LIVE REPORT from RUGBY STADIUM

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○観戦記録 流通経済大学 vs 大東文化大学(2003年11月23日)

関東大学ラグビーリーグ戦グループ1部(2003/11/23) 於:熊谷ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 流通経済大学:前半: 1  1  0  0  7 |
       :後半: 3  1  0  0 17 |  24  9
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 大東文化大学:前半: 5  3  0  0 31 |
       :後半: 4  4  0  0 28 |  59 19

◎出場メンバー

 流経 : 1.中井 2.湯原 3.小沼 4.神白 5.鈴木(学) 6.ローゲセン 7.佐藤 8.清水
      9.森(洋) 10.アンダーソン 11.森竹 12.土生 13.大石 14.徳永 15.森(大)
     (16.紙田 17.伊勢田 18.グレイ 19.鈴木(敬) 20.備瀬 21.永山 22.鈴木(陽))

    ○交替  4→18(後0分入替), 6→19(後0分入替), 7→20(後0分入替)

 大東 : 1.木川 2.石渡 3.藤田 4.片桐 5.生沼 6.マヘ 7.相 8.フィリピーネ
      9.吉村 10.戸嶋 11.棟方 12.神野 13.藤山 14.岩淵 15.政田
     (16.志村 17.佐藤 18.石神 19.ファカトゥ 20.寺西 21.畠山 22.赤見)

    ○交替  1→16(後0分入替), 15→21(後5分入替), 4→18(後22分入替),
        12→22(後25分入替), 6→19(後28分入替), 11→17(後35分入替)

 レフリー : 藤(日本協会)  タッチジャッジ :大淵 、山田、原

◎得点経過

 流通経済大学  0                            7                     7
                                            G
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
            T  T        G                   G     G
 大東文化大学  0  5  10       17                  24    31       31


 流通経済大学  7             14       19           24            24
                       G        T            T
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
            G  G           G                       G
 大東文化大学 31  38 45          52                      59      59

 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗

◎得点者

 流経:前半27分 湯原(T)、大石(G)
    後半12分 大石(T)、大石(G)
      21分 森洋(T)
      34分 徳永(T)

 大東:前半 1分 相 (T)
       4分 吉村(T)
      13分 藤山(T)、政田(G)
      33分 フィリピーネ(T)、政田(G)
      39分 吉村(T)、政田(G)
    後半 1分 吉村(T)、政田(G)
       4分 フィリピーネ(T)、戸嶋(G)
      16分 フィリピーネ(T)、戸嶋(G)
      33分 岩淵(T)、戸嶋(G)

◎試合内容

[試合前の雑感]

本日は今年のリーグ戦の最終戦。大学選手権や入替戦はさておいても、今シー
ズンの締めくくりと言う意味で、どのチームにとっても重要な試合であること
に変わりはない。できれば全チームの試合を観たいと思うが、身体はひとつ。
熊谷に行くかアミノフィールドに行くか最後まで迷った。

これまでに大東大の試合は6試合すべて観戦している。こうなってしまうと単
なる巡り合わせとは思えなくなってきた。緒戦を観た段階で、今シーズン一番
期待したチームだっただけに(来シーズンへの期待を込めて)最後の戦いぶり
をじっくりと見届けておきたい。また、対する流経大にもアンダーソンが居る。
彼がボールを持ったとき、「果たして今度はどんな方法でゲインしようとして
いるのだろうか?」と想像を巡らすことが、流経大の試合を観る上での大きな
楽しみとなってしまった。

ということで家から約50分の熊谷に向けて車を走らせることに。

競技場に着いた時にまずは両チームのメンバーを確認。大東大のFW第三列に
最終戦にして初めてマヘ、相、フィリピーネの3人が名前を連ねた。大学ラグ
ビー界でも(おそらく)屈指の攻撃トリオ。三列にはサイズよりもスピードと
運動量が求められている最近の傾向に反しているようにも見えるが、相手にと
っては脅威の攻撃陣であることに変わりない。一方の流経大はいつものメンバ
ー。結果が順位(3位確定)に影響しないとはいえ、大学選手権に向けてチー
ムの完成度を上げていきたいところである。

それにしても、キックオフ前の大東大の部員達の応援はとても熱いものがあっ
た。ピッチに登場した選手達も気合い十分。(日大が山梨学院に勝ったため)
大学選手権出場の可能性は消えたが、選手達のこの試合にかける意気込みには
並々ならぬものが感じられた。一方の流経大応戦席はいつもと同様、いたって
静か。出場メンバーから見ても「今日の大東は違う!」ということが傍目にも
明らかなのだが、流経大の選手達に伝わっていたのかどうか...。

[前半の戦い]

流経大のキックオフで試合開始。大東陣に入った流経大がいきなり大きなチャ
ンスを掴む。得意のオープン展開で大東陣22mに迫ったところでショートキ
ックでゴールに迫る。ここは大東大FB政田が落ち着いて処理(タッチアウト)
し事なきを得た。

その直後のラインアウトでいきなりフィリピーネのパワーが爆発した。流経陣
10mL付近のラインアウトのこぼれ球を拾うと22mLまでばく進してラッ
ク。素早く左オープンに展開して最後はFLの相主将が左隅にトライを決めた。
開始僅か1分の鮮やかな速攻。

続く4分にもフィリピーネが魅せる。自陣22m付近からのカウンターアタッ
クで右オープンに展開。HWL付近でパスは何と!右WTBに位置していたフ
ィリピーネにわたる。そのフィリピーネがタックラーをなぎ倒しながら流経大
陣22mL付近まで前進。見せ場はここからだった。前方1人を含むディフェ
ンダーが数人フィリピーネを遠巻きに取り囲むような状態で、フィリピーネは
フォロワーの到着を待つ形でスローダウン。

流経大選手は誰がタックルに行くともなく、お互いにお見合いをしているよう
な感じでスローVTRのように一瞬時計が止まった。と、そこへ大東大のSH
吉村がトップスピードで走り込みVTRは通常再生に。吉村は満を持したフィ
リピーネからパスを受け取りタックラーをかわしながらゴール右隅に飛び込ん
だ。力任せに突っ込んでクラッシュ、あるいは周囲を取り囲まれてパスコース
をなくすといったリスクを避けたところにこの選手の非凡さを感じる。

そして13分にまたしてもフィリピーネ。HWL付近のラインアウトからサイ
ンプレー(おそらく)でフィリピーネがボールをパスのような形で受け大きく
ゲインしフォローしたFLマヘへパス。22m付近のラックから左オープンに
展開というところでSO戸嶋が十分に相手を引きつけながらCTB藤山へ飛ば
しパス。藤山がそのままインゴールに飛び込み早くも3トライ目。1年生の戸
嶋はこれが3試合目であるが、すっかり大東大の司令塔として機能するように
なっていた。またCTBに藤山が入ることでライン攻撃にも厚みが出たように
思われる。この試合が最後なのが本当に残念。

この3連発で流経大の歯車がすっかり狂ってしまった。FWはパニック状態で
土生主将の「頭を切り換えろ!」「激しく速く行け!」の叱咤も耳に届かない
感じ。ただ、大東大もこれで安心してしまったのか、相手の窮状に乗じて畳み
かけることができない。それができれば関東学院になれるのだが...。流経
大は緻密なラグビーを指向するチームなだけに、相手が教科書にない戦いを仕
掛けてくると意外な脆さを見せることがある。

試合はしばらく膠着状態というかお互いミスが多い状態が続くが、26分によ
うやく流経大が反撃らしい反撃を見せる。自陣の攻撃から右PRの小沼がまる
でBK選手のような絶妙のグラバーキック!を魅せこれを拾ったWTB徳永が
大きくゲインしLOの鈴木にパス。ゴールライン直前で惜しくも鈴木はタッチ
に押し出されてしまう。が、その直後の27分にカウンターアタックから連続
攻撃でゴール前まで前進し最後はHO湯原がインゴールに飛び込み、流経大は
ようやく一息ついた。

しかしながら、それでも流経大は落ち着かない。大東大はポイントを作るより
もボールを繋ぐことを指向するチームだと思うが、無理に繋ごうとしてプレー
が雑になることもままあり、そういった局面でのミスが多い。が、この日は流
経大もそれにお付き合いするような形でミスが多く、試合は一種の混乱状態に
陥った。(冷静であるべきレフリーまでもがパニックに陥ってしまったように
も見受けられた。ちょっと見落としが多かったような...)

しばらく試合は大東陣内で行われたが、30分に政田が気迫のこもったランニ
ングでゴールラインに迫ると、再び大東大の攻撃が始まった。政田はトライこ
そ取れなかったものの、自陣からのカウンターアタックなどでしばしば大きく
ゲインする働きを見せ、「前に出る大東大」の士気を鼓舞していた。33分に
フィリピーネが藤山のゴール前へのキックが転がるところを相手DFに「競り
勝って」奪い取りそのままインゴールへ。

さらに終了間際の39分。流経大ゴール前のセンタースクラムからフィリピー
ネがサイドアタックをかける。ディフェンダーに掴まるものの絶妙の背面パス
?バックパス?(要するに仰向けになりながらのパス)をSH吉村に送り、吉
村そのままインゴールへ。31−7と予想外の大差がついて前半が終了した。

[後半の戦い]

流経大としては、前半の悪いムードを断ち切って何とかリスタートをかけたい
ところ。LO神白とFLローゲセンに代わりグレイと鈴木敬が登場するいつも
の選手交代が行われた。いつも思うことだが(規則上できないことはわかって
いても)グレイとローゲセンとアンダーソンが同時にピッチの上に立てないこ
とかと思う。グレイとローゲセンにしても本当はフルで出たいと思っているの
ではないだろうか。神白はむしろスーパーサブ的に使った方が持ち味が活きる
ような気もする。

流経大首脳陣の願いとは裏腹に後半も流経大FWはまだ前半のパニックを引き
ずっているような感じであった。攻勢に出ていた流経大が大東陣22m付近で
痛いパスミス。これを大東大がすかさず拾ってカウンターアタックをかけ最後
はSH吉村が40m以上を走りきりこの日3個目のトライ。キックオフからわ
ずか1分の出来事。後半4分にフィリピーネが2個目のトライを挙げ大東大の
リードは38点に拡がった。

ここで大東大は安心したのかオフサイドを連発。流経大ラインアウトの局面が
増えてきたことで、ようやくゲームが落ち着いてきた。2mの鈴木学を擁する
ラインアウトは安定している。セットプレーから組み立てる形になれば流経大
のもの。点差はついてしまったが、ここでしっかりゲームを作り直すことがで
きれば、たとえこの試合に敗れても明日に繋がる。12分に大東大ゴール前ラ
インアウトからのモール、ラックを起点としてオープンに展開。SOアンダー
ソンが絶妙のパスをCTB大石に送りトライが決まる。

ようやく流経大の反撃開始かと思ったがその後がいけない。16分に大東得意
の細かい繋ぎから最後はフィリピーネがこの日3個目のトライを決める。リー
ド再び38点。これで勝負ありとなった。流経大は21分と34分に1トライ
ずつ返すものの時既に遅し。終了間際の40分には大東大が自陣ゴール前から
フィリピーネのアタックを起点としてボールを繋ぎ岩淵がトライ。この日の大
東大ラグビーを象徴するような幕切れであった。

[試合後の感想]

大東大の勝因は部員全員の「この試合にかける気持ち」に尽きると思う。結果
的に大学選手権出場は成らなかったものの、この勝利から得られたものは大き
いのではないだろうか。少なくとも、関東学院の強固なディフェンスを打ち破
るのは「このラグビー」というものが見えてきたように思う。もちろん反則を
減らすこととプレーの精度を上げるという課題はあるが、負けた試合の敗因を
しっかり分析してチーム力を上げていけば克服可能(なはず)。

優位に立っていると思われた流経大であったが、やはり「気持ち」の面で大東
大に負けていたように思う。ラグビーには理論書には書かれていない大切なこ
とがあることを改めて教えられたような試合だった。

Edited by Kazunori KONO, Nov/24th/2003   Back