老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の建設について
なぜ、計画が白紙となったのか?
 中宗岡5丁目に民間事業者が計画していた老人福祉施設(特別養護老人ホーム80床、デイサービスセンター、在宅介護支援センター等)について、「近隣住民の同意を得ていない」という、事業者側の手続きの不備により、計画自体が白紙に戻ることとなりました。2001年度予算における市の補助金1億5000万円も、12月議会で減額補正されました。
 施設が完成すれば、老人保健福祉計画及び介護保険事業計画の目標値を達成できること、市内の待機者は100名に達していること等から、市も市民も待ち望んでいた施設であり、大変残念です。
どのような経緯だったのか?
 1999年12月に、市に老人福祉施設を建設したい旨の相談があり、市からは設立予定者に対し、市としての施設整備への要望事項を要請したとのことです。
 その後、設立予定者は、申請窓口である県入間東福祉保健総合センターとの協議を経て、2000年7月下旬に設立計画書を県に提出しています。
 この計画書の添付書類として、設立予定者から、市の意見書の提出依頼と、建設に対する助成要望書が提出されています。これに対し、市は、必要な施設である旨の意見書を提出し、助成に応じる旨、回答しています。
 そして、12月議会で施設の概要が明らかになり、2001年3月議会で市としての補助も決まりました。
 市としては、この間、施設建設について近隣住民の理解は得られているものと思っていた。また、市民・介護支援事業者へのPR等についての具体的な依頼も再三行ったということです。
 しかしながら、01年5月に市民から、いまだ近隣住民への説明がなされていないようだとの情報があり、市は設立予定者に対し、対応を促してきたということです。
 これに対し、7月に入ってやっと近隣住民のごく一部についての説明会が開かれましたが、直接影響を受ける近隣住民全てに説明してほしいとの要望が出され、8月初旬に説明会が開かれたものの、近隣住民には事実が一切知らされぬまま計画が進められてきたことへの不信感等から、国庫補助内示の期限である8月中の同意には至りませんでした。
近隣住民の同意は設立許可計画書提出(2000年7月)の条件
 私は、01年8月初めに問題となっていることを知り、早速、県長寿社会政策課主幹に説明を求めたところ、「近隣住民の同意」は、2000年7月に、設立許可計画書を県に提出する際の条件であるということです。すでに、1年以上前に済ませておかなければならない基本的な手続きを、設立予定者は怠っていたことになります。
 「近隣住民」の範囲は定められていませんが、地域の中で運営される社会福祉施設として、地域の理解と協力は欠かせないという主旨です。また、万が一、同意を得ないで建設に着手し、補助金が支出されてから地域等とのトラブル等で中断してしまえば、大きな問題にもなりかねません。
 今回も、総事業費約15億5,000万円中、国・県・市合わせて13億円超の補助金、つまり税金が投入される計画でした。彩福祉グループの補助金不正流用問題も記憶に新しい中、適正な手続きが必要であることは、言うまでもありません。
 2001年8月29日、近隣住民から県に提出された要望書を受け、県も、申請書類上は「近隣住民に説明」としながら実際は行われていなかった事態を重く受け止め、同日付で、説明会の開催報告書や資料の提出を義務付ける等、審査を強化する方針を、各福祉保健総合センターに通知しました。
 厚生労働省は、2002年度以後新たに建設される特別養護老人ホームについて、完全個室化の方向性を打ち出しました。個室には家具などが置ける等、施設を「暮らしの場」に転換しようというものです。今回の計画では、4人部屋となっていました。
 また、県は、今後申請される老人福祉施設についても、近隣住民の同意が無ければ受理しないこと、更に、市も、近隣住民の同意を市からの意見書提出の条件とすることを明言しています。
 01年7月に県が市町村に出した通知においても、社会福祉施設の建設に関する意見書には、設立代表者の適格性、建設場所の妥当性、都市計画上の障害の有無、地元住民の理解等について記入することとされています。
 計画の段階から、市及び近隣住民を初めとした市民と充分に話し合う中から、共に、地域福祉における施設の機能、経営理念、運営方針等を固めていくことの重要性を、社会福祉法人を設立し、社会福祉事業を行おうとする方々に認識されるよう、市としての役割を果たしていって欲しいと思います。
(2002年1月)
県内初の全室個室として注目される、社会福祉法人
ルストホフ志木の特別養護老人ホーム『 ブロン』
志木二中生徒会のボランティア活動「ブロン訪門」

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