2007年3月議会(第1回定例会)一般質問より
1 市民協働について

(1)市民協働のまちづくり

志木市では細田市長時代(1985年〜2001年)に「人づくり」(人材発掘と活用)を基盤にした市政運営が行われてきました。一握りのリーダーに任せるだけでは真の自治社会を築くことはできない。一人一人の市民が行政のしくみを理解した上で、自分たちのまちのことは自分たちで決めて実践していく、責任ある自立した市民を育てていくことにより、市民も職員も共に成長してきたと思います。
 そのための仕掛けとしての21しき市民会議、総合振興計画をはじめ各種の行政計画は、他市に先がけ市民がまちづくりのビジョンからグラウンドデザインに至るまで、市民相互に、あるいは職員と、喧々諤々議論しながら創り上げてきました。私も公募の市民として共に策定した第三次志木市総合振興計画(1996年〜2005年)では、市民参加から市民参画へ、「市民・行政協働型まちづくりの展開」が、まちづくりの理念とされました。
 市民提案で「資源循環型まちづくり」が理念とされ、市内に残された貴重な「斜面林の保全」が位置付けられたことにより、環境保護団体のみならず、文化財保護審議会、地権者、市民、職員等、立場を越えた連携・協力と、何より西原特定土地区画整理組合の自己決定と大変な努力により、西原特定土地区画整理事業の事業計画を変更し、西原斜面林が保全されることになったのです。

私は1987年から身近な場所で農薬を使わない活動に取り組んできましたが、1992年荒川の東京都秋ヶ瀬取水堰から取水した都民の飲み水に志木市荒川河川敷水田で空中散布された農薬が検出された問題で、1993年から空中散布中止を求め、環境保全型米づくりの推進に農業関係者、行政と共に取り組んできました。
 先日、当時の職員から、「空中散布からもう10年経ったんですね。(農薬の飛散調査の分析のため)横浜国立大学環境科学センターに行ったり・・・楽しかったですね。」また、別の職員からも「アイガモ農法で田んぼに天田さんが裸足で入ったり・・・覚えてますか。」と言われた時には、「当時はただ苦労をかけたと思っていたのに・・・」と、心打たれました。
 何も無いところから、市民とともに手探りで生み出していく中に、真の喜びがあるのです。
 その後、市民とともに活動してきた市職員何人かに聞いてみましたが、皆、「楽しかったですよ!」とのこと。
 1995年、県主催の「地方分権大学」の課題で「志木市の特徴」を聞いてまわったところ、志木市の職員は「有名人も名物もないし・・・志木市は市民ですよ!」「市民がいきいきと活動しているまち、それが志木市です!」と自信を持って答え、それを発表したところ他市の職員、市民から「オーッ」と感嘆のどよめきが起こったのを覚えています。そんな市民、職員こそが、志木市の財産なのです。

2005年8月、長沼市長により財政非常事態宣言が出された後も、まちづくりを担ってきた市民は、「こういう時こそ、市民が盛り立てていこう。」と励まし合って頑張っており、ありがたいことです。
 高齢者ふれあいサロン(志木二小、宗岡小)、村山快哉堂に続き、12月に改築オープンした西原保育園2階の西原子育て支援センター「まんまある」は「NPO法人 志木子育てネットワーク ひろがる輪」が受託、運営しています。公民館を拠点として活動していたグループが、長年地道に地域における子育て支援の活動を行政との協働で続けてきた実績が評価されました。
 右肩下がりの時代、少子高齢化、限られた財源の今こそ、「行政の都合」ではなくして、市民にとって「より居心地良く使い勝手の良いサービスであるために」、また「市民にとって望ましい行政コストの削減が図られるために」、何よりも「自分たちが地域の中で持てる力を発揮し、身近なコミュニティをより良くしていくために」、まちづくりのあらゆる場面、機会に市民が主体的に関わっていくことが重要です。そのためには行政のあらゆる分野において、市民協働のしくみづくりを根幹に据える必要があります。
 長沼市長は「市民協働の裾野を広げていくとともに、市民と行政が相互に役割と責任を明確にしながら、魅力あるまちづくりを進めていくことが重要。市民協働のまちづくり推進指針をもとに、市民の力がまちづくりに活かされるよう努力していきたい。」とのことですが、そのためには今こそ「人を育てていく」ということを志木市の根幹に据えていく必要があると考えます。

(2)2007年問題等に関わるしくみづくり

「団塊の世代」の大量定年の時期を迎える2007年問題について私は「財政基盤や企業等の社会資源に乏しい志木市にとっては市民こそ貴重な財産。企業や社会経験豊富な人材を志木市の中で活かし、地域の中で循環していくしくみづくりを。」と働きかけてきました。
 同時に、企業や官公庁等ピラミッド型の組織とは異なり地域の中ではあらゆる市民、事業者、行政職員等が対等に、それぞれの個性や人格を尊重し違いを認め合いつつ、責任ある議論を積み重ねながら、もたれ合いや依存ではない自立的な関わりができるよう、ボランティア講座等による人材育成の重要性も提言してきました。
 いよいよ2007年となりましたが、市の取り組みについて、市長、教育長に質しました。

長沼市長は「団塊世代の大量退職は行財政及び市政運営に大きな影響があると考えている。年金支給開始年齢も繰り上がり、企業等の継続雇用の義務化が進む社会背景において、就労意欲が高まっている状況を鑑みると、受け皿づくりとして 1.就労活動、2.地域活動、3.生涯学習活動 をバックアップできるような施策・体制づくりが重要。
 更に、技術や能力などの人材活用も踏まえた活動の場づくりも非常に大切と認識している。」
 教育長は「公募の市民からなる志木市生涯学習推進会議においても現在“志木市における2007年問題とその対策について”2007年度の研究テーマとして検討している。市民の方々の意見をいただく中で関係組織等との連携のもと進めていきたい。」とのことでした。

2007年問題等は個々の市民に対する支援にとどまらず、まちづくりの重要課題として、行政は政策的にリードしていくべきです。
 就労支援としては、市役所内の地域職業相談室「ジョブスポットしき」(ミニハローワーク)で2006年3月の業務開始から2007年3月までの就職者数224人(内パート118人)という実績が上がっています。
 シルバー人材センターについては生きがいづくり、仕事を通じた社会参加を求める60歳以上の会員に対してセンターが受注した業務に対し配分金(報酬)が支払われます。
 共働・共助の理念で職場開拓も会員が行い、(社)朝霞地区シルバー人材センター(朝霞・志木・和光)では公共の仕事だけでなく民間の仕事としてスーパー商品管理、会社経理実務、学習塾講師、病院カルテなどの整理、介護関連施設の調理、企業ISO関連事務作業等、それぞれの能力や経験を活かした多様な就業がされています。(07年5月1日現在会員数1718人中志木市431人、3月の就業率は約70%)

更に地域のニーズに応える起業のあり方として「企業組合」等についても情報提供していってはどうか提言しました。

企業組合とは
個人が組合員となって資本と労働を持ち寄り、自らの働く場を創造するための法人格を有する組織。出資金に特別な決まりはなく、事業内容に応じた資金でスタートできます。特定組合員として企業の加入も認められるようになりました。営利目的以上に、相互扶助による人とのつながりを大事にする組織であり、チームワークやシステムとリーダーシップがしっかりしていることが留意点。


更に、地域においては市民と行政の協働だけではなく、民間の市民団体、事業者等による多様・多彩な共働によるまちづくりの支援も重要です。

【行政との協働の課題】

市民協働による委託の評価のあり方
 現在は行政パートナーのみが評価の対象、指定管理者制度における公募が2008年度に向け行なわれることもあり、公益性の強い事業評価のあり方について検討が必要

各種計画における進行管理の協働
 緑の基本計画等のように策定時は市民協働でも進行管理における協働が図られず、つくりっぱなしになっている状況は改善すべき。


 介護保険についてこちらへ
3 教育の目的とその方法

〜総合的な学習等あらゆる教育活動のあり方〜

教育においてその手段が目的になってしまってはいけない。志木市聴覚障害者の会、志木手話サークルとの懇談会(2月7日)に出席した際、「中学校の福祉教育(総合的な学習の時間)で、手話の歌を教えてほしいといわれたが、私たちは歌を聞くこともリズムをとることもできない。」とのご意見に、「手話の歌を習うことが福祉教育」になってしまってはいけないと感じました。2単位くらいしか授業時間がとれない上に、発表会もあり、「発表会の時にも生徒や先生方は私たちの実態を理解できていないと感じた」とのこと。

総合的な学習にそもそも決められたパターンは何ひとつありません。環境教育、福祉教育、国際理解教育等は、例として挙げられているだけです。子どもたちの興味関心を引き出し、自ら調べ探求するうちに、いつのまにか社会の課題を一つひとつ解決していく総合力をつけていく。また、総合的な学習の時間も含めたあらゆる教育活動を通して、ささやかでも学校や家庭、地域社会における課題と向き合い、悩み、考え、知恵を絞り、多様な人々、機関と工夫・協力し合いながら解決の道筋を探っていく、やってみる、それが大事です。

障がいといっても見え方も聞こえ方も実に様々であり、生まれつきの障がいもあれば「ある日突然病気や事故で」という中途障がいもあり、いくつかの障がいを併せ持つ重複障がいの方も多いのです。一人ひとりにそれぞれの不自由さ、生きにくさがあることを少しでも理解できればと思います。大切なのはそれぞれの方に教えていただきながら、何が必要かを一緒に考えていくことだと思っています。

柚木教育長は「教育活動において形骸化やパターン化が見られないように、本来、児童・生徒が持っている興味や関心を大切にし、自らの力で課題を解決しようとする力は重要と受け止めている。今後も児童・生徒の主体性を大切にしながら地域と一体となった学校づくりを支援していきたい。」とのことでした。


4 特別支援教育について

学校教育法等の改正により、2007年度から「盲・聾・養護学校は障害種別を越えた特別支援学校とする」「小中学校においては学習障害(LD)・注意欠陥他動性障害(AD/HD)等により学習や行動の面で特別な教育的支援を必要としている児童生徒に対して適切な教育を行なうこと」等が位置付けられました。
 特殊教育は特別支援教育に改められ、特殊学級は特別支援学級として通常学級在籍で障がいのある児童生徒に対する支援も行なうこととされています。従来の特殊学級設置校のみならず、全ての学校でとり出し授業等一人ひとりのペースに合わせた学習や生活ができるよう、通級指導教室(リソースルーム)の設置が必要となります。

志木市では2004年度から教育サービスセンターがスマイルルームを設置し、各学校から特別に支援の必要な子どもたちをサポートしてきましたが、個別の支援に留まり、各学校が校内研修を充実し自力をつけていく、学校全体で一人ひとりの子どもをきめ細やかにサポートしていく体制の弱さを危惧してきました。
 2006年度はスマイルルームでのとり出し授業を行ないつつ教師にもアドバイス、学校にはこまめに指導員が巡回し、志木市自前の専門家チームによる学校訪問、アドバイス等も行なってきました。
 志木小学校のドラえもんルームをはじめ志木二小等学校内でのとり出し授業の取り組みも見られるようになり、いかに全ての学校で充実していくかが課題です。

柚木教育長は「専門家チームによる“巡回相談の充実”及び各校1名ずつ指名されている“特別支援教育コーディネーターの育成”を目標に特別支援教育の体制を整えてきた。2007年度は“各学校内における特別支援教育体制の組織的な働きをより強固にさせること”や、“教職員が、子どもの教育的ニーズを適切に把握し、子ども一人ひとりに質の高い教育活動が展開できるよう、専門家チームの積極的な関わり方の充実”に努めていく。特別支援教育の理念や基本的考えが普及・定着することは、現在、学校教育が抱える様々な課題解決につながっていくものと考えている。」とのことでした。

特別支援教育コーディネーターについてはクラス担任、教科担任等をしながらの職務という課題が従来から指摘されており、校務分掌や他の授業時数の軽減等、各学校管理職を中心に、特別支援教育コーディネーターが活動しやすい条件整備をしていくことを提言しました。

(2007年5月)
トップページへ  一般質問へ