LIVE REPORT from RUGBY STADIUM

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○観戦記録 山梨学院大学 vs 拓殖大学(2003年12月13日)

関東大学ラグビーリーグ戦G1−2部入替戦(2003/12/13)於:熊谷ラグビー場

<試合結果>

            T  G PG DG 得点 | 総得点 反則
 山梨学院大学:前半: 1  1  2  0 13 |
       :後半: 2  1  0  0 12 |  25 10
 +-----------------+-------------------------------+-------------+
 拓殖大学  :前半: 2  0  0  0 10 |
       :後半: 3  2  0  0 19 |  29 10
                         ※反則数は参考値

◎出場メンバー

 山梨 : 1.近藤 2.大塚 3.秋谷 4.橋爪 5.北条 6.山本 7.小嶋 8.村田
      9.須田 10.三村 11.松本 12.菊竹 13.米重 14.神村 15.伊藤
     (16.天野 17.高山 18.相川 19.土師 20.長谷川 21.高橋 22.外山)

    ○交替  14→21(後17分入替), 1→16(後24分入替), 9→20(後32分入替)

 拓殖 : 1.谷地村 2.河村 3.田原 4.松村 5.田畑 6.クロフォード 7.森 8.平井
      9.松永 10.井上 11.辻 12.川野 13.シュウベリ 14.山中 15.吉武
     (16.保坂 17.仁和(佑) 18.濱口 19.寺尾 20.宮本 21.小松 22.仁和(康))

    ○交替  3→16(後18分入替)

 レフリー : 民辻(日本協会)  タッチジャッジ : 小村、尾畑

◎得点経過

 山梨学院大学  0                     7            10 13          13
                                     G            P  P
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
                   T              T                x
 拓殖大学    0         5              10                       10


 山梨学院大学 13      20                                     25  25
                G                                       T
    時間     0----+----1----+----2----+----3----+----4----+ 得点
            T         G  G
 拓殖大学   10  15        22 29                                29

 ※時間×10分,T=トライ(5点),G=トライ+ゴール(7点),P=PG(3点),D=DG(3点),x=PG失敗

◎得点者

 山梨:前半20分 神村(T)、伊藤(G)
      33分 伊藤(PG)
      36分 伊藤(PG)
    後半 5分 三村(T)、伊藤(G)
      46分 FW?(T)

 拓殖:前半 8分 河村(T)
      23分 平井(T)
    後半 1分 ショウベリ(T)
      11分 クロフォード(T)、吉武(G)
      14分 川野(T)、吉武(G)

◎試合内容

[試合前の雑感]

拓殖大といえば、2000年と2001年のシーズンの入替戦でいずれも東海大を相手
に戦い、その東海大に2年連続で冷や汗どころか大汗をかかせたチーム。NZ
からの留学生が2人居るチームと書くと、彼らのパワー頼みかと思われてしま
いそうであるが、実は組織的で緻密なラグビーを目指しているチームである。
今期の2部リーグ最終戦で専修大を圧倒した力が山梨学院にどの程度通用する
のか、拓殖大1部昇格なるかという点は別にしても、1ファンとしてはとても
楽しみな対戦であった。

[前半の戦い]

拓殖大のキックオフで試合開始。山梨学院が1部リーグの力を見せてやると言
わんばかりにラッシュをかけ拓殖陣ゴール前に迫る。しかしながら、オフサイ
ドを犯し得点のチャンスを潰す。ここから立て直しを図った拓殖大が持ち前の
組織的なラグビーでペースを掴む。開始直後にして、拓殖大はオープン展開指
向で意思統一の図られたチームであることが見て取れ、期待は一気に膨らんだ。

拓殖大は4分に山梨学院22m内で得たペナルティでスクラムを選択。No.8の
サイドアタックを起点としてゴール前のラックからオープンに展開しラストパ
ス!は惜しくもスローフォワードで得点ならず。しかしながら、8分に拓殖大
は先制点を奪う。山梨陣ゴール前のラインアウトからサイドアタックで前進。
ラックからショートサイドをついたHO河村にパスが渡り、河村がそのままイ
ンゴールに飛び込んだ。

機先を制された形ではあったが、山梨学院もここから立て直しを図り反撃を開
始する。1部ではいいところなく敗戦を重ねたチームではあったが、選手個々
のパワーはやはり一枚上。20分に拓殖大陣22mライン付近のラックから左
PRの近藤の強力な縦への突破からトライが生まれ、ゴールも成功。山梨学院
は逆転に成功した。

山梨学院はここで波に乗りたかったところだったが、その直後の23分に自陣
ゴール前で犯した反則から痛い失点。再逆転を許したところで逆に山梨学院は
完全に目を覚ました。以後、山梨学院のペーストなり、前半終了までほとんど
ゲームは拓殖大陣で行われることとなった。ただ、肝心なところでミスが出て
しまうところはレギュラーシーズンを引きずっている。球出しのタイミングも
遅れ気味で継続ができている割にはゲインできない感じ。

拓殖大の粘り強いディフェンスもあり、なかなか山梨学院の得点板が動かない。
こういった膠着状態を打開すべく、山梨学院は33分と36分にPGを決めて
再逆転に成功した。結局、前半は山梨学院が何とか1部リーグの面目を保つ形
で終了。攻める時間は少なかったものの、ボールをオープンに大きく動かすラ
グビーで効率よく点を取った拓殖大のラグビーが印象に残る前半であった。

[後半の戦い]

後半開始早々、拓殖大の鮮やかな速攻が決まる。オープン攻撃でHWL付近か
らFL森が抜け出し巧みなステップワークと素晴らしいスピードで一気に山梨
学院陣ゴール前まで迫る。ここでフォローしたCTBショウベリにラストパス
を送り、拓殖大は再度逆転に成功。山梨学院の猛攻を耐え凌いだ拓殖大がこれ
で一気にペースに乗るかに見えた。

しかしながら、山梨学院も反撃。5分に拓殖大ゴール前で得たPKからクイッ
クで仕掛け、SO三村がインゴールに転がしたグラバーキックを自ら押さえて
再々度逆転に成功。山梨学院の意地を感じさせるトライであった。山梨学院は
ここで一気に突き放したいところ。であったが自陣でペナルティを重ねてピン
チを招いてしまう。

11分に拓殖大はPKから山梨学院ゴール前でのラインアウトのチャンス。こ
こで絶妙のサインプレー(モールを作ると見せかけて横に回り込んだFLのク
ロフォードにボールを渡し、クロフォードは難なくインゴールに駈け込みゴー
トライ。ゴールも成功し拓殖大はまたしても逆転に成功。さらに拓殖大は畳み
かける。14分に山梨学院陣ラインアウトから右オープンに展開。22m内中
央付近ラックから今度は素早く左オープンに展開しCTB川野がトライ。「オ
ープン展開の拓殖大」を象徴するような本日のハイライトとも言うべき見事な
トライでリードを一気に9点に拡げる。

ただ、試合はまだわからない。山梨学院の猛攻を耐え凌いできた拓殖大FWに
やや疲れが見えてきた。以後、前半と同様にゲームはほとんどが拓殖大陣内で
行われることになった。山梨学院はFWのサイドアタックで何度も拓殖大ゴー
ルに迫る。インゴールでのパイルアップ2回などいつトライが取れてもおかし
くない状況の連続であった。

この絶体絶命のピンチの状況で光ったのが拓殖大の粘り強いディフェンス。ゲ
インは許すもののとにかく反則が少ない。関東学院や法政を相手に反則を連発
させた1部リーグのチームのことがついつい思い浮かばれた。BK攻撃に今一
歩決め手を欠く山梨学院ではあるが、ちょっとFWに固執しすぎた観がある。
そうしているうちにも時間は容赦なく経過していく。

そして33分。山梨学院にとってこの試合の分かれ目となってしまったプレー
があった。ゴール前の絶好の位置で得たPKを狙わずラインアウトを選択。こ
こでPGが決まっていればビハインドは6点に縮まり、一発逆転のための残り
時間も十分に残されている。リードが6点と9点ではディフェンスする側の拓
殖大の心理状態は大きく違ったはずである。

実際に拓殖大は残り10分をほとんど自陣に釘付けされる状態におかれながら
も凌ぎきった。山梨学院は最後の最後に意地のトライを奪うものの、時計の針
はすでに46分。ノーサイドの瞬間、拓殖大関係者の歓喜の嵐がグランド場に
吹き荒れた。

[試合後の感想]

過去3シーズンにわたって1部リーグの壁に跳ね返されてきた拓殖大がついに
悲願を達成させた。内容でも1部リーグにけして劣らない立派なラグビーだっ
た。積極的にオープンに展開するランニングラグビーが来シーズンのリーグ戦
グループにフレッシュな魅力を付け加えることを大いに期待したい。

もちろん、現状からのパワーアップを図らない限り、上位校を相手に本日のよ
うなラグビーはほとんどさせてもらえないと考えるのが冷静な判断。ではある
が自分たちのスタイルを貫き通して欲しいと思う。反則が少ない志の高さにも
共感を覚えた。来シーズンの楽しみが増えた感じ。

山梨学院はチームとしてどのような戦いを目指しているのかが最後まで見えな
かった感がある。上位校に対する体格やパワーの差をどのように克服していく
かという課題に最後まで答えを見いだすことができなかった。1部での経験を
大切にして頑張って欲しいと思う。

Edited by Kazunori KONO, Dec/14th/2003   Back