Live Reports from Rugby Stadium

熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 "Play Back 1998"

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○観戦記録 日本大学 vs 流通経済大学(1998年10月3日)

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(1998/10/03) 於:熊谷ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 日本大学  :前半: 2  2  2  0 20 |
       :後半: 1  1  0  0  7 |  27 29
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 流通経済大学:前半: 0  0  1  0  3 |
       :後半: 2  2  2  0 20 |  23 17 


◎出場メンバー

 日大 : 1.田中 2.矢巻 3.川村 4.栗原 5.安田 6.三縄 7.鷲谷 8.横瀬
      9.沢木 10.日原 11.窪田 12.野杁 13.今利 14.北條 15.田原
     (16.草津 17.大渕 18.高野 19.宮野 20.宗岡 21.海藤 22.岩木)

    ○交替  6→17(後8分交代)

 流経 : 1.友利 2.猪狩 3.菅野 4.田島 5.中西 6.沼尻 7.横山 8.市原
      9.後藤 10.加瀬 11.田嶋 12.関 13.大島 14.岩崎 15.ニールソン
     (16.荒井 17.川井 18.島田 19.中込 20.田草川 21.阿部 22.野瀬)

    ○交替  4→17(前29分入替)、6→19(前39分入替)、7→18(後7分入替)
        3→16(後30分入替)       

 レフリー : Edward J.Ellis(香港協会)  タッチジャッジ : 不明


◎得点経過

 日本大学    0          3             6        13    20        20
                          P             P        G     G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                                              P
 流通経済大学  0                                    3             3


 日本大学   20              27                                 27
                        G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
           G  G             P              P
 流通経済大学  3 10 17            20             23              23

 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 日大:前半 9分 日原(PG)
      23分 日原(PG)
      32分 沢木(T)、日原(G)
      38分 北條(T)、日原(G)
    後半13分 北條(T)、日原(G)

 流経:前半35分 加瀬(PG)
    後半 0分 市原(T)、加瀬(G)
       3分 ニールソン(T)、加瀬(G)
      17分 加瀬(PG)
      32分 加瀬(PG)


◎試合内容

最後までどちらが勝つか分からない、手に汗握る熱戦だった。この試合は間違いな
く今シーズンのリーグ戦Gのベストゲームのひとつになると思う。

それにしても、日大の順調な仕上がりぶりには驚かされた。開幕前に充実したトレ
ーニングを積んできたことが伺われる。今日の日大を観てしまうと、シーズン初め
に調子が出ないチームの指導者の方々がよく口にする「シーズン序盤だから..」
とか「怪我人が多いから..」という言葉が言い訳にしか聞こえなくなる。

一方の流通経済大ですが、惜しくも敗れたとは言うものの、昨シーズンより着実に
パワーアップしている。大学選手権で国立を目指すためには、FW(特にスクラム)
を徹底的に強化するという選択肢もあるが、「忠実に走れるFW」は流通経済大ラ
グビーを支える大きな柱。日大と同じようにステップ・バイ・ステップで少しずつ
レベルアップしていけば、必ず頂点に立てる日が来るはず。

この試合は「僅差の好ゲーム」で、流通経済大にも勝機はあった。が、冷静に振り
返ってみれば地力に優る日大の順当勝ちというのが妥当なところだろう。日大はこ
れからますます伸びていきそうな感じである。流通経済大も昨シーズンに比べると
余裕を持った戦いが出来そう。明日の法政大対専修大を見てみないと何とも言えな
いが、この2チームは間違いなく今期のリーグ戦Gを引っ張っていく存在になるこ
とだろう。

[前半の戦い]

キックオフ早々、日大がいきなりBKに展開し場内がどよめいた。日大フィフティ
ーンが「今年はBKで勝負!」を高らかに宣言した瞬間でもある。WTBまで気持
ちよくボールが回ることが多かったのがこの日の日大。

試合は序盤から昨年と同様FW戦で優位に立つ日大のペース。流通経済大がゴール
ラインを背にしてひたすら耐える展開となった。何度も5mスクラムの場面で日大
のトライを阻止する流経大FWの姿に、昔の早明戦を思い出してしまった。日大の
得点を8分と22分のPG2本に抑え、何とか凌ぐ流経大。

しかし、32分についに流経大の鉄壁のDF陣に穴が出来てしまった。ゴール前ス
クラムからSH沢木が相手をかわしてトライ。34分に流経大加瀬が日大陣10m
ライン付近で得たPGを決めて13-3としたものの、38分には日大の切り札である
右WTB北條がトライを決めて20-3と突き放す。日大ボールスクラムの場面でオー
プンに回り込み、SHからパスを受けた後、襲いかかってくるDFの選手達を嘲笑
うかのように密集を抜け出て30m独走した見事なトライだった。

後半はもっと点差がつくのでは、と予感させる終始日大ペースで進んだ前半だった。
ただ流通経済大の選手達はFW戦で粉砕された感のある去年に比べると肉体的にも
精神的にもダメージを受けていないよう。後半の巻き返しも十分に期待できそうな
感じではあったが...。

[後半の戦い]

後半開始。流通経済大のSO加瀬がキックオフしたボールは日大陣深くへ。日大選
手が処理をもたつき、ボールがインゴールに転がったところに流通経済大No.8の市
原が飛び込んでトライ。「日大の気の緩みから出たミス」と行ってしまえばそれま
でだが、しっかりフォローに行ったFWの選手が居たということが大きなポイント
だった。15人ラグビーの流通経済大を象徴するような見事なトライ。

そして後半3分。出ました!流経スペシャル。日大陣10m付近のラックから出た
ボールをSH後藤がショートサイドに回り込んだSO加瀬にパス。加瀬が相手DF
が一人多い局面でありながら、十分間合いを見計らってタッチライン際を走ってい
たFBニールソンへ。ニールソンはそのまま相手DF2人をかわして約30m独走
してトライを決めた。このコンビからは今年も目が離せない。得点差は一気に3点
に縮まり、流通経済大に1本出れば逆転!というスリリングな展開になった。

これらの先制パンチ2発が効き、日大もやや浮き足立ってしまった感じ。前半とは
対照的に後半の試合はほとんどが日大陣内で進められた。流通経済大のオープンラ
グビーが全開となり、しばしば日大ゴールを脅かすことも。しかしながら、不利な
形勢でも崩れないのが日大のよく鍛えられたところ。決定的なところで流通経済大
にノックオンなどのミスが出たのも、日大DF陣がしっかり相手にプレッシャーを
かけて守っていたからに他ならない。

前半とは逆に、耐えていた日大にチャンスが回ってきたのが後半の13分。ハーフ
ウェーライン右側付近のスクラムからSH→SOとショートサイドに展開し、大き
くゲインしたところでボールはまたしても切り札の北條へ。ここでも北條は約20
m独走してトライ。3点まで縮まった点差を10点に拡げる貴重なトライだった。

このトライがあっても流通経済大優位は変わらず、16分、31分に加瀬がそれぞれP
Gを決め、ついに23-27。1トライで流通経済大が劇的な大逆転というところまで
来てしまった。しかしながら、勢いに乗って攻める流通経済大も強固な日大DFを
最後まで破ることが出来ず、ノーサイド。アタック、ディフェンス両面での日大の
安定した戦いぶりが強く印象に残る幕切れだった。

[全体を振り返って]

日大は去年以上の強力なチームを作り上げたようだ。しかも発展途上。たしかに、
去年の龍や沢木といったような卓越した選手は居ないが、そのことがかえってチー
ムに一体感をもたらしているように思われる。ミスが少ないのも大きな強み。去年
は得点パターンが限られていたが、今年はどこからでも得点できる力を持っている。
とくに本日光っていたのはSOの日原。その正確なキックは今期の日大の強力な武
器になるはず。WTBの北條も怪我さえなければ大活躍するだろう。

敗れはしたものの、流通経済大は着実にレベルアップしている。FWは押されなが
らもスクラムから何とかマイボールを出すことができたし、ラインアウトも去年よ
りはるかに安定していた。でも、特筆すべきは、やはりカバーリングの素晴らしさ。
とにかく15人がそれぞれどのように動けばいいかがよく分かっているチームであ
る。そして、ニールソン。日本で一番安心して見ていられるFBと言って間違いな
いだろう。どんなにプレッシャーがかかった状況でもほとんどミスしない。

この両チームが初戦であたってしまったのは確かに残念。だが、逆にこの戦いがリ
ーグ戦Gの今後の展開をより引き締まったものとすることは間違いないように思わ
れる。「今日はあちら(秩父宮)に行かなくて良かった」と言う声がスタンドのあ
ちこちから聞こえた。熊谷の試合はTV中継がなくて本当に残念である。
                            (1998年10月3日記)

[回想 after 2003]

日大のSO日原はもちろん現在トップリーグの東芝府中で大活躍している選手。史
上最強のメンバーが卒業した跡を受けて、副将として才能溢れる若きBK陣を引っ
張るチームの中心的存在であった。SHに沢木智(現サントリー)、両WTBには
窪田(現NEC)、北條(現サントリー)が、またCTBには今利(現ヤマハ発動
機)といった現役バリバリのトップリーガー達が名を連ねている。

この試合で順調なスタートを切ったか見えた日大だったが、以後2試合は日原の負
傷欠場でチーム状態を落としてしまったのが残念。選手層の薄さを露呈させる形と
なってしまった。ただ、今にして思えばこのモデルチェンジがその後のチーム状態
を低迷させる一因にもなっていたように思う。オープン展開を指向するためには1
5人がいかに組織的に動くかが要求される。逆に日大の場合は、組織的に戦うとい
う意識が年々落ちていくように私には感じられた。その後もBKに素晴らしい人材
(武井、河野、藤原など)を得ていることを思うと残念だったというほかない。

Edited by Kazunori KONO, March/28th/2004   Back