2009年7月議会 一般質問より
1.新たな絆をつくっていく地域社会の再生に向けて
 社会の仕組み自体が大きく変わっていくべき今日、地域社会における全ての人のかかわりー市長はじめ行政組織、議会、事業者、市民社会―がそれぞれの営みや関係性の中で、各々が自立し、侵食しあうのではなく切磋琢磨、補完協力し、互いに全体のために助け合うという融和した地域社会に向けて、私自身も改めて努力していきたいとの思いを述べさせていただき、7月1日から2期目に入った長沼明市長に一般質問を行いました。
 私は、新たな絆をつくっていかれるしくみづくりを志木市の中でしていきたいと感じています。
 先ず、社会全体で「人を育てる」ということを改めて再認識し、行っていきたいと考えます。
 特に、20代、30代が希望を持てる社会にしていくことが大事です。終身雇用制が崩れて、人をこまとして、パーツとして使い捨てていくことにより、意欲、気力、生活力は低下し、人の再生産につながらない。
 成果主義は良い面もあるが、行き過ぎると、人のことにかまっていられない、自分が生き残るために人の面倒を見ていられないといった状態に陥り、個々人がばらばらになり、最終的に自らも疲弊していくことが危惧されます。
 そのような中で、長いこと日本の中で行われてきた、職場や地域社会における技術や文化の伝承、発展は、社会の構造自体の大きな変化に伴い非常に大きな課題になっていると考えます。
 先日、聖路加国際病院副院長・小児総合医療センター長 細谷亮太さんの講演を伺いました。細谷さんはご専門の小児がんの治療において、トータルケアに取り組んでいる。死の危機に常に向き合っている子どもたちやご家族に対して、心のケアから経済的な問題に至るまでトータルにケアして、子どもたちの心の声を聴きながら対話し、ご家族に安心のメッセージを渡しながら取り組んでいらっしゃることに感銘を受けました。
 また、お話の中で紹介された2006年の人口動態統計では、20〜24歳までの死因の1位が自殺、15〜19歳では自殺が2位、10〜14歳では3位となっており、大変深刻な事態だと感じます。
 地域社会にきずなを感じられることも大変重要です。帰属意識、有用感〜自分が必要とされているという感覚、自己肯定感は、人が生きていく上で欠かせないものです。市民生活は縦割り、或いは、子どもや高齢者といったライフステージで切り分けることはできません。全てがかかわり合い、繋がり合っているのです。
 特に、世代間の絆づくりは大変重要だと思います。高齢者と子どもの一体化、子どもを育てる力を結集していくことも大切です。また、地域での生活をサポートするには、フォーマル(公の)・インフォーマル(公でない)のサービスをうまく連携していくことが必要です。
 7月10〜13日にはぺあも〜る商店街でオープンサロンが開かれました。普段は志木二小教育福祉ふれあい館で活動しているいきいきサロンの方々が、ぺあも〜るの空き店舗を活用して、大変積極的にいきいきと活動されていました。
 まさに、世代間或いは多様な共生で、障がい者の作業所の方々が手づくりクッキーを売っていたり、高齢者の方たちは楽しく健康マージャン、ダーツ、囲碁、歌声サロン、落語を聞く会等、よりどりみどりです。ご家族連れで入ってこられ昔の遊びをやったり、子どもたちの工作クラブ等、小さな共生社会、地域の融合がそこにあると感じました。
 また、話し相手ボランティア「語楽の会」(申し込み・お問合せは志木市社会福祉協議会ボランティア・市民活動センター474−6508)の方々も一緒に活動されていました。社会福祉協議会が年7回にわたる研修を毎年行い、3年で55名の傾聴ボランティアが養成され、活動されています。
 そのうち36名が「語楽の会」として、志木二小教育福祉ふれあい館や宗岡小ふれあいサロン、グループホームみんなの家・志木柏町、デイサービスセンター大樹、デイサービスセンターブロン等に出向いて、一人ひとりの高齢者のお話をお聴きする。「お話しができない方は、じっと手を握っているだけでもスキンシップでいいのよ」ということです。
 施設では、どこも人手が限られており、ボランティアしか話し相手がいないと介護者から聞いていたので、ありがたいことです。
 また、ケアマネジャーが地域包括支援センターに連絡し、語楽の会を紹介、一人ひとりのニーズに合わせてご自宅を訪問し、じっくりお話しを伺うといった活動もされているそうです。
 公的なサービスだけでは担えないところを社会福祉協議会や市民団体が協力し、それぞれの「してほしいこと」と「出来ること」をうまく繋いでいくこのような取り組みも、いろいろな形で広げていきたいと考えます。
 また、現状の地域コミュニティを発展させて、地域社会における新たなコミュニティを再生していく。市民協働運営会議の提言書にもありましたが、町内会を基盤にしながら、校区単位の地域のしくみづくりも、コミュニティの再生自立向けて考えていく必要があります。
 さらに、協働のあり方については多様性が必要です。民間と民間、民間と行政など協働の多様性の中で、例えばいきいきサロンのように、民間事業者・行政・社協等とうまく連携、コラボレーションしながら、みんなで目的に向かってお互い汗を流し、知恵を出し合っていきたいと感じます。
 それらを大きく支えていく市の組織のあり方は非常に重要です。志木市という使命、ミッションを持った、一つの体としての組織でありたい。
 市長のことをトップと言われますが、市長だけが頭で職員の皆さんが手足ということではないと思います。知恵を出し合うところは市長も含めて、みんなでやっていきたいと思いますし、より一層それらが活発になされる組織でありたいと思います。
 能率・効率だけでは測れない人の価値。一人ひとりがチームの中でなくてはならない存在ということを互いに認め合っていく。7万人の市民を支えていくには、支える組織も、どんな人にも光を当てることができる集団としての組織でありたいと思います。
 すべての人の良さを見出し、力が発揮できる組織であれば、市民にもそのように向けていくことができるでしょう。人を大切にできる組織は市民を大切にすることができると思います。
 「大切にする」ということですが、私は、人を信じる、信じられることだと思っています。
 「信じる」ことは、例えば市民と行政の関わりであれば、単に「何もかも市民の言うとおりです」とは違うと思います。しっかりと信頼関係を持てるからこそ、そこに責任もあるし、お互いに切磋琢磨して対等にものを言っていくこともできる。そこに、真の協働の基盤があると私は考えます。
 行政の方々はそれぞれ行政のスペシャリストであると同時に、人間としてのゼネラリストでありたいと、細谷亮太さんのお話を伺って、私は心から深く感じさせていただきました。私もそのように努力していきます。
 長沼明市長からは、「議員のご提言のように、人を育てることの重要性、地域社会における人と人のつながりを深めることの重要性、さらに地域社会の再生についての重要性については、私も全く同感であります。
 市では、志木市人材養成基本方針に基づき、職員の人材育成に当たっては、市民に信頼され、市民と協働し、自ら磨き、地方主権のまちづくりを推進する職員の育成に取り組んでいます。
 また、2期目のマニフェストに掲げたまちづくりのスローガン、健康・医療・福祉都市構想を実現するためにも、保健・医療・福祉の関係者と地域社会が一体となり、人に優しく、お互いに支えあわなければ達成することはできないと考えています。」との答弁がありました。
 市長のマニフェストを推進していくことはもちろんですが、日々の窓口業務、或いはフィールドワーク、市民とのコミュニケーションや、地域の中での取り組みが非常に大切です。現場を知らない人にマネジメントはできません。その中で、個々の課題を見出し議論して政策・立案につなげていくことが大変重要です。現場重視の取り組みを求めました。
2.環境行政について〜環境基本計画、自然保全再生計画等〜
 3月末に第二期志木市環境基本計画が策定されましたが、市長からの委嘱を受けた環境市民会議(公募の市民を含む)の皆さんが素案を作成し、環境審議会でも何度も議論されてきたにもかかわらず、最終段階になって自然環境の領域が突然外され、環境市民会議メンバーには何の連絡・相談も無く、出来上がった冊子を見てそのことを知るという問題が発生しました。環境面からも市民協働のあり方からも放置できないので、市民生活部長に伺いました。
 小山部長は「環境という横断的な計画であっても、おのずとその範囲は限定される」とのことで、自然環境については自然保全再生計画(2002年3月)、公園・緑地等については緑の基本計画(2001年3月)で進めるということのようですが、自然保全再生計画については昨年実施した公共事業に関わる検証もいまだに行われておらず、緑の基本計画に至っては市民協働で策定したものの、行政としての進行管理すら行われていない状況です。
 市民はそういった状況も踏まえて、自然環境という範囲の中で、着実に地道に推進していこうと、行政とともに素案づくりに取り組んできたということです。
 志木市では穂坂市長時代に市長の思いもあり、環境基本計画とは別に自然保全再生計画を策定しましたが、志木市とISO14001に替わる相互環境監査を行っている新座市では、自然再生に関わるミティゲーション(回避、最小化、代償)等についても環境基本計画の中に位置付け、進行管理についてはPDCA〜プラン、ドゥー、チェック、アクションのマネジメントサイクルで、審議会や市民からの意見公募も含めて組織的、システム的に取り組まれているようです。
 こうした点についても日常的に調査・研究を行い、最初の段階で市民と議論し、組み立てていくべきではなかったか。積み残されている緑の基本計画を含め、どのように志木市として環境を守るという社会的責務を果たしていくのか、市民・行政とともに考え、提言を続けていきます。
3.福祉政策について 〜子どもと高齢者の共生〜
 子どもと高齢者の共生についての視点を持って今後の行政に取り組んでいただきたいとの趣旨でとりあげました。
 先日、近隣市で実践されている現場を視察しました。社会福祉法人が経営する保育園に地域子育て支援センター(市委託)、老人デイサービスセンター及び指定居宅介護支援(ケアマネジメント)事業所を併設、市の委託事業として配食サービスもされていました。
 朝行くと、清掃は本来シルバー人材センターの方が入っているということですが、職員が一生懸命拭き掃除をされていました。ちょうど七夕の日だったので、90名の園児と17名のデイサービスのお年寄りの皆さんが一緒になってお誕生日会と七夕会をされて、お年寄りの皆さんは自然に小さい赤ちゃんを抱っこされ、柔和な優しい表情です。全盲の方や聴覚がご不自由な方もいらしたのですが、全くそういうことを感じさせない、言われなければ気付かないくらい、生き生きと活動されていました。
 園児の方々も、心なしか非常に落ちついて、情緒が安定している感じを受けました。
 日常的に多様な世代の方々と家族のように暮らしていることで、「お年寄りってこんなに知恵があるのか」そして、「お年寄りってこんなに体が弱いのか」ということも、子どもたちは自然にわかっていくと、デイサービスの所長がおっしゃっていました。
 併設のきっかけも実に自然で、毎日散歩がてら保育園に子供たちの様子を見に来る近隣のお年寄りに、中にどうぞと座布団やお茶を出して、サロンのようにお年寄りが来るようになり、こうした日常的な触れ合いもできるように地域のニーズに応じて老人デイサービスを開始した。居宅介護支援事業所では、志木市の介護保険の認定調査も受託されているとのことで、ありがたいことです。
 地域子育て支援センターに来られている親子も七夕会に足を運び、園児やデイサービスの皆さんと一緒に交流されていました。
 これからのあるべき子育て支援や共生の、社会におけるあり方を感じさせていただきました。
 尾崎健康福祉部長からは、「現状でも志木二小、宗岡小における生きがいサロン事業での子どもたちとの交流をはじめ、保育園では地域の高齢者施設との連携による世代間交流事業を行っている。
 今後も、高齢者施設については介護保険事業計画の基盤整備の中で、子どもの施設については、民設民営による新たな保育園の整備を促進する中で、子どもと高齢者が生き生きと交流できるような環境整備についても留意していきたい。」との答弁がありました。
 今年も、市は認知症高齢者のためのグループホーム1ヵ所、小規模多機能生活拠点1ヵ所を公募しましたが、応募はありませんでした。再三提言していますが、特に小規模多機能生活拠点については単独では成り立たないのです。ですから、和光市などでは知恵を絞って、老人福祉センターと一体で運営するようにしています。
 デイサービスや居宅介護支援事業所についても、単独で用地や建物を確保し経営するのは、限られた介護報酬の中で困難を極めており、介護職員も定着しないなど社会全体の課題です。民間にお任せではなく、民間の事業者が採算性も含めて事業として成り立っていくように、その中で、よりよいサービスを市民に提供できるようにといった視点をしっかり持ってマネジメントしていただきたいと提言しました。
4.図書行政について 〜市民、地域社会とともに歩み発展する図書館、図書サービスをどうつくっていかれるか〜
 柳瀬川図書館の指定管理者制度については様々なご意見が寄せられています。「指定管理者制度にした場合のメリットとデメリットは何なのか。」また、「サービスの向上って何なの?従来の休館日を開館することがサービスの向上とはいえないでしょう。」さらに、「戦前・戦中という時代を生きてきた中で、守秘義務についても非常に心配がある。心の領域に図書サービスというのは踏み込む部分であるから。」
 また、「協働の基盤が無いところに、図書館の存在の意義や意味を市民が充分理解できていない状況下で、いたずらに経費節減のために進めることは問題だと考えます。(社)日本図書館協会の見解や、他市町村での民営化に関する議論などをよく噛み締めて取り組む課題だと考えています。」
 重要なことは、このような様々な市民の方々の思いをしっかりと酌みとって議論の中に反映し、位置付けて、市民への説明責任を果たしていくことだと考えます。
 今議会では白砂教育長から「指定管理者制度については図書館協議会に諮り、委員の方々の中で議論をしていただく。」また、内田教育委員会委員長からは「図書館協議会での議論を踏まえて教育委員会でも改めて議論、検討させていただきたい。」との主旨が明らかにされましたので、ぜひ、多様な意見を議論に反映していただきたいと思います。
 図書館協議会には校長会、小中学校図書主任会の代表、地域の様々な関係者に加えて学校図書相談員、市内のよみきかせ、おはなしボランティア等、現場で熱心に活動されている方々にも入っていただく準備をすすめていると聞いていますので、活発な議論を期待し、見守っていきたいと思います。
 柳瀬川図書館は市民とともに創り育ててきた地域の大切な公共施設であり貴重な社会資源です。様々なサービスの運営に市民がかかわり、地域の資料や情報の拠点としての役割はもとより、少子高齢化が加速しているこの地域を支える重要な公共施設であると認識しています。
 私も出席させていただきましたが、6月20日に志木市子ども読書活動推進計画策定市民フォーラムが開かれ、市民からは沢山の質問、ご意見が寄せられて、熱心な議論が行われました。子どもの読書活動推進計画の施策の推進や、図書館のこれから果たす役割や発展を市民とともに考えていくことが、市民と協働する図書行政、図書サービス、図書館の運営、ひいてはまちづくりにかなうことだと考えます。
 フォーラムでは指定管理者についての質問も多く寄せられ、講師の坂部先生からは、いずれにしてもそれまでの行政で行っている図書サービスがどのようなレベル、水準であったかが重要になってくるというご指摘がありました。
 従来、図書に関わる多様な関係者が連携を図ろうとしても、一緒になって取り組める機会がなかったとの意見も聞かれ、図書行政にかかわる方々、学校関係者、ボランティアや市民の皆さんが一緒になって、この子ども読書活動推進計画をきっかけに、子どもを取り囲んで連携していかれるチャンスと感じています。
 白砂教育長からは「この計画をよりよいものにしていくため、市民フォーラムで出された意見や提案等を参考にするなど、今後とも市民の理解を深めつつ、本市の教育の発展と文化の向上に努めていきたい。」との答弁がありました。
 指定管理者も含めて、全体として市民の理解と協力を得ながら一緒に取り組んでいく姿勢と受けとめ、今後も注目していきます。
(2009年09月)
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