2006年9月議会(第3回定例会)一般質問より
1 介護保険の保険者としてのマネジメント機能を 
   〜地域包括支援センターを中心とした予防と安心のしくみづくり〜
4月以後、市内2箇所の地域包括支援センター(柏の杜、せせらぎ)が介護予防、地域福祉の拠点として活動していますが、一方で市のマネジメント機能はどうでしょうか。
国に先がけて独自の介護予防を実践する和光市の東内京一さんからお話を伺いました。
和光市では3年間かけて独自で100項目のスクリーニングシートを全ての高齢者に郵送(1週間で5割が返答!戸別訪問でも回収)、介護保険料納付還元を明示し、個人情報の同意を得て個々の生活習慣、機能の維持改善を図り、志木市では年々増加している軽度認定者(要支援、要介護1)の認定率が減少に転じるという効果を上げています。
<天田いづみの提言>
● 志木市では介護予防が必要な高齢者(特定高齢者)を把握するための調査が全高齢者に郵送されたものの、事務的で目的や意図が伝わらず、高齢者が困っているケースが見受けられる。
国の方針そのままでは実態に合わず、調査項目も、基本健康診査のあり方についても、志木市独自の考え方を持つべきではないか。
● 老人保健の医療費が2004年度県内6位、05年度5位、金額的にも上がっており、危機感がある。
国民健康保険で医療費の分析を行なった結果、循環器系の疾患が多い、医療機関の頻回受診が多い等の傾向が明らかになっている。高齢者ふれあい課、地域包括支援センター等でデータを共有して予防に活かしたい。
● 介護療養型医療施設を2012年度までに現在の3分の1にする国の方針(施設から在宅へ)のもと、個々の高齢者データを詳細に分析することにより、地域のニーズや特性を踏まえた地域密着型サービスの配置計画を企画、立案すべき。
● 緊急通報システムは日中一人でかつ虚弱な方が対象だが、自己負担を導入してでも安心の仕組みとして広く使っていただくことも考えてはどうか。
● 食の自立について、和光市では低栄養の改善、糖尿病の栄養指導など、介護予防ヘルパーを育成し、栄養に関わる食の自立の研修を行いながら、高齢者と共に料理して自分でもできるようにし、QOL(生活の質)を向上している。
● 「和光市は財政力があるから」ではなく、予防効果を上げることは行政経費の削減のみならず、高齢者と家族のメリットにつながる。
● 介護予防体操等で介護保険事業計画(高齢者ふれあい課)、健康づくり計画(保健センター)、地域福祉計画(福祉課)それぞれリーダー養成をするのではなく、市民の力を共有し、地域包括支援センターを核として、地域住民の有機的な連携によるネットワークを創っていきたい。
和光市では月2回全てのケースに関わる関係者を集めて1ケース20分刻みでケース会議を開いており、それは専門職の貴重な研修の場になっているのだと思います。
市は地域包括支援センターで捉えている課題をきめ細やかに把握しながら、一緒になって志木市の介護保険、高齢者保健福祉を検証、評価、改善していってほしいです。


2 組織と人事政策
(1)ライフステージに応じた予防・健康づくり等に機能的に対応できる組織への転換
現在40歳以上を対象に市が行っている基本健康診査は、2008年度から国民健康保険等各保険者の責任で実施する特定検診に移行、既に介護保険制度改革に合わせて老人保健法が改正され、2006年4月から健康手帳の交付と基本健康診査以外の予防施策は介護保険に移行しています。
本来であれば今年度から健康福祉部の組織を見直し、従来保健センターで保健師が行なっていた業務を各課に振り分けていくべきところ、私も議論はしてきましたが、先送りされています。
子育て支援についても、児童虐待の予防、軽度発達障がいの早期発見、子どもが産まれる前からの若い父母に対する支援等、子育て支援課(子育て支援センター・保育園・家庭児童相談室を含む)、保健センターそれぞれの取り組みを一元化、パワーアップする必要があるのではないでしょうか。
精神保健福祉についても自殺予防、うつ等に対するメンタルヘルスが若者、働き盛り世代、高齢者等に重要であり、現在手帳の交付等サービスについては福祉課、相談・啓発については保健センターで行なっていますが、より戦略的な予防の仕組みづくりをすべきではないでしょうか。
地域に根ざした保健活動に取り組んできた長野県佐久市では、福祉課に予防担当を設けるとともに各支所に保健師を配置、保健センターは基本健康診査等をする職員3人のみということです。
現在、市の保健師は保健センター7名、福祉課、高齢者ふれあい課、子育て支援課、子育て支援センター各1名、計11名ですが、国民健康保険の特定健診が義務付けられる保険年金課では、臨時職員の保健師の確保も難しい状況です。
市が有する貴重な保健師機能を有効活用し、縦割りでなく、ライフステージに応じた予防健康づくりに対応できる組織に転換していくべきです。
また、従来から保健医療福祉の総合政策機能の必要性を提言してきましたが、国の制度もめまぐるしく変わっている昨今、相互に関連する法制度や実態が見えていない状況があります。健康福祉部に総合調整、マネジメント機能が必要です。
長沼市長からは 「ご提言も踏まえ、ライフステージに応じた予防健康づくりに積極的な対応ができる体制を整えていきたい。」 との答弁でした。
(2)専門職、専門性を計画的にどう確保していくのか
来年度に向けて8名の新卒者を正規職員として採用予定とのことですが、市民からは専門性のある人材を確保すべきとの意見があります。
専門性のある職務経験者の採用も必要ではないでしょうか。
和光市では福祉の専門職を3年間非常勤職員で、さらに地方公務員法に基づく任期つきの職員として3年間採用し、民間との人的ネットワークも構築しています。
市長からは「今後の行政形態は職員の高い専門性を基礎とした業務スタイルに変えていかなければならない。様々な分野の専門職員の確保について、採用方法や専門職の育成方法を検討しながら計画的に行なっていきたい。」 との答弁がありました。
(3)現状の人材をどう活かしていくのか
職員の年齢構成は50代が40%という中で、チームとしての業務目標管理、評価等により職務の質を高めていく工夫が必要です。10月には人材育成基本方針(05年12月議会で提言)が策定され、これに基づき、新たな人事評価システムが検討されています。


3 児童生徒の心身の発達段階や特性に応じた教育
(1)“学力、体力、規律ある態度”の基盤となる生活習慣の改善
文部科学省 教育課程企画室 合田哲夫室長(06.9.3)によれば、次期学習指導要領改定では「家庭・地域と分担しつつ、学力と生活習慣の一体化により知識・技能の活用力(思考力・判断力・表現力)を高め、実生活で生きて働く力にしていく。
体験の充実、コミュニケーション能力の育成により、他者や社会とのつながり、職業や人生への見通しを持てるようにしていく。」 といった検討がされているとのことです。
6月議会以後7小中学校を訪問しましたが、着任校長が先ず歯の罹患率、朝食の欠食率に着目し、家庭の実態を踏まえて子どもたちを支援しているという話も伺いました。
宗岡三小では、歯の健康が食生活や基本的な家庭での生活習慣に大きな影響を与えていることに養護教諭が着目し、学校保健委員会を中心に8020(80歳で20本の歯を残そう)運動に長年取り組み、栄養教諭、各担任との連携のもと、学級指導・保健学習・給食指導・児童の委員会活動等で組織的、計画的に活動しています。
肝心なのは、こうした各学校の取り組みに対する教育委員会のバックアップ機能です。教員の大量退職時代を迎え、養護教諭等をどう育てていくのか。
4月に組織が変わり、学校給食・学校保健の管理は教育総務課、食教育・健康教育は学校教育課に二極化され、現場は専門性あるサポート体制を求めています。
次期学習指導要領改定も踏まえ、柚木教育長に質したところ、「教員研修体制を強化、校内研修を支援し、教育委員会組織についてもご提言の趣旨を参考に検討していきたい。」 とのことでした。
(2)個別指導・個別支援に焦点を当てた校内体制づくり、義務教育課程9年間で一貫性のある教育
志木小のどらえもんルームは特別支援教育の観点でつくられたが、“いつでもどこでも、先生、あのねと声がかけられ、全ての子に支援していく校内体制”の象徴になっています。
個別のケースについて、全教員の職員会議でケース会議をやっている。1人の子を担任だけが抱えるのでなく、警備員も含め、子どもに関わる全ての職員が一緒に見ていく体制をつくっており、学級担任決めの際「ぜひ○○さんのいる学級を持ちたい。続けて受け持たせてほしい。」と話す教員もいるとのこと。
幼・保・小・中・高の接続では、保護者と連携しながら、子どもの特性、ちょっとサポートしてあげればうまくいくところをそれぞれの段階でしっかりとバトンタッチしていくことで、つまづきや高校中退等が防げるのではないか。
また、学校それぞれが子どもたちの実態、地域性を踏まえた教育課程の編成は大切だが、中学校区単位での小・中の接続を見据えた調整も必要ではないか。(例えばA小で英語の時間数が多くB小で少なかった場合、中学校ではどうか等)
中学校区単位での生徒指導連絡会で小・中互いの授業を見合ったりしているが、教科単位の研究の必要もあるのではないか、教育長に質問しました。
柚木教育長からは 「一人ひとりの子どもの抱える課題を全職員が共有し、個別の指導・支援を9ヵ年にわたり意図的・計画的に行なっていくことが必要。小・中、それぞれが責任を持つと共に、学年が変わる際や小・中の進学時の引継ぎを丁寧に行い、小・中連携が図れるように指導支援していく。」 との答弁でした。
(2007年1月)
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