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熱闘!関東大学ラグビー・リーグ戦 "Play Back 1998"

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○観戦記録 流通経済大学 vs 山梨学院大学(1998年11月7日)

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(1998/11/07) 於:熊谷ラグビー場(B)

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 流通経済大学:前半: 2  0  1  0 13 |
       :後半: 4  2  1  0 27 |  40 12
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 山梨学院大学:前半: 0  0  0  0  0 |
       :後半: 1  0  0  0  5 |   5  7 


◎出場メンバー

 流経 : 1.友利 2.猪狩 3.久保木 4.中西 5.和田 6.中込 7.横山 8.市原
      9.田草川 10.加瀬 11.田嶋 12.伊藤 13.大島 14.岩崎 15.ニールソン
     (16.菅野 17.沼尻 18.島田 19.戸辺 20.後藤 21.阿部 22.島名)

    ○交替  9→20(後16分入替)、2→16(後25分入替)、7→18(後25分入替)
        15→21(後41分入替)


 山梨 : 1.手塚 2.武川 3.塚原 4.加藤理 5.寺田 6.丸山 7.大山 8.久保田
      9.佐藤 10.中村 11.南 12.三富 13.藤本 14.北川 15.橋本
     (16.山崎 17.山下 18.長田 19.上條 20.吉永 21.栗根 22.松岡)

    ○交替  10→21(前16分交代)、14→22(後34分交代)     


 レフリー : 石本(九州協会)  タッチジャッジ : 藤間、倉田


◎得点経過

 流通経済大学  0        5               10  13                   13
                        T               T   P      x
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
           
 山梨学院大学  0                                                  0 


 流通経済大学 13   18        23      30 37        40             40
             T         T        G G         P
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                                             T
 山梨学院大学  0                                   5              5

 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗


◎得点者

 流経:前半 7分 FW(T)
      23分 ニールソン(T)
      27分 加瀬(PG)
    後半 2分 田草川(T)
      12分 伊藤(T)
      21分 ニールソン(T)、加瀬(G)
      23分 横山(T)、加瀬(G)
      33分 加瀬(PG)

 山梨:後半34分 南(T)


◎試合内容

明日の新聞の見出しを予想すると「ついに親父を超えた!」といったところだろう
か。流通経済大の上野監督は実は山梨学院の上野監督の長男。流通経済大は2部時
代に山梨学院と2度対戦し、いずれも敗れている。でも、この日の流通経済大の見
事な勝利をそういった「人情話」にすり替えてしまうのはもったいないと思う。新
聞では日々成長を続ける流通経済大の生々しい姿をどの程度書いてくれるだろうか。

もちろん、スコアを見る限りは、「流通経済大、意外に苦戦したな。」と思われる
方が多いかもしれない。しかしながら、80分間を通じて山梨学院がラグビーをさ
せてもらったのはせいぜい10分間くらい。FWのサイドアタック、ドライビング
モールを起点として、しっかり形を作って攻める流通経済大の終始安定した戦いぶ
りだけが印象に残っている。この勝利は、過去に見た流通経済大のどの勝利よりも
見事なものだった。

[前半の戦い]

本日の流通経済大の先発SHは4年生の田草川。昨年大活躍したスーパーSHの池
田(現NTT東北)の控えだった選手である。正SHの後藤がケガをした様子もな
ので何故かなと思っていたが、その狙いは試合が始まってしばらくしてわかった。
これまでの試合には見られなかったくらいFW戦にこだわった流通経済大にあって、
巧みにFWをドライブするNo.9の姿がグランド上にあったからだ。

そんな流通経済大を象徴するかのように、その最初のトライ(7分)はモールから
生まれた。No.8のサイドアタック、ドライビングモールによる執拗な押し込み、そ
してスクラムを含めてFW戦で終始圧倒された山梨学院は相当面食らったのではな
いだろうか。流通経済大のやっているラグビーこそ、自分たちがやろうと思ってい
たラグビーだったはず。

もちろん、流通経済大のFWプレーへのこだわりは、攻撃能力の高いBKを活かす
ためのもの。今までの流通経済大であれば、セットプレーからやっとの思いでボー
ルを出し、あとはBKに委ねるというパターン(どちらかと言えば綱渡りの状態)
で攻めるのが普通だった。しかしながら、FWが安定しているとより攻撃に多彩さ
が増すのが流通経済大のラグビー。そのこともあってか、本日のSO加瀬のゲーム
コントロールは完璧だった。

山梨学院の執拗な抵抗に遭って得点こそ積み重ならないものの、序盤から完全な流
通経済大ペース。そんな中、23分にスーパープレーが飛び出した。モール、ラック
を連取していよいよ山梨学院陣ゴール前へ。攻める流通経済大側もラインの人数が
足りなくなってしまったところで加瀬がゴール前にショートパント。流通経済大の
選手が消えた?と思ってよく見たら、ゴール前の右サイドに位置取りしたFBニー
ルソンの姿があった。加瀬君の「キックパス」をダイレクトでしっかり確保して難
なくトライを決めてしまった。

世界選抜(だったと思う)でジャパンの吉田が決めたスーパートライと比べればス
ピードは半分くらいの感じだが、確実に意図したプレーができたという点では、決
して見劣りしない見事なトライだったと思う。(でも、後半同じプレーをもう一度
見ることになるとは思わなかった...。)

流通経済大は27分にも加瀬がPGを決めて13-0とリード。ゴールキックは前半4本
中3本失敗とプレースキックは今一歩冴えない本日の加瀬だった。山梨学院は攻め
てもなかなかゲインラインを突破することができない。流通経済大のゴール前に迫
るシーンもほとんど見られず、山梨学院は得点の糸口すらつかめないまま前半が終
了した。

[後半の戦い]

後半も前半と同じようにFWを中心に攻め続ける流通経済大。後半3分のトライも
山梨学院ゴール前でのモールを押し込んだことにより生まれたものだった。山梨学
院はどちらかといえばFWのチームだったはず、ということを考えれば、流通経済
大のFWの着実なパワーアップぶりを感じずには居られない。

そして、12分にはまたしても見事なトライが生まれた。前半とまったく左右が逆
の状況で、加瀬が今度は低い弾道で左オープンにキック。しっかり左に開いていた
伊藤主将がこのボールを確保してゴールラインへ迫る。伊藤は一度山梨学院のタッ
クルにあって倒されかかったものの、見事体勢を立て直してインゴールに飛び込ん
だ。加瀬の見事にコントロールされたキックと伊藤主将の執念が合体して生まれた
トライと言えるだろう。

21分には流経大の十八番のオープン攻撃によるトライ、続く23分にはドライビ
ングモールによるトライが相次いで生まれて37-0。さらに32分にはPGによる3
点が追加されて40-0。焦点は流通経済大がこのまま無失点に終わるかどうかだった。

しかしながら、その直後の34分に山梨学院も意地を見せる。山梨学院キックオフ
で流通経済大が確保したボールをターンオーバー。左に展開して13番藤本が大きく
ゲインして11番南にパス。南はそのまま約30Mを独走して山梨学院が一矢報いた。
山梨学院の選手では何度か鋭い突破を見せていた藤本の活躍が目立っていたが、い
かんせん単発という感じだった。

35分には流通経済大にシンビン(たぶん危険なプレー)による一時退場者が出た
ものの、試合はそのまま終了。流通経済大の横綱相撲に終始した80分間だった。

[全般を振り返って]

監督は山梨学院が「親」で流通経済大が「子」ですが、チームの場合は親子が逆転
してしまっているように見えた。グランド上の15人全員が何をやればよいか分か
っている流通経済大に対し、山梨学院はまだそこまで行っていない。「声」は圧倒
的に山梨学院側から出ているのだが、裏を返せばそれだけ各選手の動きが混乱して
いたとも言える。要所要所でゲームリーダーが簡単に指示をするだけで済んでしま
う流通経済大は、見ていてとても気持ちがよいチームだ。

本日は熊谷Bのバックスタンドからグランドレベルに近い位置での観戦ということ
もあって、流通経済大の攻撃を斜め後ろから眺めるような位置で試合を見ていた。
加瀬の判断力、ニールソンの危機察知能力、そしてラインの流れるようなコンビネ
ーションなど、流通経済大ラグビーの面白さが堪能できた。それにしても、加瀬の
キックコントロールは見事というほかない。

[珍?プレー(余談)]

後半19分のことだった。FWを見事にドライブするなど大活躍していたSH田草
川が突然の入れ替え。あわてて駆けつけるメディカルチーム。本人は単に足がつっ
ただけだったのだが、ベンチには足を痛めてしまったと誤って伝わってしまったよ
うだ。「(事実を誤って伝えた)○×にあとでちゃんと言っといてよ」。ベンチに
引き揚げる、照れくさくもあり、にこやかな表情の田草川が印象的だった。
                            (1998年11月7日記)

Edited by Kazunori KONO, March/28th/2004   Back