2007年9月議会(第3回定例会)一般質問より
1.都市計画のあり方について
(1)都市計画高度地区(素案)の問題点
 天田いづみの議会だより第33号(2007年8月)7,8ページに記した問題点について述べ、市長の考えを質しました。
l         都市計画審議会に諮らず行政だけで素案を作成
l         「一律25mとした後は地区計画で」といっても地区計画は住民主導で定めなければならない
l         市内の建物は5階以下が8割、地域の実態に応じたきめ細やかな高さ制限を
l         既存不適格建築物が45棟も発生するという規制のあり方
l         大規模な開発で高さを抑えれば緑地、オープンスペースが減少する
l         上宗岡三丁目地区計画区域は既に定められている準工業地域20m、第1種中高層住居専用地域14mの高さに規制を
l         富士前田子山区画整理事業区域は既に3階までの建築制限があり、区画整理の施行に合わせて新たなルールづくりを
l         都市計画は住民自治の根幹であり、市民協働でまちづくりのルールを定めていく必要がある。12月までではなく時間をかけて丁寧に説明、市民の意向を反映したものに
 長沼市長からは、「市民の皆様からのご提言、ご意見を踏まえ素案の一部見直しを行い、原案を作成する。これに合わせて、それぞれの地域の特性に応じた住環境をつくり上げていくため、市民協働の観点から、地域住民とのまちづくりを研究するための組織の設置についても検討していきたい。」との答弁がありました。
 2000年3月に市民と共に策定した志木市都市計画マスタープランでは、地域の特性に応じた土地利用方針が定められています。これに基づいて、当時はまちづくり条例を整備して、地区計画等を誘導していかれるしくみづくりをしようと、早稲田大学の卯月盛夫先生等を講師に市民団体や商店会等で組織した勉強会を重ねてきましたが、穂坂市長の頃から途切れてしまい、その流れを踏まえずに今回高度地区が提案され、都市計画マスタープラン策定に関わった市民からは不満の声が上がっています。
 一方で、都市計画を市民にとって身近なものにしてこなかったために、高度地区(素案)に関する住民説明会の参加者は少なく、こうした状況で「50年〜100年を見据えて市全体を25mに」(市の説明)してしまったのでは将来に禍根を残すばかりでなく、住民紛争の火種にもなりかねません。
 高さや景観のルールを早くから定めている先進自治体では、時代の変化や建築基準法緩和の状況、地域の実態等を踏まえ適時適切に見直しています。都市計画審議会を中心に議論し会議録も公開して、自治体ぐるみで取り組んでいるのです。
 一度決めたら見直さないということではなく、タイムリーに見直していく考えを市長に質し、「適時適切に見直しをしていきたい」との答弁がありました。
(2)今後の都市計画行政とまちづくりのあり方
 地方分権一括法により、2000年に志木市でも都市計画審議会条例を改正し、地方主権、住民自治の観点からより専門性のある議論ができるように規定したにもかかわらず、活かされていません。
 9月2日「市民と議員の条例づくり交流会議2007」の分科会「都市計画審議会で都市計画を議論するには」に参加し、志木市の現状に対する危機感を率直に質問したところ、パネラーの東海大学工学部建築学科教授 加藤仁美先生は「都市計画マスタープラン、高度地区等を全て都市計画審議会につなげていくことが必要ではないか。」とのこと。
 練馬区では既存不適格建築物の建替えに際して、都市計画審議会に専門家等で構成する部会(仮称)評価委員会を設け、コンペをやってよりよいまちづくりに資するような建替えができるように誘導していこうという議論までされているということです。
 私は、まちづくりを「規制」として行政がとらえているとすれば、大変間違っていると思います。規制をかけて行政主導で事を進めるのではなく、できる限りボトムアップで住民が都市計画、自分たちのまちづくりを考え、より良いルールづくりをしていかれるようなあり方で進めていくべきではないでしょうか。
 市長は「今後のまちづくりについては、市民協働の観点から、充分に市民の意向が反映されるような仕組みづくりについて研究していきたい」とのことですが、都市計画審議会の機能を活かすためにも、行政の機能が重要です。
 東京都は早くから建築基準法に基づく総合設計制度を持ち、様々な住環境、都市環境の整備、改善に寄与する多様な緩和規定を設けていますが、埼玉県にはその要綱すらなく、今後検討していくとのこと。そのためか、県内の高度地区指定している自治体をはじめ志木市でも、市独自で定められる緩和規定を設けるという発想すらなかったようです。
県外では高度地区を設けている自治体はどこも大規模な開発等に関して基準を定めて高さを緩和することにより緑地やオープンスペースを生み出し、地域にとって望ましい環境を創出しています。
それだけではなく、大崎の再開発事業では、ヒートアイランド現象の緩和のため、都市計画を誘導していくことにより、東京湾から目黒川を渡って上がってくる夜の海風を街に取り入れる風の道をつくっている。目黒川沿いに45度の角度に建物を建築させていく、道路も拡幅して幅員をとっていくことで風の道を確保していくというような都市計画を、品川区は実現しています。防災の観点からも、住宅密集地の再開発は各地で行われています。
環境や防災という観点を含めた総合的なまちづくりの仕組みとしての都市計画の実現に向け、一つひとつ丁寧に積み上げていく行政を求めました。
2.リハビリテーションについて
 現状分析と公的責任におけるリハビリテーションのあり方
 6月議会でリハビリテーションについてとり上げましたが、現状認識が不十分だったため、改めて調査し9月議会でとり上げました。
 2006年度からの診療報酬改定による、脳血管疾患の発症から180日までというリハビリの日数制限については、世論の批判を受け、医師の指示があれば制限を超えて出来るようになったと認識していましたが、実際は脳外科医がいる病院で、1か月ごとの細かい評価が必要、介護保険との併用は認められない等非常に厳しく、従来市民病院でリハビリを受けていた方々は自費診療によるリハビリや接骨院等を利用する以外に、医療保険による180日を超えるリハビリは受けられないことがわかりました。
 一方、介護保険のデイサービスでは理学療法士等による個別のリハビリは行われておらず、リハビリに特化したデイサービス(一日居るのではなくリハビリ目的の通所)を設けるとの国の考え方は未だ具体化されていません。
 そうした中、デイサービスとショートステイを行う富士見市のあずみ苑みずほを視察しましたが、デイサービスには志木市の方が半数来られており、一日中居るのは厳しいという若年の方の意向を受け容れ、午前のみ、或いは昼食を食べて帰るというパターンにも個々の相談に応じて対応する配慮がされていました。
 デイサービスでも集団での体操等身体機能の維持向上を重視するところも出てきたり、老人保健施設の中には経営方針として理学療法士、作業療法士、言語聴覚士を増やして、デイケア(通所リハビリ)で個別・集団計2時間の機能訓練を目標指向型(個々の目標を立てそれに近づけていく)で行っているところもありますが、一般的には限られた介護報酬のため20分程度しかできない実態のようです。
 市民病院では介護保険の訪問リハビリを行っていますが、「週2回ホームヘルパーに付き添ってもらい市民病院に行くこと自体がリハビリになっていた。以前は理学療法士が階段の昇降まで出来るようにしようという目標を持ってリハビリに取り組んでいたが、180日の制限によってそれも出来なくなり、月2回の訪問リハビリでは・・・・」という50代の若年で介護保険を利用されている方にとっては、以前とは質の違ったものになっていることがわかりました。
 更に、障がい者という観点でリハビリができないか調べてみました。総合センターでは地域活動支援センター事業(従来の障害者デイサービス)として障がい者の機能回復訓練を実施していますが、実際に視察しお話を伺ったところ、2006年4月からの診療報酬改定により医療によるリハビリを受けられなくなった方々が受けたいと希望したが、定員10人を超えるためお断りしたということです。(現在は10人を超えても多少は受け入れているということです。)理学療法士、作業療法士、看護師等の人件費年間約300万円をかけて週1回3時間という手厚いリハビリを行っていながら、なぜその時点で地域ケア会議を開くなど市としてサービスの総合調整を行い、必要な手当てができなかったのか、大きな反省点です。
 当時断られた方々は、介護保険制度改正と同時に行われた老人保健法改正で、それまで保健センターで行われていた自主リハビリテーションも2006年度から保健センターの事業として行われなくなったために、現在はなかよし会として総合センターを借り、ボランティアの看護師、母子保健推進員等の支援で月2回の自主リハビリテーションを続けており、地域活動支援センター事業の機能訓練に揃って参加できることを望んでいるということです。
 機能回復訓練視察時、ご家族と見学に来られた車椅子の方が、「少しやってみますか?」との声かけに応え、作業療法士と一緒に手を動かしていくうちに、見る見る顔が輝いてこられ、背筋も伸びて、1時間ほどで見違えるようになられた様子を拝見し、改めてリハビリテーションの重要性を実感しました。
 なかよし会の方も、「まだ自分たちはこうして外に出られて、ボランティアの方々のおかげで楽しく活動でき感謝しているが、若くして脳梗塞等から閉じこもり、うつになり、ご家族が悩んでいる方もいらっしゃる」とのこと。
 2008年度より市民総合センターにおける地域活動支援センター事業は志木市社会福祉協議会が行う予定ですが、機能訓練についてはあくまでも市の責任において行い、社協による民間の柔軟性を生かして自主リハビリも取り込むなど、制度改正や縦割り行政の狭間で必要なサービスを受けられずに重度化や閉じこもりで苦しむ人々をつくらないよう提言しました。
 金子健康福祉部長からは、「地域活動支援センター事業の充実を検討するとともに、連携して必要な方にサービスが提供できるよう、市や地域の関係機関等で構成する地域ケア会議での情報交換を深め、サービスの充実が図られるよう努めていきたい」との答弁がありました。
3.高齢者福祉について
 介護保険の保険者責任について
 6月議会で各サービス事業者、施設等の評価、検証の必要性を述べ、特に2006年度から市が指定の権限を持つ地域密着型サービス(グループホーム、認知症のデイサービス)については早急に実地調査を行うべきと提言し、金子健康福祉部長も「評価、検証については極めて重要なので、サービスの質のチェックを行いながら体制整備を進めていきたい」とのことでした。
 しかしながら、いまだに実地調査は行なわれておらず、もう少し緊張感、危機感を持ってほしい。市は介護保険になったから全て民間事業者がやるんだと誤解をしているのではないか。介護保険の保険者として、利用者の立場に立ち市民の方々に信頼される制度にしていくために、最も重要な市の責任はしっかり果たしてほしいと求めました。
 また、地域包括支援センターには、本来地域に必要な住民参加型のサービスをともに創っていく重要な役割がありますが、介護予防プランに追われていては充分にその機能が果たせません。
 志木市高齢者保健福祉計画審議会・介護保険事業計画策定委員会委員長の森本先生によれば、北九州市では要支援の方々の介護予防プランをつくる機関を別に設けることにより、地域包括支援センターが住民参加型サービスへの支援を行えるようにしているとのこと。
 ふれあいサロン(志木二小いきいきサロン、宗岡小ふれあいサロン)利用者が大きく伸びており、増やしていく考えについて市は「余裕教室がない」と答えていましたが、ふれあいサロンは町内会館や集会所、空き店舗等地域の身近な場での展開が重要であり、余裕教室ありきの活動ではないはずです。
 地域包括支援センターがそれらの立ち上げをバックアップしていかれる様な仕組みづくりを市に求めます。
 現状の問題、課題を明らかにしながら、介護保険をどういう方向に持っていくのか、保険者責任を果たしていただきたいです。
 金子健康福祉部長は「グループホームについては自らサービスの質の評価を行い、定期的に外部の評価を受け、結果を公表、改善を図ることが求められており、市には保険者として施設の適切な運営を指導する義務もある。市内2か所の地域密着型サービスについては、現在指導に向けて準備を進めている。
 地域包括支援センターについては、他市の例も参考にしながら本来期待される役割が果たされるよう、市が責任を持って受託者と連携し運営していきたい。」とのこと。
 現在2か所の地域包括支援センターも次期(2009年度〜)は3か所に増やす必要があります。
 また、リハビリテーションを重視している事業者の情報等について市に聞いても、事業所のケアマネジャーの方がよくご存知ですという状況。私は自分で調べることができますが、一般のサービス利用者、当事者であるお年寄りやご家族は、客観的な情報を市に求めているのではないでしょうか。
 市が保険者として実地調査するとともに、地域包括支援センターやケアマネジャー、サービス事業者からタイムリーに情報を収集し提供していくべきで、それにより各事業者とも良好な信頼関係を築いていくことが重要です。現場に足を運んでこそ聴ける実態もあり、厳しい介護の現場でぎりぎり頑張っている職員にとって、保険者が見にも来てくれないということでは励みにならないと思います。現場をまわるということがどれ程大切か、自分が訪問してみて実感しています。
4.環境基本計画について
 環境基本計画の見直しについて
 1999年に市民参画で策定された環境基本計画は、2009年度に向け見直しが予定されています。
 次期策定にあたっては、自ら環境を守ろうとする市民の裾野を広げていく必要があり、策定する時から実効性のあるしくみづくりをすべきです。
 和光市も朝霞市も環境づくり市民会議等の実行組織に分科会(自然部会、公園部会、生活環境部会、広報部会等)を設け、広報の発行までして、市民への普及啓発に市と協力して取り組んでいます。
 和光市の例では、環境基本計画の進行管理のみならず、落書き消し、ふれあいの森づくり活動、家庭ごみ組織調査、出前講座等々多岐にわたる活動を市民会議中心に行っており、こうした広がりのある活動ができることを視野に入れた策定が必要です。
 山中まちづくり・環境推進部長からは「年度内に(仮称)志木市環境市民会議を設置し、環境審議会の提言を踏まえた策定に取りかかる予定。
 市民にわかりやすく取り組みやすいものとすると同時に、策定に関わった委員がそのまま計画の推進を図る仕組みとすることで、計画の実効性を高めたいと考えている。」との答弁があり、部会の設置や若い世代の意見の反映、実行につなげる取り組みについても求めました。
.学校教育の充実について
(1)「中学校通学区選択の自由化」のあり方
 通学区選択の自由化については、私が傍聴した8月の臨時教育委員会で、学校ごとの定数を設けていく考え方が示されました。
 やむを得ないとはいえ、定数を超えた場合は抽選という、公教育において抽選で入れる人と入れない人がいるというあり方が「志木市の教育」として適切なのか、納得し難いところです。
 これに先立ち7月23日に学校関係者、保護者等による意見交換会が行われたということですが、長沼市長就任時、公約は公約として、なぜ現場に落として志木市としての最善の案に向け皆で合意形成を図るプロセスが踏めなかったのか、非常に残念です。
 100%誰もが満足できることは難しくても、そうしたプロセスを踏むことによって、仮に「抽選やむなし」というのであれば、納得できると思います。
 教育はマルかバツか、やるかやらないかではなく、一定の結論に至るまでにどのような議論をし、どのようにみんなで認識を深め、互いを理解しながら話し合って決めていくかといったプロセスが非常に重要です。大人がそういうプロセスで事を進めていかなければ、子ども達にコミュニケーション能力や生きる力を育むことはできません。
 先ず大人たちがそうした姿勢で進めていくことこそが教育の根幹であると私は考えます。柚木教育長からは「通学区の自由化に限らず、教育のいろいろな制度を検討する際には、学校関係者はもちろん、保護者や関係する皆様と合意形成を図りながら進めていきたい。」との答弁がありました。
(2)小規模校の充実策
 学校の適正配置、通学区自由化以前の問題として、小規模校は大変な状況に置かれています。
 朝霞市の朝霞第五中学校では小規模特認校という制度を活用しているとのこと。小規模特認校は国の法律に定められたものではなく、市が指定し、自治体によってやり方は違うものの、一般的にはその小規模校に市全域から生徒を受け容れられるようにしています。
 志木市の場合は既に自由化で通学区域外の入学は認められていますが、小規模特認校の場合、市の教育委員会が市費による教職員の配置等の支援を行うことにより、充実を図っています。
 経緯としては、部活動の充実等地域によって様々ですが、そうした手法も踏まえながら、教育の充実策について教育委員会の責任において研究、検証し、視野に入れて、適正配置の議論の中にも加えていくことが、教育行政を預かる教育委員会の責任ではないでしょうか。
 新井教育政策部長は「学校特色化推進事業等により、適正規模を基本に置く中で、各中学校がそれぞれの良さを活かしながら特色ある教育活動が展開できるように取り組んでいく。」とのことですが、県から配当される教員定数自体が小規模校は少なく、校長教頭含めて10学級で18名、9学級で17名、8学級で15名といった実態です。
 12学級を下回ると、不足している教科の非常勤講師を県が予算の範囲内で配当する制度があり、宗岡中・宗岡二中の技術・家庭科のうち、技術科については本採用職員で対応できていますが、家庭科は不足し県からの非常勤講師が充てられてきました。今年度、宗岡二中は9学級で配当されましたが、宗岡中は特別支援学級2学級を含め11学級にもかかわらず配当されず、やむを得ず市費で臨時職員を任用しているとのこと。このように、特色化事業以前の問題として、教育基盤自体が均等とはいえません。
 通学区自由化の問題にも関わってきますが、他の学校を選んでいかれる環境にあるお子さんは恵まれていると思います。一方で、生活に追われてそういうことすらできないご家庭もあると思うのです。
 公立学校でも格差が生ずるということにならないように、学校規模、地域性等も加味して、教育基盤自体を安定させていく意味で、財政的、人的等、教育委員会の学校支援の責任を果たしていただきたいと強調しました。
(2008年1月)
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