての予算計上も必要。学校全体の支援体制を構築し、一人一人に視点を当てたサポートチームを設置していきたい。教育サービスセンター主体に医療機関・専門機関との連携を図り、支援体制を充実していく。
【天田】 (1)、(2)を含め、教育と福祉を統合し得るような組織のあり方を考えていただきたい。
(3)中学校教育自由化構想(教育改革)
2003年度
◆指導要録・内申書(調査書)を開示、学校情報(学習指導計画、学校評価など)を積極的に公開
◆学校配当予算の一部学校裁量、市費臨時教員採用の校長裁量による 「学校魅力化事業」
【臨時教員等を積極的に活用している事例】
・ 志木二小…臨時教員1名を体育のチームティーチング(1学級を2名の教員で指導)に
・ 宗岡二中…「パワーアップサポーター」 として数学、音楽(情操教育として重視、器楽等をチームティーチング)
・ 宗岡中……1年生数学は週3時間、1学級を3名の教員で習熟度別の3グループに分けて少人数学習、きめ細やかな指導で一人ひとりの基礎学力を確実に向上。2、3年は2名の教員で習熟度別少人数指導。AET活用の英語授業チームティーチング(=TT)、ラーニングサポート講師活用の国語TT、学校ふれあい推進員講師による音楽のTT等
2004年度以降
◆合同部活動、中学校選択、教育課程編成の学校裁量
【提言】
- 宗岡中の取り組みは大変積極的であり、ことに数学では小6・中1の接続に焦点を当て、全ての生徒に基礎・基本の定着を補償しようとしている。校長中心に宗岡二小、四小との9年間の一貫教育をめざし、生徒・PTA・学校評議員等と共に、地域ぐるみでのビジョンの構築を始めている。このように、地域や学校の実態及び児童・生徒の心身の発達段階や特性を十分考慮して(学校指導要領総則)、必要に応じて
「教育課程編成の学校裁量」 を実施していくプロセスが、最も重要な教育改革である。
- 「中学校選択(自由化)」 の目的は、従来より教育委員会が行っている学区についての規制を外し、全ての子どもが保護者と相談の上、家庭の教育方針を反映して必要とする中学校を選んでいくことが出来る状況を可能にすることであり、そのためには教育委員会・学校・保護者・子どもたちそれぞれの考えを充分に議論しながら、一つ一つの教育改革の内容について深めていく取り組みが最も重要、単に期限を決めて学区を廃止し、そのプロセスが重視されなければ、真の教育改革にはつながらない。
【教育長】 本構想の実現をめざすためには、公立学校のよさを生かすことを前提に、学校・保護者・地域の方々のコンセンサスを充分に図ることが重要と考えているので、今後も検討委員会をはじめ多様な機会を捉えて様々な意見をいただきながら、手順を踏んで進めていきたい。
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