LIVE REPORT from RUGBY STADIUM

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○観戦記録 関東学院大学 vs 中央大学(2003年11月2日)

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2003/11/02) 於:秩父宮ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 関東学院大学:前半: 1  0  0  0  5 |
       :後半: 3  3  1  0 24 |  29 10
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 中央大学  :前半: 3  1  0  0 17 |
       :後半: 0  0  0  0  0 |  17 23

◎出場メンバー

 関東 : 1.土肥 2.山本 3.田中 4.三根 5.犬飼 6.林 7.深沢 8.八木
      9.高安 10.入江 11.水野 12.田井中 13.河津 14.北川(智) 15.有賀
     (16.北川(喬) 17.坂本 18.里見 19.小畑 20.堺田 21.霜村 22.大津留)

    ○交替  7→20(後11分入替),1→16(後28分入替), 9→20(後38分入替),

 中央 : 1.長谷川 2.立藤 3.藤本 4.末永 5.石丸 6.久保 7.森 8.日隅
      9.正田 10.升本 11.大野 12.橘 13.有田 14.室井 15.今藤
     (16.千田 17.池田 18.今井 19.荒川 20.寺本 21.工藤 22.中村)

    ○交替 6→19(後27分入替), 12→21(後33分入替)

 レフリー :石本 (日本協会)  タッチジャッジ : 田中、土屋、松崎

◎得点経過

 関東学院大学  0                5                                 5
                                T
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                                 G            T    T
 中央大学    0                       7            12   17      17


 関東学院大学  5     12       19           22           29       29
               G        G            P            G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
           
 中央大学   17                                                 17 

 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗

◎得点者

 関東:前半15分 林 (T)
    後半 4分 有賀(T)、入江(G)
      13分 高安(T)、入江(G)
      26分 入江(PG)
      39分 山本(T)、入江(G)

 中央:前半22分 立藤(T)、森(G)
      25分 室井(T)
      40分 森 (T)


◎試合内容

[試合前の雑感]

最後まで何が起こるかわからないのがリーグ戦の魅力であり怖さ。波乱を巻き
起こす潜在的可能性を持ったチームとして大東大を挙げたが、もう1チーム忘
れていた。リーグ戦で「魂のラグビー」を見せるチームと言えば中央大。前に
も書いたが、15人の力が一つになって前へ出るときの中央大の破壊力にはす
さまじいものがある。合理的な練習からはけして生まれ得ない不思議なパワー。

ただ、最近の中央大はあまり元気がなく、私の観た限りであるが「不発」のま
まシーズンを終えることが多かったように思う。接戦をものにできずに敗戦が
続いている今シーズンの中央大としては、ここで関東学院に一泡吹かせたいと
ころ。ではあるが、劣勢は否めないというのが衆目の一致したところ。もちろ
ん、キックオフ後にどんな凄いドラマが待っているのかは知るよしもなかった。

[前半の戦い]

キックオフから予想通り関東学院がペースを握る。自陣からでもキックを使わ
ずに確実にボールキープ。数次の攻撃で中央ゴール前まで迫る、まるでアタッ
ク&ディフェンスの練習(お手本)を見ているような開始からの20分間だっ
た。中央も執拗なディフェンスでなかなかゴールラインを割らせない。

ただ、このゲームの関東学院はいつもと違ってワイドに展開せず、意識的にF
W近傍を攻めていたように感じられた。実はこのFW周辺は伝統的に中央のデ
ィフェンスが一番堅いところ。過去、ここにこだわったが故に墓穴を掘ってし
まったチームは少なくない。

取れそうで取れないと得てして相手にペースを渡してしまうもの。そんな不安
が漂い始めた15分。ようやく関東学院に先制点が生まれた。中央ゴール前ラ
インアウトからモールを形成して押し込み、最後はFL林がトライ。入江のゴ
ールキックは惜しくもポストに弾かれたものの、関東学院は一息つくことがで
きた。ここからトライラッシュか、と思われたのだが...。

キックオフからおよそ20分経過。中央が反撃の狼煙を上げる。自陣からのア
ップ・アンド・アンダーで前進。関東学院の左WTB水野がキャッチングミス
したボールをすかさず拾ってオープンに展開し一気に関東学院のゴール前に迫
る。たまらず関東学院が反則を犯したところをクイックで攻め、最後はHOの
立藤がトライ。ゴールも決まり中央は逆転に成功した。中央応援席は俄然盛り
上がった。この日は升本のキックが好調で中央の有効な攻撃オプションになっ
ていた。もちろん、15人全員で前に出る意識があってこそであるが。

これで中央は完全に波に乗る。序盤とはうってかわって、ゲームはほとんどが
関東学院陣内で行われる展開となった。そして33分。関東学院ゴール前ライ
ンアウト(左サイド)から右オープンに展開。ゴール前付近でのラックからさ
らに右に展開しSO升本がショートパント。これを右WTBの室井が快足を飛
ばしてインゴールで押さえ中央のリードは7点に拡がる。

37分には関東学院が中央ゴール前に迫るものの、ノックオンで得点できず。
ここで中央の攻撃はさらにヒートアップ。前半終了間際の40分には関東学院
ゴール前ラインアウトからモールで前進。なぜか関東学院のショートサイドの
防御が薄くなっており、モールから飛び出す機会を伺うFL森主将(たぶん関
東学院側からは大型FWの陰に隠れて見えなかったのだろう)とコーナーフラ
ッグを結ぶ(トライへの)道筋が見えた。と思った瞬間、森主将がモールから
抜け出し一直線。見事なトライであった。右隅からのゴールキックは失敗した
ものの、これで中央のリードは12点に拡がる予想外の展開。

中央の選手達は、この流れのまま続けて40分戦いたいと思ったかもしれない。
それくらい中央の選手達の表情には鬼気迫るものがあった。関東学院は終了の
ゴング、ならぬホイッスルに救われた感がある。ベンチに引き上げる選手達は
まるで勝者と敗者。中央の応援席の側に居たせいもあるが、スタジアムには一
種異様な雰囲気すら漂っていた。アップする中央のリザーブの選手までもが元
気いっぱいに見えた。

[後半の戦い]

後半も開始早々は関東学院のペース。中央は自陣ゴール前で必死のディフェン
ス。守りに入らず前半の勢いで攻め続けたい中央にとっては我慢の時間帯であ
る。3分、関東学院がミス(反則)を犯したところで中央は一息。ゲームの流
れはまだ中央にあると思われた。

しかしながら、中央はここで痛恨のミス。PKをタッチに蹴り出すことができ
ず(またもやってしまった!)、関東学院はFB有賀のカウンターアタックを
起点として一気に中央ゴール前に迫る。中央たまらず反則。ここで関東学院は
PKからクイックで攻め有賀がトライを奪いゴールも成功して中央のリードは
5点に。今日の升本はキックが好調だっただけに、ある意味では本日の勝敗を
分けたと言えなくもないこのミスは痛かった。

関東学院は前半とはうってかわって後半からはオープンの外側への展開に戦術
変更。俄然ボールがワイドに動くようになった。そして13分。直前のインゴ
ールノックオンでチャンスが途切れたかに見えた関東学院であったが、中央陣
の5mスクラムを押し込んでSH高安がこぼれ球を押さえてトライ。ゴールも
成功し、ついに関東学院が逆転に成功した。ただ、まだ時間があるとは言って
もPGでも逆転可能な2点のリードではまったく安心できない。

中央にまだまだチャンスありと思われたところで、またしても痛いミス。24
分に森主将がハイタックルでシンビンとなり一時退場。主将という立場上、中
央がオフサイドの繰り返しに対して何度か警告を受けていたも加味してのもの
だったのかもしれない。関東学院はすかさずPGで追加点を奪いリードを5点
に拡げる。

中央も死力を尽くしての反撃。最後まで息の抜けない緊迫した展開が続くもの
の、終了間際の39分に関東学院はまたしてもラインアウトからトライ。左隅
の難しい位置だったが、入江がしっかりゴールキックを決め、土壇場にしてよ
うやく勝敗が決した。中央最後の粘りも通じずノーサイド。中央、またしても
(これで4つ目)惜しい試合を落としてしまった。

[試合後の感想]

中央は本当に不思議なチームである。緒戦からこのラグビーが出来ていれば、
この試合はリーグ戦の優勝の行方を占う試合になっていたかもしれない。ラグ
ビーにとって大切なのはファイティングスピリットであることを「久しぶり」
に認識させてもらった。

ただ、前に出る強い気持ちの表れ(と解釈したい)とは言え、反則数23は反
省点。結果論かもしれないが、反則が失点を減らす意味で逆にアドバンテージ
となっていた感は否めない。素晴らしい試合だったとは思うが、本当の拍手は
反則数が減った時に送りたいと思う。

大苦戦を強いられた関東学院であるが、とくに問題があったようには見受けら
れなかった。前半はオープン展開を封印していたように見えたのが疑問点とも
言えなくないが、今日は中央の闘志をほめるべきであろう。むしろ敗戦もちら
つく状況でパニックに陥ることなくプレーできたことに強さを感じた。

やはり、こういった試合になると誰が頼りになる選手かがよくわかる。FWで
はこの日も攻守にわたり核となっていたLOの犬飼。そしてBKでは持ち前の
ランニングだけでなく安定感のある守備でピンチを救ったFBの有賀。W杯で
バックスリーの人材不足を露呈したジャパンにあって期待のホープと言って差
し支えないだろう。今後さらなる成長を期待したい。

今日の中央の出来なら、東海、そして法政も安心できない。やはりこのリーグ
は最後まで何が起こるがわからない。

Edited by Kazunori KONO, 2/Nov/2003   Back